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小田原市で「 #リファラル移住 制度」を始めた理由

現在、生まれ育った小田原市で「移住定住コーディネーター」として活動をしています。その取組みとして、2022年7月より小田原市が「リファラル移住制度」を開始しました。はじめたばかりですが、嬉しいことに既に申込みもあります。今日はその取組と背景についてまとめてみたいと思います。

「リファラル移住制度」とは

「リファラル移住制度」とは、市民が「小田原暮らし」の魅力を市外の方に紹介し、紹介された方が移住すると、紹介者(=市民)と紹介された方(=移住者)の双方に商品券がもらえる制度です。調べた限り「リファラル移住制度」という仕組みは、地方自治体では"日本全国初の試み"にだと思っています。

今回は隣接している町からの引越しする人ではなく、都心に住んでいる方々に移住してもらいため「神奈川県外・横浜市・川崎市在住の方」としています。箱根町・中郡(二宮・大磯)・藤沢市の方々の小田原市への移住は対象外になります。そして、7月1日より後に移住した方が対象になります。惜しい方は、すみません!

参考にした「リファラル採用」

「リファラル」と聞いて直ぐに思いつくのは「リファラル採用」です。別名「社員紹介採用」とも言われ、社員の紹介でその企業に入社したら双方に報酬がもらえる制度です。人材紹介会社経由で入社すると年収の約30%(例:年収500万円の人材だと150万円を紹介料として必要)ものお金を支払う必要があります。一方、社員の紹介だと、手数料を抑えることができ一定紹介料を社員にお支払いすることができるのです。「リファラル採用」の良い点として一般的に、以下の4点があげられます。

  • 採用の手数料を抑える点

  • 社員経由なので、入社者の安心感・信頼が得られやすい

  • 採用の不一致を防ぎ、入社後の定着率向上につながる

  • 紹介した社員の、会社への求心力もあがる

リファラル制度は、アメリカではじまった制度ですが日本国内でも多く広がり、それなりに定着してきたように思います。調べたところ、20%近くの会社で導入されている調査もあるようです。(参考

「転職」と「移住」の意思決定の重さ


「仕事を変える転職」と「住む場所を変える移住」の意思決定は、通常よりも重く、生活が大きく変わる決断という意味では、2つは重さは近いように思います。この施策を、移住に転換してみようというのが今回の背景の一つです。

企業や自治体が発信する情報が届きづらい時代

もう一つ、背景にあるものとして、情報が溢れている超情報化社会のなか、企業からの情報が顧客に届きづらいということもあります。なかなか企業からの情報発信が届かないため、「広告より口コミが重要だ」「SNSでの拡散をさせよう」「ファンづくりが重要だ」と最近、言われているのはそのためです。それは、自治体も同様です。地域の魅力の情報を届けようと思っても届かないのが実情ではないでしょうか。地方自治体で、明確に差別化して発信できる地域も、ほんの一握りでしょう。

信頼できる一人の口コミの声が重要

改めて考えたときに、以下の3つの情報があった時に、意思決定に一番重要になる情報はどのような情報でしょうか。

  1. 企業/自治体が発信する情報

  2. 知らない大勢の口コミの平均(ネットに溢れた大勢の口コミ)

  3. 信頼する一人のリアルな口コミ(住んでいる人のリアルな声)

個人的には、以下のようになると思っています。

インターネットが登場し、企業だけではなく生活者自身も情報を気軽に発信しBlogやSNS等で誰でも簡単に届けられるようになりました。飲食店、化粧品、旅行などあらゆるカテゴリの口コミサイトが生まれ、体験談がまとまり利用者の平均値が可視化されていきました。
口コミサイトが躍進を続けていくと、不思議なもので口コミサイトにまとめられた平均値の情報が少しずつ信憑性も薄れていき、その一方で「一人でもいいから信頼できる人のリアルな口コミ」の方が、参考になると思いますし、そうなっているように感じています。

まとめると、企業や自治体が情報発信するよりも、そこに住んでいる市民が発信するほうがより、移住の背中押しになるのではと考えています。特に、転職や移住など意思決定が重いほど、参考になるのではないでしょうか。

自治体が地域の魅力を発信するより、市民が発信するほうが効果が高いと考えています

シビックプライドの高さを届ける


小田原市の移住の仕事をしていた時、小田原市で活動されている人たちに話を聞くと、口々に小田原の魅力について語ってくれます。なかには小田原市での生活・暮らしを趣味でウェブサイトをつくり発信している方もいます。

「シビックプライド」とは、まちへの誇りや愛着をもち、「まちのために自ら関わっていこうとする気持ち」のことを指しますが、移住にとって必要なのことは、このようなシビックプライドが高い市民の自発的な声を届けることだと思っています。その結果、好きが好きの共感を呼び、シビックプライドの連鎖がさらに起きるように思います。

「リファラル移住制度」を広めたい


国が推進している「地方移住金」は、東京23区に在住または通勤する方が、東京圏外の地方へ移住すると最大100万円もらえる仕組みです。小田原市など神奈川県は近いので対象外になります。

もらえる額で比べてしまうと1/100と限りなく少額ですが(笑)、リファラル移住には、

  • 市民が住んでいる町の情報を届けてくれる(良いところだけではなく、困ったことや苦労談も届けるのが重要だと思います)

  • 知り合いが近くに住むので定着率があがるし、助合いができる

  • 市民が参加することでシビックプライドがあがる

など、もらえる支援金だけではない価値がそこにはあると思います。これからの時代はどのようにして住んでいる市民が参加して移住施策を実施できるかが重要になると思っています。

この施策を、他の地域や地方自治体でも増やしていきたいと思っていますし、数年経つと広がっていくように思っています。「リファラル移住制度」の仕組みについて少しでも気になる方・話を聞いてみたい方は、気軽に連絡頂けると嬉しいです。


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