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校長室通信HAPPINESS ~子育てでいちばん大切なこと

子育ての目的は「自立」

 子育ての「方法」は千差万別、しかし、子育ての本質的な「目的」はたったひとつです。それは子どもを「自立」させること。子どもがある程度の年齢に達したら、精神的にも経済的にも親を頼らず、自分で自分の生きる道を選択しながら、幸せに生きていける人間に育てあげること、これが親の義務です。
 子どもが親から離れていくのを寂しいと言う人もいますが、もともと子は親から独立するのが自然界の掟なのですから、親はその覚悟で子どもを育てていかなくてはなりません。
 しかし、親にその覚悟がないと子どもはいつまで経っても自立しません。例えば、高校を卒業しているのに高い携帯電話料金を親に払わせたり、自分の部屋の掃除を親にやらせたりしても、平気な顔をしています。親も「やれやれ…」と呆れながらも、ついついやってあげてしまう…こんな「負のループ」をいつまでも断ち切れないでいると、ヘタをしたら子どもが30歳、40歳になっても、ずっと親の手助けが必要な大人になってしまいます。中には、「それでも、子どもがずっとそばにいてくれるほうがいい」という親もいます。親はそれで満足かもしれませんが、自立できないまま大人になってしまった子は、年齢が進めば進むほど不幸感が増幅します。やがて、自分が自立できない未熟な人間であることに気づき、「こんな自分にしたのは親のせい」と、そのいら立ちを親にぶつけるようになってきます。随分と身勝手な話ですが、自立できない人の多くは、自分がうまくいかない原因をまわりの環境や他人のせいにするのが得意技なので仕方ありません。その後の親子関係は、察するに余りあります。

「自立」するための2つの術とは

 人が自立していくためには、2つの「術(すべ)」が必要です。
 ひとつは、「自分の力で幸せな状態を続けられる術」です。「幸せな状態」とは、反射的に脳が反応して生まれる幸福感とは違い、継続的に幸せを感じている状態のことで、「ウェル・ビーング」と言います。
 もうひとつは、「自分の力で自分を成長させる術」です。自分が成長していくには、自分で課題を発見し、その解決策を考え、それを実行できるスキルが必要です。
 この2つの術は、日常生活の中での大人の声かけによって習慣化します。
 例えば、子どもが牛乳をこぼしたら、「何やってるの!」と怒るのではなく、「どうすればいい?」とその後の行動を判断させましょう。子どもが泣いていたら、自分の言葉でちゃんと状況を説明させるために「どうしたの?」と聞いてあげましょう。そのあとに「どうしたいの?」と子どもの意思を確認しましょう。そして「お母さんに何かできることある?」と聞いてあげれば、それだけで子どもは安心します。
 学校の「明日の準備」も、できるだけ子どもにやらせましょう。心配なら、最初のうちは連絡帳を見ながら一緒に準備して、徐々に離れていきましょう。連絡帳を書き忘れていたら、自分で友だちに電話をさせて確認させましょう。そして必ず、「連絡帳をちゃんと書いてこないと、大変じゃない?」と問題点を明確にしましょう。こんな時、連絡帳を点検してくれなかった担任の先生を責めても、子どもの成長には何のプラスにもなりません。こんな経験を積みながら、子どもは「明日の準備を自分だけでできるスキル」を身につけます。これも「自分を成長させるスキル」のひとつです。 

自立した我が子をイメージする

 
 子どもが失敗しないように、恥をかかないようにと、大人がいつも先回りをして「ああしろ・こうしろ」と言い続けていると、子どもの自立がどんどん遠のきます。それでも、子どもに色々やってあげたくなったら、自分の子どもが20歳になったときの姿を想像してみましょう。「自分のことは自分でできる」「いつも幸福感をもって、明るく生きている」…こんな未来の、立派な我が子を想いうかべることができれば、あれこれと手を差し伸べたくなっても、グッと我慢することができるかもしれませんね。

※参考文献 「最新の研究で分かった!自律する子の育て方」 

                   工藤勇一・青砥瑞人  SB新書

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