克服の報酬

お年寄りの集まる所に病気の話題は尽きない。
けれど、わたしがここに心地良く居られるのは
いろいろあるけど楽しもう！
そう思う方が来ているからじゃないかな。

中にはここしか居場所がないという方もいるし、
訳が分からないけど連れて来られたと思ってる方もいるかも。
とりあえず怖いところではなさそうだしと思ってる。なんか、ニコニコしてる人も居るしね。

身軽によく動くKさん。やりたい事をやるぞー！タイプかも。
注文も多いけれど、迷惑は掛けたくないという気遣いが背後にある。

今まで猫の話をよくしていた。私も家に３匹居る。Kさんは野良猫の出産を押し入れで助けてあげたり、看取った猫も多いし、猫愛あふれる人。

昨日は珍しくテレビのニュースから病気の話題になり、今のKさんからは想像し難い大病を克服された話を聞いた。

もう出来ることはないと医師から言われ、別の病院を探して治療を頼み、「ほんとうにダメというところまでやって欲しい！」とお願いした。
そして、今のKさんがいる。
生きるための努力が凄いし、命に対する執着が凄まじい。悪い意味ではない。

Kさんは息子さんを9歳で水の事故で亡くしている。
その事を私にさらさらっと話す。
さらさらっと話す事ができるのは年月のせいだけではないと思う。
スピリチュアルでは、浄化、削ぎ落とし、許し、手放し、カルマの解消、いろいろな方法で自分と向き合う事ができるけれど、Kさんからはすべてを乗り越えた、克服したんだ！と思える潔さを感じる。

一人で座っている（お向かいの方が急遽お休み）
女性の元にKさんが行って何か話し込んでいた。
私はお茶の支度のため少しだけ近い所に居たけれど、話が聞こえる距離ではない。
だから、ちょっと耳のアンテナを立ててみた。
大勢の人の喋る声の中でも、聴きたい人の声は耳のアンテナ出すと聞けたりする。特殊能力ではない。誰でも出来る。
念の為言いますが噂話に耳を立てた訳ではない。

Kさんがその女性を励ましているのがわかった。
つい最近その女性は癌である事が分かり、抗がん剤の治療に入る事が職員に知らされた。

Kさんが何故その女性が癌になってしまった人だと分かったのかは謎だけれど、不安でいっぱいになっているであろう人に、克服し、生還を果たしたKさんの言葉はどんなにか力になった事か。
具体的な日常の過ごし方のアドバイスはその女性が必要としている事だったに違いない。

みるみる明るい顔になり、Kさんが席を離れる頃には笑顔が出ていて、「ありがとう」と言って手を振っていた。

その、笑顔と「ありがとう」はKさんが得た克服の報酬なのだと感じた。

予期せぬ出来事が起こる。悲しみや辛さを経験する。でも、そこから這い上がって来ると何かしらを手に入れる。
魂レベルで成長する。生きる目的に気づく。

私も結構なハードな人生の前半だったからKさんを見ていて今自分がやっていることが間違いではない事が再認識できた。

帰り際にKさんにその気持ちを話すと、Kさんは少し涙を浮かべながら、満面の笑顔だった。
喜びを共有できた瞬間！

そのKさんの笑顔こそが、その瞬間が、私が得た報酬だと思う。