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[勝手推敲]令和3年8月18日 正平調

原文

平安時代のこと。仏教聖典を寺で供養しようとして、予定の日時が3度にわたり雨で流れた。ようやく執り行われたものの、その日も雨が降った。白河上皇は「これにより逆鱗(げきりん)あり」、雨を容器に入れ獄舎に閉じ込めたという
◆当時の説話集が伝えている。意に沿わぬものは何であろうと、罰を与える。それで事なきを得られるのならまだありがたい話だけれど、昔も今も実際はそうもいかない
◆各地に大きな被害をもたらし、なお降りやまぬ長雨に天の無情を恨み、感染爆発の様相を呈している新型コロナウイルスのニュースに接しては地上の難敵を憎む。二つの災害のあいだで、心がふさぐ毎日が続く
◆兵庫県の新たなコロナ感染者は、きのう初めて800人を超えた。3度ならず4度目の緊急事態宣言である。デルタ株の猛威を目にし、「制御不能」という言葉まで耳にした。いらだち、正直うろたえてもいる
◆ウイルスを獄につなぐ方法があるとしたら、人出をできる限り減らすことに他ならない。そんなことはしかし、今更言われずともみな知っている。国民が聞き、見たいのは「よし分かった」と誰もがうなずけるメッセージであり、姿勢ですよ、菅さん…
◆と、事ここに至って説かねばならない悲しさ。出口はどこにある。(2021年8月18日付 神戸新聞 正平調)

推敲後

平安時代のこと。仏教聖典を寺で供養する予定日時が3度にわたり雨で流れた。ようやく執り行われたものの、その日も雨が降った。白河上皇は「これにより逆鱗(げきりん)あり」、雨を容器に入れ獄舎に閉じ込めたと当時の説話集が伝えている
◆意に沿わぬものは、何であろうと罰を与える。それで事なきを得られるのならまだありがたい話だけれど、昔も今も実際はそうもいかない
◆各地に大きな被害をもたらし、なお降りやまぬ長雨に天の無情を恨み、感染爆発の様相を呈している新型コロナウイルスのニュースに接しては地上の難敵を憎む。二つの災害のあいだで心がふさぐ毎日が続く
◆兵庫県の新たなコロナ感染者は、きのう初めて800人を超えた。3度ならず4度目の緊急事態宣言である。デルタ株の猛威を目にし「制御不能」という言葉まで耳にした。いらだち、正直うろたえてもいる
◆ウイルスを獄につなぐ方法があるとしたら、人出をできる限り減らすことに他ならない。そんなことは今更言われずともみな知っている。国民が聞き、見たいのは「よし分かった」と誰もがうなずけるメッセージであり姿勢ですよ。菅さん…
◆と、事ここに至って説かねばならない悲しさ。出口はどこにある。

後記

これは全段落の末にもってこないと続かないと考え、併せて一文に削りました。

雨を容器に入れ獄舎に閉じ込めたという
◆当時の説話集が伝えている。

雨を容器に入れ獄舎に閉じ込めたと当時の説話集が伝えている

『しかし』は不要と判断しました。

そんなことはしかし、今更言われずともみな知っている。

そんなことは今更言われずともみな知っている。

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神戸新聞NEXT|正平調|
https://www.kobe-np.co.jp/column/seihei/202108/0014599955.shtml
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