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【映画感想85】ステージ・マザー/トム・フィッツジェラルド(2022)



ある日突然亡き息子のゲイバーを継ぐことになった母親が、閉店寸前のお店を立て直すために頑張るお話し。

母親メイベリンは教会で聖歌隊を指導していた経験から口パクではなく実際に歌うべきだと主張するのだけど、ショーの素人であり女性でもあるメイベリンのいうことには今ひとつ説得力がなく苦戦します。

これ、一歩間違えると土着信仰をもつ先住民にキリスト教を布教しようとしたヨーロッパ人のような「あなたたちを理解している、あなたたちのためを思っている」という善意のおせっかいになりかねない際どいところな気がするのですが、メイベリンがスタッフを救って「あげる」、という一方的な構図ではなく彼女自身が逆に救われてもいるという所と、そもそも息子も同じことをしようとしていた、という事実があったことで緩和されてる気がしました。なんだか今後、LGBT関連の映画にもポリコレを感じることが増えそうだなあ。

トントン拍子に何でも上手く言っちゃうストーリーではあるのですが、やっぱり最後の息子とのショーの共演シーンがすごくよかったです。

映像も、周りのスタッフも、衣装も、メイベリン自身も、この映画で起きたすべての出来事が地層のように重なり合って実現できたショーだから感慨がすごい。
ミュージカル映画のように歌唱力がめちゃくちゃすごいわけではないんだけど、これは上手い下手は関係ない気がしました。

「現実にはこんなにうまくいかないよ」と言うひともいるだろうけど、現実が絶望だらけだからこそ、たまには箱の底に残った一握りの希望を凝縮したような映画がみたい日もある気がして、なんだかそんな気分のひとにおすすめな映画でした。



※追記
とんとん拍子にいい方向に進むけど、シエラに家賃を請求されるくだりだけなぜか生々しくてちょっと好きでした。笑



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