バカ2人
ダメ大学生
「明日〇〇町のパチンコ屋がでっかいイベントやるらしいから、朝から並ぼうぜ!」
学生時代、兄のように慕っていた先輩から誘いを受けた。
「すみません、行きたいけど明日は朝イチの講義が入ってるんです!」
という言葉がダメ大学生だった私の口から出るはずもなく、代わりに
「マジっすか!? 何時から並びます!?」
と、テンションマックスの声が飛び出すのだった。
当時はまだパチンコやスロットの規制が緩く、集客のためのイベントも問題なかった素晴らしい時代だった。 ※ 今はパチンコ店のイベントは禁止
並んだ結果
アホみたいに早い時間から並んだのだが、私達を上回るアホが何人かいた。
詳しい話は端折るが、2人とも目当ての台に座ることができ、バカみたいに勝つことができた。
2人合わせて20万円以上の勝ちだった。
投資も勝ち分も折半する約束だったので、それぞれ10万円以上の現金を半日で稼いでしまった。
こうもたやすく大金が手に入る可能性があるので勘違いしてしまうが、パチンコやスロットはトータル的には必ず負ける仕組みになっている。
そうでなければパチンコ屋という商売は成り立たない。
だがそんなことは当時の私達には関係なく、お猿さん以上にキャッキャとはしゃぎながらパチンコ屋を後にした。
使い道は?
私達がダメ大学生だった所以だが、勝ち分をしっかり貯金するわけでもなく、すぐ何かに使おうとする。
だが、ここで問題が発生するのだ。
「さて、この後どうする?」
そろそろ夕飯を食べてもいいぐらいの時間だったが、私達2人は超小食だった。
「うぇ~い! 勝ったから焼肉行こうぜ!!」
なんてことにはならない。
焼肉は好きだが、食べたら数時間後にはモタれてしまう瘦せ型2人だった。
たまに焼肉に行っても、2人して冷麺を食べるやつらなのだ。
かといって何か物品を購入することもない。
私達は物欲もなかった。
また、今でこそ私は大酒飲みだが、当時はそこまで飲酒することはなく、先輩に至っては完全なる下戸。
なので「パーッと飲みに行こうぜ!」なんてことにもならない。
結局、財布の中身が潤ったまま少しばかり時が流れ、次回のパチンコ・スロット代へと消えていくのだった。
珍しく購入
しかしその日は違った。
「腹も減ってないし、とりあえずぶらぶらするか」
先輩に促され、地元のアーケードをぶらぶら歩き回った。
そしてとあるデパ地下にて、私達はソレを見つけてしまう。
「陽木、これ!」
「先輩、これ!」
バカ2人がまったく同じタイミングで、同じ物を指さしていた。
2人が指さした物、それは 化粧箱入りの高級マンゴー だった。
もう10年以上前のことなので詳細な値段は忘れてしまったが、1玉数万円だったのは間違いない。
「陽木、これ買うぞ!」
「はい!」
私達2人は大切なことを忘れたまま、マンゴーを抱えてレジへと急いだ。
実食!
「早く切ってくれ!」
先輩のアパートについてすぐ、もう我慢ならんとばかりに先輩が急かしてきた。
わかってる、私だって早く食べたい!
包丁で真っ二つに切り分け、半身ずつ手に取り、スプーンで身をすくい口に運んだ。
ゆっくりと咀嚼した後、私達は口を揃えて言った。
「「あっま……」」
私達は、自分らが甘いのが苦手な人間であることを忘れていたのだ。
世の人々はこの甘さを求めて、もしくは夢見て購入するのだろうが、いかんせん私達には甘すぎた。
「俺、もういらない……」
「俺もです……」
ちなみに、半身ずつ分けたがその半身ですら「万」を下らない。
それなのにバカ2人は一口でギブアップしたのだ。
その後
「超高級マンゴーあるんだけどさ、食べに来ない?」
「先輩と2人で独占するのは違うと思ってさ!」
自分達が食べきれなかっただけなのに、恩着せがましい言い方で食べてくれる人がいないか、手あたり次第連絡しまくった。
当時はマンゴーブームだったこともあり、幸いにも食べてくれる人はすぐに見つかり、
「うめぇ!」
「これホントに全部食べていいんですか!?」
と喜んで食べて(処理して)くれた。
宮崎県で丹精込めてマンゴーを作ってくださった方、本当に申し訳ございません。
終わり
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