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フィンランド、服はどこで買う?


数年前、ヘルシンキで起業家の方に取材をしたことがある。彼女の会社ではフィンランドの小規模なアパレルブランドの商品をまとめて買うことができるプラットフォームとアプリケーションを開発していた。詳しくは忘れてしまったが彼女はこんなことを言っていた。

フィンランドは世界で最も服にお金を使わない国のひとつなんです。

あるデータによると、2021年フィンランド人は一年間に平均で820€を服と靴に払ったそうだ。これは当時のレートでは約10万円に相当する。こう聞くと日本とそう変わらないような気もするが、marimekkoのTシャツが1万円以上するような北欧の物価の高さを鑑みれば出費の割合としては高くない。

ファストファッションかmarimekkoか


高校留学時代、私のフラストレーションのひとつがファッションだった。当時(いまもあまり変わらないが)ロヴァニエミで、高校生の手が届くお店はH&Mしかなかった。

現地の同級生にとっても状況は同じで、放課後H&Mに行くと大抵同じ高校の子たちが何人かショッピングをしていた。そのためか、高校の子たちの多くが「同じような格好」をしていた。当時の流行りは黒スキニーに、レーヨンのぴらぴらのブラウス、ヒールの高い黒いブーツに、ミリタリーコートが定番だった。

(日本ではもっとみんなそれぞれのスタイルを楽しんでいるし、天然素材100%でも安くていい服が買えるのに!)と当時の私は服の質とファッションのつまらなさに辟易していた。

セカンドハンドという選択


去年、友人と何度かショッピングに寄ったが、誰も量販店では何も買わなかった。友人が理想のカバンを見つけたのはセカンドハンドショップだ。

従来からフィンランドをはじめとした北欧・ヨーロッパではセカンドハンドのカルチャーが活発だか、フィンランドでは特にこの数年でアパレルに特化したおしゃれで綺麗なセカンドハンドショップが増えたように思う。

10年前、ロヴァニエミのセカンドハンドショップは、出品者がテーブル・棚を一定期間借りて、そこに何でも置いて売ることができるタイプのお店しかなった。もちろん服も売り買いできるが、他のものと混ざって探すのも一苦労だし、やはりすこし古びた雰囲気がある。

一方で、アパレルに特化したセカンドハンドショップは、服だけが綺麗に並べられ、清潔感も増して、より服屋さんっぽく買い物をできる点がとてもいい。

ロヴァニエミには2020年にオープンしたSUMKというお店が拡大中だ。


トゥルクのMAANANTAIMARKETもポップな店内が可愛らしかった。


ヘルシンキのReloveは以前にも紹介したが、ここは出品者への棚貸しではなく、店がアイテムやカラーごとに商品を整理していて、さらに服屋さんらしくなっている。

オンラインの波、海外製品は避けられない


やはり近年で一番影響が大きいのはネットショッピングだろう。Zalandoというベルリン発祥のヨーロッパ圏のオンラインモールを利用する人がフィンランドでもとても多いそうだ。 また、ZARAのオンラインショッピングが便利なのはフィンランドでも同じだ。

フィンランドの郵送には1週間以上は少なくともかかり、最近かなりサービスが不安定なため日本よりは少し不便だが、それでも欲しい服がどこにいても手に入るのは嬉しい。

ただ、ホストファミリーのお母さんはずっと小売の仕事をしているため、「みんながネットで海外のものばかり買ったら、街からお店がなくなっちゃう!そしたら街からは何もなくなってしまうじゃない。」とこの流れに危機感を抱いている。実際に去年の滞在では、ロヴァニエミの中心のモールにも空きテナントが目立ち、寂しい雰囲気が気になった。

一方で、marimekkoなどもこれまでのプリント生地のワンピースやシャツだけでなく、セーターやフーディなど若者の目にもクールに映るラインナップを増やしたり、他企業とのコラボを展開している。これは「自国ブランド」を大切にするフィンランドの心が消えないための最後の策なのかもしれない。

フィンランドの生活布ものブランドLAPUANKANKURI


ファッションはひとそれぞれ、一概に語ることは難しい。ヘルシンキではそれぞれの個性が際立つ服装をした人を多く見かけたし、量販店は相変わらずだが、セカンドハンドショップも大小たくさんある。一方でロヴァニエミでは街の様子は10年前から大きくは変わらず、若者の服装も似たようなものだった。

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