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毒キノコを食べたと思って生きた心地がしなかった話

以前、こんな記事を書いた。

フィンランドの森ではいろいろなものが獲れるが、キノコは有識者がいないと食べてはいけませんと。

去年の滞在では私のやりたいことリストの上位にキノコ狩りを入れた。ラップランドでは特にキノコのシーズンも短く、これまでの滞在ではキノコ狩りをしたことがなかったからだ。

家の裏の森でキノコ狩り

2つめのホストファミリーはよくキノコ狩りをするということで、キノコ狩りをしたいと伝えると食後すぐに家の裏の森で簡単なキノコ狩りをして見せてくれた。

ホストファミリーのお母さんはフィンランド東部の出身で、ラップランドよりもキノコ狩りに馴染みがあるそう。キノコ狩り用ナイフを片手に30分ほど歩いていろいろなキノコの名前や味を説明してくれた。

獲ったその場で手際よくキノコを処理するお父さん


キノコには大きくsieni(カサの裏にひだがあるもの)とtatti(カサの裏がスポンジ状になっているもの)の2種類があり、このときはtattiをいくつかとって帰り、すぐに炒めて食べさせてくれた。

留学時代もよく犬の散歩をしていたような近所の森でもこんなにたくさんのキノコが見つかることに驚いた。

甘いライ麦パンにのせて食べるのが定番だそう。

森の小屋で女子会


また別の日。この日はホストシスターとその同級生たちと、女子だけで森の小屋に遊びに来ていた。ガタガタの道を行けるところまで四駆で走り、行き止まりからは荷物を背負って20分歩いた森の中。電気も水道も通っていない、コテージと呼ぶには素朴な建物があった。私はこんなMökki(みょっき)は小屋、夏小屋だと思っている。

大きくて古い木製のボート。これで夜中に銛漁をした。


森の小屋での2泊3日、メインのアクティビティはおしゃべり、トランプ、サウナ、食事だ。シンプルな森での遊びのために、食事の準備には船を出して銛漁をし、キノコ狩りもした。

私はキノコ狩りチームになり、キノコに詳しい友人と食べられるキノコを探して歩いた。1時間ほど歩いてバケツ三分の一ほどのキノコが何種類か見つかった。

虫に喰われていないきれいなものを探す。

疑わしいキノコ

小屋に帰り、釣りチームと合流。キノコを綺麗にしたり、釣って来た魚の準備を始めた。

するとキノコのバケツを覗き込んで何やら話し合っている。釣りチームにいたもう一人のキノコ有識者が、このキノコは食べられないんじゃないか、と言うのだ。キノコに詳しい二人がGoogleで検索したり、ポケット図鑑を読んだりしながらああでもない、こうでもない。写真をとって前述のホストファミリーに送ってみたりもしたが、わからなかった。結局、リスクは避けて疑わしいキノコは取り除いた。

【注意】
検索エンジンでの写真検索などでの判断は不確実であるため注意喚起がされている。
キノコは生えている場所や根本の形状など複合的に判断するため、必ず有識者と一緒に確実に安全なものだけを選ぶ必要がある。安易に食べてはいけない。

このまま死ぬのかと思った夜

次の日、帰宅するとホストファミリーが豪華な牛肉料理を用意して待っていてくれた。 

シャワーも浴びてさっぱり眠りについた夜、私は吐き気と腹痛に襲われて何度も目が覚め、寝られなかった。

ふと頭をよぎる疑わしいキノコ。毒キノコを調べてみると、私たちが食べなかったキノコに似ている。潜伏期間が1日だ。あー食べてしまったかもしれない。死ぬこともあるらしい。あー死ぬのかもしれない。生きた心地がしなかったが、気がつくとに眠りに落ちていた。

朝起きると気分はよくなっていた。ホストファミリーのお父さんに事情を説明すると、心配してその日は仕事を休んで家にいてくれた。一緒にキノコを食べた友達たちにも大丈夫か聞いてくれたりと、ちょっとした騒動だった。

それ以上の体調不良はなく、私は元気になった。

今だから笑えるけれど

かなり後から、私は牛肉アレルギーだということに気がついた。以前お医者さんに「レベルが低いアレルギーがあります。普段は大丈夫ですが、疲れているときに大量に食べないでくださいね」と言われていたのを思い出した。自覚はなかった。

それだ。慣れない小屋滞在が毎週末続き、疲れていたところにガツンとビーフ煮込みを食べたから。私の毒キノコ騒動はアレルギーでお腹を壊しただけだった。

笑い話で済んだからよかったものの、絶対大丈夫と言えるもの以外に手を出すと、こんな不安なことになるといういい教訓だった。

旅行で森を訪れる方は決して安易に食べてはいけない。

なんの罪もないビーフ煮込み。美味しかった。

# サムネイルは致死性の毒キノコである。割とどこにでも生えているので要注意。

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