美術品としての写真を、4800円で買った話
昨年末に写真を買った。
写真を買うにもいろいろある。アイドルの写真集とか観光地のポストカードとか仕事で使う写真素材とか。
いろいろある中で、このたび僕は美術品としての写真を買った。
ちょっとこの誇らしい気持ちと、買うに至った経緯を、メモとして残しておきたい。
知人のライター?編集者?にくいしんさん(@Quishin)という人がいる。その弟・大川直也さんがいろんな作品をつくるアーティストだそうで、2019年12月に渋谷ギャラリー・ルデコで展示をやっていた。
『HUMAN SHAPED LIGHTS』という名前のその個展では、主に写真作品が展示されていた。ジョギングの合間にふらっと行ってみた(入場無料!)。
(ルデコの展示のページより)
で、どうだったかというと、
結論、もうめっちゃくちゃ良かった。
僕はアートのことはよくわからないので、こんな感覚で見ていた。
(写真っていいな!)
(きれいな風景とかかっこいい何かが写ってるわけじゃないのに、すごくいい!)
(なんでこの写真がいいなって思うのか自分でもまったくわからないけど何かがいいぞ!)
まあなんというか、わからんけどグッとくる感じなわけです。
そういうのあるじゃないですか。
そのとき展示されていた作品の一部はこのページにも載っている。ぜひ見て。
で、作品を4800円で買って帰った。
じつは個展の会場についたら、タイミングがいいのか、悪いのか、トークセッションの真っ最中だった。
大川直也さんと、FINLANDSの塩入冬湖さんが話していて、モデレーターは兄・くいしんさんだった(兄弟仲いいな)。
ここで話されていたこともすごく面白かった。メモってないのでざっくりとまとめると、こんな内容だった。
・この個展で展示している写真は1枚4800円で買える
・正直めっちゃ安いので他のアーティストからは怒られている
・でも美術品がお金持ちだけのものになってるのはおかしい
・写真作品て現像すれば同じものがいくらでもできるけど、枚数制限して作者がシリアルナンバー入れることで価値を出している
・でもそれって本当アートなん? みんなが手に触れてこそじゃない?
・だから間口を広げるために4800円にした
・CDアルバムくらいな感覚で美術品としての写真作品に触れてほしい
なるほどなあと思った。すっごい面白い。既存の商習慣みたいなのをちょっと無視して間口広げるこういう話、大好き。
よかったら、こっちが本人のブログなので読んでみてほしい。より熱く語られている。
「美術品の売買をどこか遠い場所で起こる、縁のない出来事にしておきたくない。僕の作品を欲しいと思った誰かを、芸術の当事者にしたい」
「僕の作品に、美術品としての付加価値はいりません。値段以外の価値は、あなたがつけてください」(一部抜粋)
この話を間近で聞いて、実際に素晴らしい作品を見てしまったら、もう買わないという選択肢はない。2枚買って帰った(ジョギング中なので手ぶらだったけど振り込みOKだった)。
ただ困ったのは、これまで写真はもちろん、絵も買ったことがなかったので、いったいどうやって飾ればいいのか…。
悩んでいたら、A3プリントは21インチの外部モニターにぴったりのサイズだった。
もう1枚はデスクになんとなく立て掛けておいた。外部モニター、もう1つほしいな。
結局、会社のデスク周りがこんな感じになった。わりと気に入っている。仕事中にMacからちょっと目をそらすと、美術作品が目に入る。いい…。
(一応、ちゃんとした額縁を用意する気持ちはある)
大川直也さんの作品は今年からネットでも買えるようになった。
僕のデスクに飾ってある2枚のうち1つ、「Somewhere on a planet Op.1」もまだ在庫があるようだ。
というわけで、2020年は「美術品を買ったことがある人」として生きている。なんだか誇らしい気持ちだ。
美術品の価値ってなんだろう。
正直よくわからないが、僕にとってはいまのところ、「チラッと見たときにいい気分になる」「なんだか大人になった感じがする」「美術品を買った実績解除」みたいな感じだろうか。
まあなんでも最初はこんなものだ。