【企業分析】株式会社レナウン(東一)

総括
経営指標推移も悪くこれといった打開策がない中でのコロナ直撃で民事再生手続開始に至ったことは仕方のない状況である。
投資家としては資金繰り悪化の程度、及びそれに伴う継続企業の前提に関する注記についてシビアに考えるべきであっただろう。
また、後述する関連当事者取引についてもその性質から注意を払っておきたかった点である(これは今後改めて問題視される可能性大)。
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事業内容**
衣服等繊維製品関連事業のみの単一セグメント。
製品の製造及び販売を行っており基幹ブランドであるダーバン、アクアスキュータム、アーノルドパーマータイムレスに経営資源を集中していた。
最近ではEC事業の強化及びサブスクリプシ ョン型事業「着ルダケ」にも注力。
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【連結】主要な経営指標推移**
目につくのは利益率の低さと15期からの急激な経営成績の悪化で、16期は10ヶ月で67億の純損失を計上した結果純資産が153億に急減している。
※16期は決算期変更で10ヶ月のみ。

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【単体】主要な経営指標推移
連結同様に15期からの急激な業績悪化が目につき、この期間に何か通常と異なる経営上の大きな問題が発生していたであろうことが分かる。

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財務諸表分析(連結)
※全て直近期2019年12月末と前期2019年2月末の比較
◆BS
総資産397億→323億へと約20%の大幅減。その要因としてまず目につくのが貸倒引当金0.7億→58億の急増。これが今回の民事再生手続の決定打ではあるがそもそもの原因は本業の不振。
現預金の90億→53億の減少、債権の111億→134億の増加、商品65億→75億の増加、と資金繰りの悪化が手に取るように分かる。
仮に来季も同じ業績ならあと1年でほぼ資金ショート。黒字倒産という言葉もあるように資金ショートは一発アウトになりかねないのでここで見限ったホルダーは多いのではないか。
債務については直近期まではそれほどの急増は見受けられず何とか支払えていた模様。
◆PL
目につくのはBS同様に貸引繰入の0億→57億の急増。
固定資産売却益16億は有報からだけでは経緯不明であるが、仮に資金繰り改善のためであればそれをもってして破産リスク大なのでホルダーなら超警戒すべき。
◆継続企業の前提
いわゆるGC注記でこの会社は『潰れる可能性大』ですって表明。この注記が付いた企業の株は上場廃止で0円になる可能性大なので絶対に買ってはいけない。
レナウンの場合は…業績低迷による資金繰りの悪化で財務制限条項に抵触しており既に瀕死の状況に追い討ちをかけてコロナ直撃。ポイントは原因が一過性のものではないってとこ。
こういう状況を脱却するのは親会社や金融機関からの資金援助が多いがその目処が立たないからこの注記が付けられているわけで、案の定有報開示から間も無く民事再生手続が開始されている。
◆その他
借入を中心にした債務19億に対し担保に現預金20億が入っているのもこの業績では致命傷になりかねない。

株価推移
業績推移の通り低迷気味。

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民事再生手続開始
2020年5月15日発表。
原因はGC注記に記載されていた懸念事項がそのまま現実となった状況。
要は資金ショートしたためで、元々赤字で業績低迷していたのは間違い無いがコロナで百貨店・量販店の営業がほぼ休業となり企業活動が数ヶ月停止したことも大きな要因であることも否定できない。

そして今回のレナウンで見逃せないのが恒成国際発展 有限公司(以下恒成)との取引。恒成はレナウンの親会社である山東如意科技集団有限公司(以下山東)の子会社でいわゆる兄弟会社。

以下は関連当事者取引情報に記載されたレナウンと恒成の取引状況
 ・2019年12月期=41億の売上に対し53億の債権
 ・2019年2月期=35億の売上に対し35億の債権残、49億の仕入に対し債務は0(=支払は全額しているのに入金は一切されていないという状況で相当に違和感がある)。
 ・2018年2月期=173億の仕入に対し債務はほぼ0
 ・2017年2月期=145億の仕入に対し債務はほぼ0

おそらく山東の指示に基づく取引ではあろうが2018年2月期までは利益が出ていることから恒成からの仕入は売上につながっているように見える。
違和感があるのは2019年2月からの取引で2期の売上高合計76億に対し53億が未回収(=これが貸引対象)で明らかに異常であるが、2019年12月期は仕入0となっているのも気になる。
業績が悪い中で兄弟会社への売上を開始しその大部分が未回収で残っている状況から、今後売上の実在性について問題視される可能性は高いだろう。
あまり関連当事者取引まで気にする投資家も多くはないかもしれないが、特に海外との取引は内容が不透明なものが多く最悪架空の可能性もあるため要注意。