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<絵本制作秘話「くまとかきのみ」>

2022年7月2日より、福岡県朝倉市でギャラリーcobaco さんで「くまとかきのみ」の展示会が開催されます。

今朝、朝日新聞(福岡版)とデジタル版で記事が出た。素晴らしい記事なのでぜひ読んでほしい。

2021.3月に福岡県朝倉市平榎などで里山の保全や復興支援、様々な分野で、こどもたちと共に活動しているあさ・くるさんとご縁がありました。代表の松本さん、そして九州北部豪雨で被災された現地の方々と関わらせてもらいながら、絵本をつくった。


遠い話だった。距離も心も。

九州北部豪雨で大変な被害に見舞われた福岡県朝倉市。もうすぐ5年が経とうとしている。当時朝倉市では、12時間で900mmほど雨が降った。最大級の降水量だった。僕はテレビやネットニュースでぼんやり眺めて、今になって思うことは、どこか遠い国の話のように、体も心もずいぶん遠いところから見ていた気がする。現地に行ってからは一変した。どこにでもいずれ起きるものだと。そして雨が降るたびに出会った人のことを想うようになった。

青年たちに案内してもらう
ところどころ整地されているがまだ作業車などが往来している
崩れた箇所
至る所で見かける景色

百聞は一見にしかず。

視察という名目で昨年の夏に1週間ほど滞在して、冬も現地を訪れました。ずいぶんと整備が進んでいたり舗装されていて、「もう、大丈夫だよね。」・・・みたいな空気感が風景にまとっているように感じた。それは僕の心が思っただけなのかもしれない。けれども、現地の方と話したり感じるものとの差異というか、違和感を持った。多くは語らなかったけど、外観だけが治っていくような。癒えていない何かを僕は感じた。被災当時の写真や映像と比較して確実に復旧しているのはわかる。けれども実際はどこかツギハギのような気がしたのだ。バラバラというか。それは工事のことだけを指しているのではなく。

抱きしめることしかできない。

そこを歩き、息をして、手や声が届く距離の人たち、そして子どもたちと関わらせてもらった。そして滞在中、多くの言葉にできない、まとまらない気持ちが生まれた。いろんな意味で。すぐ言葉にすると居なくなりそうなもの。いろんな言葉にならない、モヤモヤしたもの。ただただ、抱きしめようと思いました。白黒はっきりさせるのではなく。そして手を何度も何度も合わせた。

何度も山に挨拶に行かせてもらった
灯すと話しているように火が揺れる。
滞在中は朝まで話すことが多かった。


12月の時点ではまだ今の絵本のあらすじが固まっていなかった。
冬の山々


絵本の構想、意見交換を松本さんと。

葛藤とうしろめたさ

僕は被災していないし、当時の現地での不安や恐ろしさを体験していない。言葉を選ばずに言うと僕は「部外者」で、その僕が現地の絵本を描くことに対してやっぱりうしろめたさがあった。直接被害にあった方、その後さまざまな思いをした方々の気持ちを救うまでもいかないにせよ。現地を題材にする以上責任は伴うと思った。(正確に言うと、そういう負荷を自分に課して作らなければ物を語る資格はないと勝手に思っていた。)

僕が絵本を作ったのではなく、絵本が僕に作らせた。

12月に現地に入り、3月に入稿しないと間に合わないというスケジュールがどんどん見えてきて、ぐずぐずしていられない時期に差し掛かってきた。でもまだ僕の中では「絵本を作る条件が整っていない」と堪えていた。すると突然、立退のお知らせが届いた。絵本の始まりと同じような、突然期限付きで家を失うということが起こった。そして世界ではウクライナへの軍事侵攻が始まって僕はものすごく不安になった。そして急に筆が動き始めた。

一番最初に出来上がった絵、これだけは鮮明にイメージができていた。僕が一番表現したかったシーン。

災害を無かったことできない。今のこの気持ちを無かったことにできない。現地の様子やその現地にいる(いた)人の気持ちを思うととてもじゃないけど背負いきれないと思った。僕は、ただただ現地の人たちと語り合えることが嬉しかった。そして罪悪感が芽生えるほど、どうしようもなく楽しかった。それを素直に喜んでいいだろうかと。うしろめたさも一緒くたになっていた。そして、慮って共感したフリをするのではなくて、

ありのまま感じたものを。
どうにもできぬ、
どうにもならぬこと。
言葉にはできないこと、
霧中のような気持ちを
一番正直で、
素直で温かいところで抱きしめる。

そんなような感覚で
描いていたと思う。
ずっと願って描いた。
というよりも
絵本に描かされたという
表現がしっくりくる。

最後はただ写しているような感覚。

現地へ行って「力になりたい」と強く思った。そうさせたのは、出会う人の言葉や態度。帰ってきてからも、筆を動かしている時もずっとみんなが笑って見守っているような気がした。いろんな力(はたらき)で物語が紡がれていきました。揃った感じ。結局描き始めて、完成までは異常な速さでした。

災害を経て生まれたもの、授かったもの。物語というもの。

災害によって、出会いが生まれ、未来が創られていく。授かっていくという表現でしょうか。僕らのそういったエネルギーを、喜びを分かつもの。物語にはそういう力があるのです。たくましいクマのような。物語は魂で、未来へと漕いでくれるもの。僕はその人たちや見えないものを感じ取って、ただただ編んでいく。僕はそういう態度を貫きたい。

最終日の朝まで語り合った方々。お気に入りの写真

余談

今朝の新聞を読んで
現地の方から連絡があったそう。

新聞みました。
とてもよくわかります。
同じ思いです。
絵本、買いたいのですが、
どこで買えますか?

僕はこういうコトをつくりたいのだと。
こういうことを大事に思える
人間でいたいのだと思いました。

絵本展示会、イベントのご案内 

〜九州北部豪雨5年の節目に〜

会期| 7.2(土)〜10(日)
会場| gallery cobaco
https://gallerycobaco.com/
時間| 11:00~17:00

<7/2,7/3イベントは予約必須>
https://www.facebook.com/events/1062212854672831

もしくは、下記のフォームにてお申し込みください。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScgXdr8x1_Tkz-KYneXxjR7kRAmttjNddutJKpDPajjQaFXgA/viewform?usp=send_form





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