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障害者虐待防止法の通報件数と認定率の年次推移

日本には、児童虐待防止法、高齢者虐待防止法、障害者虐待防止法、DV防止法などありますが、基本的には年々通報件数は増えます。それは現象の変化というよりも、人々の認識の変化が大きいわけです。同じ現象を見ても「虐待」という言葉を知っているだけで通報へのハードルは下がります。

ですので、「過去最悪」というのは毎年言われているので、この事自体は「私達の社会は虐待や暴力を許さない良い社会になっている」ということでいいかと思います。

一方で、虐待防止法は「通報」と「認定」を分けて調べることができます。行政が立ち入り調査等をして「ああ、これは虐待と認定できるな」とか「え、これは虐待と認定しないよ」と一応の判断はするわけです。

ですから、通報件数よりも「認定率」のほうが大事だったりするわけです。

障害者虐待防止法に基づく通報件数の年次推移

2012年(調査開始時)から2020年までの通報件数のグラフです。基本的には右肩上がりですね。養護者の数値が増えているのは、家族介護に対する支援がまだまだ不十分であることを示しています。

そして、大事な「認定率」のグラフです。鉄壁のガードを誇った「従事者」の認定率の低さも、年々高まっています。立ち入っても組織的な防御が可能な社会福祉法人も、さすがにごまかしきれる事案が減ってきているのかも?また行政との馴れ合いも流石に通じなくなってきているのかもしれません。(過去にはこんな刑事事件化した案件も)

注目すべきは、養護者(家族)の認定率が一貫して下がっていることです。家族が虐待する理由は概ね介護疲れが原因です。そして障害者虐待防止法は、加害者を罰するための法律ではなく、被害者の安全を守り、加害者を支援するための法律でもあります(正式名称は障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)。介護に疲れてしまえば、だれでも虐待するリスクが有るため、通報=罰、ではなく通報=介護者への支援、と法の理念が浸透しつつあると考えると、これも良い傾向です。

障害者虐待防止法は、障害者権利条約批准のために関係者が奔走して作った大事な法律です。

虐待防止法が適用されていない病院や学校も、そろそろ「陥落」の雰囲気もあります。

まだまだ大事に育てたい法律です。

(追伸)
今回からSTATAを使った折れ線グラフに変えました。定点観測するにはdoファイルで自動化すると便利です。

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