(20)自然法則で勝利する-竹簡孫子 形篇第四
形篇の解説も最後になりました。つまるところ形篇では、何を伝えたいのか。
「自然法則に則りなさい」ということです。
つまり、相手よりも戦力を蓄え、より大きな戦力、いや総合力、国力を持つものが勝つという子供でもわかる常識に則りなさいということです。
戦う事が仕事の軍人は、精神論や戦略戦術、武器などで勝利を収めようとするかもしれませんが、孫子は国家の総合力から蓄えられる戦力で勝つという基本的な方針にしています。
孫子は、「陰陽」の原理と合致していますので、この後の内容は、害を利に、死を生に転換させる方法を説いてきます。しかし、それでもなお前提には、戦力の優位で決着するという前提を外しておりません。
孫子では、
【書き下し文】
法は、一に曰く度(たく)、二に曰く量、三に曰く数、四に曰く称、五に曰く勝。地は度を生じ、度は量を生じ、量は数を生じ、数は称を生じ、称は勝を生ず。勝兵は鎰(いつ)を以て銖(しゅ)を称るが如く、敗兵は銖(しゅ)を以て鎰(いつ)を称るが如し。
と述べています。
「度」→「量」→「数」→「称」 →→ 「勝」
形篇では、戦力を蓄え充実させることを説いていますので、「度」は国土とか耕作地と解釈するとわかりやすい、「量」は、そこから生産される物資、数は生産された物資で維持できる人口や兵力です。
この関係は、最上流から繋がるダムのようなものです。上流の水量がそのまま下流に流れていきます。
「孫子」形篇では当たり前のように勝つ、無理のない勝利を第一に考えよとします。
敵軍と比較する我が軍の戦力は、国土や生産量、人口、兵士数などに総合力できます。総合力のある相手とは戦ってはいけません。ですから先の大戦で日本が米国と戦争したことも、当時は文明が遅れていた中国と戦争したことも、当時の軍人は形篇を理解していなかったことの証明ではないでしょうか。
自然法則、「度」→「量」→「数」→「称」→「勝」の前に、「善なる者は、道を修めて法を保つ。故に能く勝敗の正と為る」とあります。
「道を修めて法を保つ」とは
自然摂理(原理原則)(道)をしっかりと理解し、重たいものが軽いものを弾き飛ばせるという自然法則(法)を維持するということです。
「故に能く勝敗の正と為る」とは、正の兵法、相手よりも戦力を充実するという正の兵法、正攻法で勝敗を決着できるということです。
戦前の日本軍は、正の兵法を保つ事ができなかった。
しかしこれは戦前の日本軍だけの話ではありません。現代のビジネスシーンでも多くの人が間違いを犯していることを忘れないようにしたいものです。