回想録シリーズ第4弾『モーントル』の楽曲説明

こんにちは、大地の恵みPです。回想録シリーズ第4弾『モーントル』の楽曲説明をします。最後まで読んでくれると嬉しいです。

※この話は私個人の心情がかなり前に出ています。世の中には色々な考え方があるのは承知の上で一意見だと思って見てもらえると幸いです。

この曲の原話となるストーリーは私が中学3年生の秋頃でした。当時の私にはクラスで居場所が無く、受験勉強や身の回りのことが何もかも上手くいかず疲れて、もういっそのこと消えてしまいたい、そんなことを考えてしまうほど自分にとってかなり辛かった時期でした。
そんな当時の私は、いつも学校帰りに通学路の途中にある小さな空き地のような場所に寄っていました。そこには3人ほど座れる広さのベンチが置いてあり、そこに座って何もせず何時間かぼーっとして帰る、そんな日々を送っていました。木々に囲まれた誰もいない空間、この静けさがとても心地よかったのを覚えています。

ある日、午前授業が終わりいつものようにその場所に行くといつもとは違う光景がありました。ベンチにおそらく60〜70歳程のとても柔らかい表情をしたおじいちゃんが座っていました。先客がいたみたいだし今日は帰ろうかなと思った時、私の存在に気づいたそのおじいちゃんからこう聞かれました。

「きみ1人かい?」

「あ、はい…いつもここに来ているんですか?」

「いや、たまたま散歩しててね、少し休もうと思ってね」

話し声がとても優しく、きちんと目を見て聞いてくれるおじいちゃんに私は少し安心して、そのままベンチに座りお喋りをしました。
聞けばそのおじいちゃんは若い頃からこの近くに住んでいて、最近奥さんが亡くなって1人だった、人間と話したのは久しぶりだったなど、いろんなことを話してくれました。いくつか共通している部分を見つけて、この人になら打ち明けてもいいかもしれない、今までずっと誰にも話せずにいたこと、辛かったことをそのおじいちゃんに話しました。学校のこと、受験のこと、身の回りのこと、もう生きたくないと思ってること、気がついたらかなりアンダーグラウンドな部分も話してしまっていておじいちゃんに謝ったのですが、
「そうだったのか。辛かったね」
という一言と背中をさすってくれて、私の中で色々込み上げて堪えきれずその場で泣いてしまいました。ずっとキツかった、どうしてこんなことになったのか、もう分からずに過ごしていた、そんな日々だったのがその日はちょっと変わったような気がしました。

ティッシュをくれたおじいちゃんは私にこう教えてくれました。
「君は心がいっぱいいっぱいになってきっと周りが見えなくなっている。辛いなら辛いと今のように打ち明けても良いんだよ。きっと理解してくれる人がいる。そういう人たちを大切にしなさい。」と。
その言葉を聞いてハッとしました。私は完全に居場所がないわけではなかった、話せる人は何人かいた、同じことを受けている人は私だけではなかったことに気づいて、どうしてその人達に助けてくれと言う選択肢をとらなかったんだろうと後悔しました。しかしそれと同時にもしそこで自分が否定されたらどうしよう、そんな不安がよぎりました。私はおじいちゃんにそのことを相談しました。するとこんな返答が返ってきました。
「同じような境遇でそれが辛いものなら、きっと共感してくれると思うよ。何より話して見ないとわからないじゃないか」と。
今まではその先の反応を気にして怖くて踏み出せずにいましたが、それよりもこの状況をを打開したいと言う気持ちが勝り、明日は頑張って打ち明けてみようと決意しました。そう思ったらとても気持ちが軽くなり、私は相談に乗ってくれたおじいちゃんに感謝と突然こんなことを話してしまったことに対しての謝罪をしました。するとおじいちゃんは「いいんだ。私も最近妻を亡くしてね、こうやって人と話すのは久しぶりだったんだ。」と。
そこからおじいちゃんは自身と奥さんの過去についていろいろ話してくれました。

おじいちゃんは奥さんと出会ってから、本当にいろんなことがあったといいます。結婚する前の2人はコーヒー好きが一致してよく喫茶店に行っていたこと、その時は毎度のように雨が降っていたのだそうです。それはプロポーズの時もそうだったようでおじいちゃんはこう語ります。
「お互いに晴れは眩しいから好きじゃないとはいえ、なんでこんなに雨ばかり降るのかと思っていたよ。でも奥さんに結婚しようと言う時の雨はありがたかった。緊張で熱くなっていたのを冷ましてくれたからね。あとは雨を見るといろんな思い出が蘇ってくるんだよ。」
それから長い間で子供が生まれたり、何気ない日常や特別なことも全て幸せだった、どれも本当に素晴らしいことばかりだったと話します。すごく素敵だなと思いながら私は夢中で聞いていました。
するとおじいちゃんはこう言います。
「辛かったことや、大変だったことは今までたくさんあった。どれも1人では大きすぎるものばかりだった。でもその度に私は家族に相談してきた。とても頼りなかった僕の話を真剣に聞いてくれていつも良い方向へ一緒に行くことができた。みんなのおかげだった。」
「だから君も頼ることを恐れないでほしい」と。
突然真剣な雰囲気になって少し驚きましたが私は頷き、分かりました、としっかりと目を見てこう返答しました。
おじいちゃんは続けてこう語ります。
「葬式の時の奥さんはどこか微笑んでいるような表情でね、嫌な顔して逝ってほしくはなかったから少し安心したな。諸々終わって寝た時夢に出てきたんだ。奥さんがこっちに来てよって言い出すもんだからびっくりしたよ。」
少し涙目になったおじいちゃんは続けます。
「家は1人で過ごすにはあまりにも静かで広いからね、最近はこうして散歩に行っているんだ。外に出て上を見れば奥さんと同じところに立っている気がして嬉しいんだ。」と。
現実から離れる場所を探していたのは私だけじゃなかったんだ、おじいちゃんと奥さんは今もこうして繋がっていると思うと愛っていうのは本当にすごいな、もし仮に私に愛人がいたとしてその人が亡くなってしまったら、自分も消えたいって思ってしまうだろうに、おじいちゃんは強いなと思っていました。

すっかり話し込んでしまい、気がつけば太陽が傾き始めていたのでここで解散することになりました。最後に礼とさよならを言ってお互い帰路につきました。明日はまだ不安でしたが心なしかいつもより足が軽いような気がしました。

その後の詳細は省きますが、先生や友人に相談したところ理解、対応してくれて、全て解決したわけではありませんでしたが、以前よりとても過ごしやすく残りの学校生活を送ることができました。あれからは私も1人では大きいことはできるだけ抱え込まずに周りに相談して解決することを心がけています。その甲斐あって高校、そして今の大学生活ではたくさんん友達ができてとても楽しい日々を送ることができています。

私もあのおじいちゃんのように人に頼ることを出来る人、そして人を心から愛せる人間になりたい、自分1人だけじゃなくてもっと広い視野を持つ人間になりたいと決め、今頑張っています。このことを一生鮮明に思い出せるようにするために、うちの初音ミクと一緒にこの『モーントル』という曲を作りました。おじいちゃんから教わった大事なこととあの時の私のリアルな心情や考え方をまとめて、オリジナルストーリーの形で仕上げました。
何かに悩んでいてどうすることができない時、周りに助けを言える勇気とそれを受け入れてくれる環境がさらに充実し、優しい社会になっていくことを私は願っています。
以上です。ありがとうございました。

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