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トラウマ料理の克服

 子供の頃に好きで食べていたものでも、あまりに頻繁に食べ過ぎていると飽きてしまい、やがて大人になり苦手、ひいては嫌いになることがある。
 ましてや、たいして好きでもないものをしょっちゅう食べさせられていた場合、それはもはやトラウマになってしまいそうだ。
 食べたいものを聞かれて素直に食べたいものを伝えても、作り手の気が乗らなければ結局作ってもらえない。そういったことが何度もあると「どうせ作ってくれないんでしょ」ということになり、「なんでもいいよ」と答えることが多くなる。そんな時、僕の家では【じゃがいもと魚肉ソーセージの炒めもの】が食卓に上るケースが圧倒的に多かった。記憶の中で大げさに盛られているだけなのかもしれないが、子供の頃に食べていたものを思い浮かべる時、今でも真っ先にその食事が登場するのだ。
 僕はそれがあまり好きではなかった。決してまずいわけではないのだが、最初に食べた時からどうも苦手だったと思う。それが〝なんでもいい時の献立〟として頻繁に出てくる。嫌いにならない方がおかしいだろう。
 ところが先日、突然そのトラウマ的料理を作ってみようと思った。本当に突然で自分でもどうしてなのか分からない。じゃがいも、魚肉ソーセージ、それにピーマンを加えてみることにした。オリーブオイルで炒め、コンソメで味付けした。
 これが驚くほど旨かったのだ。これまで作った一人暮らしのオトコ飯の中で一番と言ってもいいくらい。感動すら覚えた。
 オリーブオイルがよかったのか、コンソメの味付けがハマったのか、理由ははっきりしない。ただこの一皿で、子供の頃からのトラウマ料理が一転、フェイバリット料理へと華麗なる転身を遂げたのだ。
 おっと、あまり調子に乗ってもいけない。好きな料理も度を越して食べていると飽きが来てしまう。せっかくトラウマを克服したのだ。大事に作り続けていきたい。

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