見出し画像

自治会/UNIONの創り方(あるいはSFCで自治を行うということ) その2:学生自治はなぜ必要?

 なぜ自治が必要か、そもそも自治とは何か。今回は自治の哲学的なところについて書きます。要約するとこんな感じ。

学生の自由な活動を後押しするのが学生自治。学生自治を実現する装置が「湘南自治会」——SFCの学生自治会はSFC生のものであり、どのような自治会を創るかはSFC生が決めていける。


前回のおさらい

湘南自治会=SFCのキャンパス自治会(いまはまだない)
湘南自治会準備会=湘南自治会を創ることを考える団体
湘南自治会設立承認投票=湘南自治会を設立することを承認するかの投票。7月3日(土)から7月10日(土)に行われる。

 湘南自治会とは何か。それは「学生を自治に参与させるための組織」。では自治とは何か。なぜ自治が必要なのか。……というのが前回のラストに書いた提起でした。


自治会の理念(Philosophy)

 湘南自治会が掲げる理念(Philosophy)は、
・まったく新しいUNION
・Empowerment UNION
・真に「すべてのSFC」のためのUNION
・現に役に立つUNION
・永遠の創造
です。それにしても、なぜ自治会というものはこうも理念を掲げたがるのでしょう。単に「かっこいいから」ではないです。そもそも自治というものが理念抜きには成立しないからです。


前提①:学生自治会は自由な大学生の活動を保障するための自治機関である。

 まず前提。
 もともと日本の学生自治会は大学や国などに介入されずに、自由な大学生としての活動を保障するための自主、自律を主旨とした自治を行う機関でした。その結果、自治会は学生に対してはその様々な活動を自律・サポートし、大学側に対しては学生の代表として折衝するという機能を持つのでした。だから自治会の根拠は、大勢の学生の支持の上に成り立っている、というのが一応の建前です。現状はほとんど形骸化してますけど。

 どうして大学生が自由なのか、とか、大学や国に介入されちゃいけないのはなぜなのか、といった問いは懐疑を突き詰めれば「自然権はあるのか」みたいな問いになりかねないのですが……少しだけ追究してみましょう。そのためには、あの1940年あたりの戦争の歴史に遡らねばなりません。


 もともと学生自治会は、旧帝が一高二高だった時代にそこの先生から「学生はUNIONを持っておくべきだよ」という形で学生に与えられたものでした。当時の自治会は、大学からの指示を学生に伝えるパイプのような役割を果たしていたらしいです。

 パイプのような役割。
 それは戦争が激化しても果たされたものでした。国→大学→学生の上から下への命令体制の中に学生自治会は存在し、例えば学徒動員の中心になってしまったのもこの学生自治会でした。

 自分たちが何をしているのかを疑わずいたずらに機能を果たしてしまったこと、これへの反省が、戦後の学生自治会の根底にあります。憲法にも「大学の自治」という文言がありますが、そこにはもう二度と人体実験なんかしない、もう二度と戦争のための科学はしない、もう二度と国の言いなりなんかにはならない、これからは学問の自由を守り、同時に自分たちのやることに責任を持つ、そういう誓いと祈りがあるわけですよね。
 学生自治会も同様で、ただいたずらに大人の言うことを聞くのはやめて、これからは自分たちのことをもっとちゃんと自分たちで考えていこう、自分たちのことくらい自分たちで決めていこう、そういうことをしていきたいという決意の先に、戦後の学生自治会があるんです。


▼▼ここから脱線▼▼

 ところで、「大学の主権者が誰なのか」というのは興味深い問いです。考え方には変遷がありますし、いまでも諸説あるでしょうね。どうやら、1960年代以前の考え方では、大学の自治の構成員とは大学の教授のことを指していたらしいです。その後の学生運動のなかで、大学の主権者としての学生/あるいは学生の権利というものについて再検討されたという経緯があるそうで。湘南自治会準備会は「わたしたちはみなSFCの主権者である」というような言い方をしていますが、さて、わたしたち、とは……(ここ、みなさんからの反応があれば、どこかの回で詳しく話すかもしれません。)

△△脱線終わり△△


 で、そういうわけで、学生自治会は理念の話から入っていかないと、仕組みが説明しにくいところがあるんです。

 こういう理念で始まっているから、建前としては民主的な形での運営が必要で、だから選挙、議会といったものを用意して民主的な運営をします、規約も作ります、と学生自治会は約束する。そのようなしっかりした組織が、自治をすると言うのなら、ということで大学も学生に対してある程度の権利を認め、自治会を折衝や交渉の窓口として活用することになる。そうして学生自治会の特権と機能が成り立つわけです。
 ここまでがこれまでの日本の学生自治会のざっくりした理念的なあり方の話でした。


前提②:SFCにこれから新しく創る自治会のあり方は、SFC生が決められる

 で、もう一つの重要な前提がこちら。
 これまでの学生自治会のあり方が上に書いたようなものである一方で、これから創る新しい自治会がどんな組織になるかは、湘南自治会の構想次第なんです。これまでの自治会を必ずしも踏襲する必要はない。

 湘南自治会の大まかな構想は湘南自治会準備会構想初期の時点でも存在しましたが、あくまでこれを議論して模索してSFCに提案するというのが準備会の活動内容なのでした。自治会がどうあるべきかは明確に決まりきったものではなく、学生たち自身で選んでいける/考えていける、これが重要なんです。

 SFCの学生自治会はSFC生のものだから。

 University College LONDONのStudents' Union(概ね学生自治会のこと)が言ってますけど、

We can all make a change. Together, we’re a union that can work to make things better, on campus and beyond. UCL is yours, so it should be what you want it to be. We’re led by students. That means you’re in charge. 

Shonan Student Union is yours, so it should be what you want it to be. We’re led by students. That means you’re in charge. っつーわけなんですよ。


あって損なし、学生自治。

学生自治の意義は(いくつもあるんですが)、

① 学生の自由な大学生活を保障する
② 学生の主権者意識が育成される
③ 大学をよりよいものにする

というように説明することもできます。

 ①自由な大学生としての生活を保障してやれる、もっと過ごしやすくしてやることができる。
 学生自治が果たすべき機能そのものでもあります。

 ②学生が①を目指して自治をすればするほどに、そしてその自治が成功すればするだけ、学生個人に「社会の中の個人として、自身の活動や発言はちゃんと意味を持ったのだ」という体験が積もり、それが当人の自信となっていく。さらに、広く社会に関心を持って、よりよくしていこうとし続けられるようになる。
 ギデンズでいうところの「主体の底上げ」というものかもしれませんね。湘南自治会準備会は学生自治のこの機能・意義に「empowerment」と名付けています。

 ③学生たちが、社会に、SFCに、主権者としての関心を持ち、これらをより良くしていこうと取り組むことで、SFCそれ自体がアカデミーとしての正当性を高められていくことになる。
 そりゃそうだよね、授業一つとっても受ける側とする側とで作るものだし、それ以外にしても然りという。


学生自治を支えるための学生自治会

 で、これらの意義を果たすためにどうしたらいいか、が大切になるわけです。
 学生がちゃんと学生自治に参与するためには、「みんな参与しといてねー」「がんばってねー」と言うだけでは足りないし、学生の自治への参与を支援するためには、実際には、例えば「予算分配会議に参加する」とか「学祭を企画してやる」とか「自治会費を集めて必要なところに還元してやる」とか「学生の意見をまとめてやって然るべきところに提出してやる」とか、そういう作業が必要になってくるわけです。

 なので、組織を構成して、学生の自治活動参与を後押ししてやろう、その組織こそが湘南自治会だ。というわけなんです。

 湘南自治会準備会が提案する湘南自治会は、ちゃんと学生自治の意義を果たせるように設計されていて、それが例えば、
・制度「ユニバーサルサービスの原則」
・制度「直接民主制」
・制度「集団指導体制」
・制度「コンセンサス主義」
・制度「部会」
・理念「まったく新しいunion」
・理念「現に役に立つunion」
・理念「永遠の創造」
etc. といったものなんです。


創っていくのはまったく新しい自治会/UNION

 湘南自治会準備会はこれまでの日本の学生自治会や海外のStudents' Unionをよく学び、いまのSFCに向き合い、これから創るべき「SFCらしい」大学自治会のあり方を模索してきました。その結果提案するものは、これまでの学生自治会とはまったく似て非なるものとなりました。
 日本において自治会という言葉には良くも悪くも「呪い」がかかっていて、みなさんの頭にも学生自治会のイメージというものがあると思いますが、それのことは一旦忘れて湘南自治会のことを知ってほしいです。

 湘南自治会準備会はこれまでの学生自治会が完全に上手くいっているとは考えていません。もっとやれることがあるはずだ。他のあり方があるはずだ、そう思っています。それに、SFCに創るのだから、SFCローカルな事情をよく反映した自治会を創るべきだとも考えています。


自治会を創ろう!投票で意思を問おう!

 「SFCローカルな」、「SFCらしい」。
 こういったことはSFC生のリアルに徹底的に寄り添わずして見つかるものではありません。湘南自治会準備会は有志の学生団体としてできる限り学生たちの声を聞いてきたつもりですが、一方で、有志の団体では「徹底的に寄り添うこと」自体に限界があることも痛感しています。そこで、今回の湘南自治会設立承認投票の実施に踏み切りました。ここで一旦、投票という形でSFC生に「新しく自治会を創るかどうか」を問うことにしました。

 でもこれは恐ろしいことでもありました。もし自治会設立が否決されたら?もし投票が無効になったら?


「自治なんて要らない」

湘南自治会準備会は、自治の必要性を主張してきました。それは、多くの人々が大学の自治を必要ないものだと思っているという現状の裏返しでもありました。

 現状の学生自治は、学生たちに意識されることは少なく(投票率が低い)、大学側からも軽んじられることも多い(慶應全体の学生自治会や京大全体の学生自治会は空集合だということになっている)ものです。
 実際、わたしのツイート群はTLで浮きまくりですよ。「まともな大学生」なら、学生自治について何か呟いたりしない。というか、そもそも自分たちが大学の主権者だとわかってるんです……かね…?

社会の中でも学生自治は少なくとも「必要なもの」だとはあまり思われていなさそうですね。結果、自治会が可能性として持っているはずの機能を果たしきれているとは言えず(少なくとも海外のstudents' unionに比べて日本の学生自治会の機能はあまりに少ない)、自治活動も担保されているとは言い難くなってる。学生の有する大学自治への参政権は(理事や教職員に比べて)縮小してしまっています。わかりやすく言えば、わたしたち学生はシラバスに介入することもできないし、授業も持てない、サークルも会長なしにはできないetc.

 学生自治が不要だと思われている、あるいは忘れ去られているのは、学生のせいではありません。思うに、これは尊厳の問題なんです。


誰のための社会か

 わたしたちの大学生活がわたしたちが望むようなものではなかったとき、その理不尽は決して個人の問題に帰着してしまうようなものではありません。例えば、コロナに罹って大学に通うこともできなかった日々に、成績のことを憂う夜を迎えてしまったとしたら。例えば、楽しみにしていた大学生活がすべてオンライン化し、友達の一人も見つけられなかった一年を過ごすことになったら。例えば、奨学金を返そうとバイトを続ける日々ではレポートのひとつも満足に書き上げることができないのだったら。わたしたちはどんなに努力をしても、どうにもならない事態に見舞われることがありますし、そういうときに助けてくれる装置として、わたしたちには社会が、政治があるわけです。

 そして、その社会のその政治の主権がわたしたちにあるということは、わたしたちがみなひとしく、SFCの未来を決める権利を持っているということであり、わたしたちがその権利と権利を守り続ける努力を以ってして、大学という社会を変えていくことではじめて、ひとりひとりの理不尽が本当の意味で解けていくはずなんです。

 本当は。

でも、この権利は、この声は、実際には届きはしない、そう思っているんじゃないでしょうか。だって、これまでの人生の中で、一度でも、この声が社会を変えたことがあったでしょうか。

 不安と無力感と無関心の濃霧の中で、どうして未来のことなど考えられましょう。


 だから、もし自治会を創るなら、そんな濃霧を晴らすような、すべてのひとを心の底からEmpowermentするような、そういう自治会を創りたい。創らなきゃ。わたしはそう思いました。SFCの未来を決めていくのは、わたしたち全員なんです。わたしたち全員が社会というものを疑いながらも信頼して、この社会を創っていけることを自覚して、実践していくこと、それが自治をするということです。


「自分の大学の未来くらい自分で決めたいじゃん!」あるいは「大学も、社会も、自分で創っていけるのだ」ということがその肌に体感できるような、ひとりひとりをempowermentするような、そんな自治会を創りたい。自由奔放な我々を縛るのではなく、もっと自由にするような、まったく新しい「UNION」。

——それが、湘南自治会です。



▼湘南自治会設立承認投票ポータルサイトはこちら


▼投票はこちらから


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?