見出し画像

漁師のおじさんがくれた、15年越しの月の光

ドビュッシーの月の光を知っていますか?
私にとって月の光は、子供の頃に習い事のピアノで最後に挑戦した曲です。それは、唯一自分から「弾きたい」と希望した曲でした。しかし当時は、結果として1/3も弾けずに挫折します。
今回は、大人になってもう一度挑戦した月の光への気持ちを書きます。


もう一度、月の光を弾きたい

そう思い立ったのは、挫折から10年後のことです。22歳の私は、夏のボーナスで電子ピアノを買いました。指はハリガネのように硬く、音符はゆびで数えてよむ始末です。到底曲なんて弾ける状態ではありませんでした。 

片手づつさらって弾いてみて、両手で合わせて弾いてみて。毎週少し進んでは、弾けたとろが弾けなくなってを繰り返します。それでも、昨日弾けなかったところが弾けるようになる経験は、とてもワクワクしました。


ゆっくりでいい。最後まで弾ききりたい。

当時弾いていた1/3の場所まで弾けたのは、ピアノを買って1年後のことでした。
そこから先は未知の領域です。弾けたり弾けなかったり、進んだり戻ったり、上手くなっているのかは全然わかりません。半分までいった時、気持ちはかなり落ちていました。

やっぱり甘くないよな。

昔より弾くまでに時間がかかる自分にがっかりし、また私は諦めます。6畳1K一人暮らしの部屋で、電子ピアノができない私を責めました。
「今週も弾かないのか。」
「いつだって中途半端だな。」
「お金と時間の無駄遣いだったな。」

自信をなくしたその時、youtubeで漁師のおじさんがピアノを弾く動画を目にしました。

全くの未経験から8年、ピアノ曲でも最難関曲と言われる”ラ・カンパネラ”を弾く漁師のおじさん。譜面も読めないそうです。テレビで見たラ・カンパネラに感動し、演奏動画を見ながら毎日練習したそうです。

・・・めちゃくちゃかっこいい

今まで見た素晴らしい演奏家たちよりも、漁師のおじさんのピアノはかっこよかった。演奏にのる”想い”が私の心を揺さぶりました。
技術で言えば、もっと上手い人は大勢います。
表現力で言えば、もっと豊かな人も大勢います。
それでもかっこよかった。きっと、おじさんのこれまで生きてきた人柄が音に乗っているんだと思います。


一生かかってもいい。月の光を”私の音”で弾きたい

漁師のおじさんが弾くラ・カンパネラは、自信をなくした私を奮い立たせました。好きなものにのめりこむ姿は、輝いて見えました。
ある雨の日、その時は突然にやってきました。

・・・弾けた

ピアノを買って5年。1度目の挫折から15年。月の光の譜面をついに弾ききりました。まだ、つっかえつっかえです。何度も自信をなくしても大好きな月の光。ここからは、漁師のおじさんんおように、自分の音で弾けるように努力します。
なんてことはありません。これから先、50年はピアノを弾けます。
一生かかってもいい。かっこよかった漁師ピアニストのように、ただ純粋に、これからもピアノを弾いていきたいです。


最初の月の光を載せます。ここから上手くなっていきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?