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イギリスの絶滅危機にある伝統工芸のリストを見てみる(Heritage Crafts)

日本人だからか、日本の伝統工芸には何があるか聞かれたら、いくつかはすぐに思いつく。
しかし海外の伝統工芸はと聞かれたら、思いつかない。海外だからだろうか。
そんなこともない気がする。
メジャーな国ならばファッションブランドだったりは思いつくが、伝統工芸(Traditional Crafts)というと、とたんに思いつかない。

ロシアのマトリョーシカは思いついた。かの国でそれが伝統工芸なのかは知らないが。

せっかくなので、イギリスの伝統工芸を調べてみた。

「traditional craft in UK」と検索すると、「Heritage Crafts」だったり「The Red List of Endangered Crafts」なる文字が出てくる。
このRed Listという単語を見て「Heritage at Risk」のことを思い出した。現在存続の危機にある歴史的価値のある建築物や遺産を保護する活動だ。
以下記事によると、最近(2023年7月)では、電話ボックスが登録されたらしい。なんと味のある電話ボックスだろうか。。ずっと残っていて欲しいとなぜか感じてしまう。


さて「Heritage Crafts」にもそういった伝統工芸をリストアップしている仕組みがあるようだ。ではどんなものがあるのだろうか。

以下記事の赤バナーにあるPDFが写真付きパンフレット形式で見やすい。

以下にはずらっとイギリスの危機に瀕する伝統工芸の一覧。

パンフレットの冒頭でいきなり、イギリスでどうやら絶滅した伝統工芸の紹介があった。
「Mouth-blown sheet glass making」、口吹き板ガラス製作と訳せばいいだろうか。バーミンガムの会社が唯一事業として実施していたが、2022年後半に敷地移転の縮小に伴い、事業を停止したようだ。世界的にはもはやポーランドとドイツくらいにしかないらしい。

「Heritage Crafts」は以下のような絶滅レベルで分けられている。

・Extinct in the UK(イギリスで絶滅)
・Critically endangered(絶滅の危機に瀕している)
・Endangered(絶滅の危機にある)
・Currently viable crafts(存続可能な工芸品)

上記のガラス工芸は2023年に残念ながら「Extinct in the UK」として登録されたようだ。

「Critically endangered」カテゴリーには、Straw hat making(麦わら帽子作り)や、Watch making(時計作り)といったイギリスとはあまり馴染みのなさそうな伝統工芸が並んでいる。しかし、例えばWatch makingはその起源の紹介を見ると、16世紀まで遡り、初めてクロノメーターを1759年に発明および製造されたようだ。これを見ると、スイスの時計作りとも十分にやり合える歴史があるんではないかと感じてしまうイギリスの歴史的魔力がある。

このパンフレットの素晴らしい所は、それぞれの工芸に「Issues facing the craft」と題し、現在直面する課題を記載してあることだ。そこを簡単な文章で書かれているので分かりやすい。
例えば、「Endangered」カテゴリーにPigment making(顔料作り)があるが、そこの「Issues facing the craft」には、Brexitが良くも悪くも影響を及ぼしており、地元のサスティナブルな色を求める人には良かったが、原材料の調達が難しくなったと書いてあったりする。


パンフレットには、Side saddle making(横鞍作り)だったり、Ladder making(梯子作り)など色々とこんなのがあるんだ的なTraditional Craftsが載っているので面白い。
ただ一つ、日本人として気になったのは、「Currently viable crafts」カテゴリーに「Origami」という、日本人にはとても耳慣れた伝統文化がなぜかイギリスの存続可能な工芸品として名を連ねていることだ。
イギリスのOrigami職人に会ってみたい。


小泉成文


大好きな横浜名物シウマイ弁当を食べる時、人生であと何回食べられるんだろう。。と考えます