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永青文庫(東京都文京区・早稲田駅 古代中国・オリエントの美術)

突き抜けるような快晴。雲ひとつなく、おまけに急激に冷え込んで朝から肌寒い。絶好の散歩日和である。
江戸川橋周辺はほどよい朝陽に照らされ、近隣をジョギングする人とすれ違う中で訪れたのは細川庭園。早稲田大学から近い場所にある肥後細川藩邸のあった場所である。訪れるのは2回目になる。

今回は古代中国・オリエントの美術と題して、国宝である「金銀錯狩猟文鏡」通称「細川ミラー」の期間限定公開を目玉とした細川コレクションを紹介している。

円形の門をくぐるとそこは永青文庫。文庫と称しつつ書籍だけでなく多くの美術品が眠っている美術館で、もともとは蔵だったとのこと。館内も蔵だった頃の名残がそこかしこに見つけられる。

前回と同様に撮影することはできない。館内だけでも雰囲気を感じられれば良いのだけれど。前回はエレベータで一気に上まで向かったものの、今回はあえて赤絨毯の敷かれた階段を上りながら4階へ向かう。

第一展示室である4階はすでに見学者がちらほら。多くの重要美術品・重要文化財が並んでおり、細川コレクションたらしめた細川護立(細川家16代当主)が海外まで行って集めてきたその情熱の跡が感じられる。

こちらの展示室では主に中国の殷から唐の時代にかけての美術品が重傷、精巧に作られた銅製馬車や金銀象嵌鳥獣文管金具、動物文鞘付銅剣など、主に青銅・銅で作られたものに目を奪われる。どれも美しく時間を忘れて見入ってしまうほど。

中でも金銀玻璃象嵌大壺は8年ぶりの公開だそうで、今までに見た壺のなかでも珍しい装飾が施されている。あとルールが今でもよくわかっていないという灰陶三人将棋盤(特定の駒を使って3人で将棋する盤。盤上に山とか海がある)が興味深い。

国宝である細川ミラーもしれっと展示されているが意外にもそこに集まっている人は少なく、しばらく独占しながら観察できる。梅原末治をはじめとした東洋学の学者の助言を仰ぎながら収集したという細川護立。学者と支援者という関係が感じられて面白い。

ちなみに第一展示室、作品として紹介されていないのだけれどガラス展示の下にも注目したい。数多くの長持がしれっと置かれているのに気づく。どれも家紋がバラバラである。学芸員の方に尋ねてみると、歴代の細川家に嫁入りした他家の長持(嫁入り道具)なのだそう。よく観察してみると内容物が記されているものもある。つい展示品の方に目が行きがちだけれどこういう展示品も大事にしたいところ。

階段を降りて3階の第二展示室ではエジプト、地中海沿岸、イランなどアラビア地方を中心とした工芸品が展示されている。中でもガラスが美しい宙吹き瓶が美しいのと、イタリアで見つけたというヘルマアフロディーテ像が細かい工芸技術を生かしていて見とれてしまう。2階へ降りると踊り場にコルディエ文庫コレクションの一部が展示されている。東洋学者アンリ・コルディエの蔵書を細川家が購入し、そのいくつかは岩崎家へ贈られたというエピソードに今回も肯首するばかりである。よく見ると蔵書の中に日本語の背表紙が1冊だけある。「不如帰」と読める。もしかして徳冨蘆花の例の作品だろうか。さすがエースで4番の作品である。

2階の第三展示室と書庫は今回は解放されておらず廊下に展示されているいくつかの資料を眺めて終了。トイレは安定のウォシュレット式。


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