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名刺と紙製品の博物館(東京都墨田区・両国駅)

墨田区はもともと職人の町だということもあって多くの企業に関連した小さな博物館を町おこしの一環として行なっている。名刺を中心に紙製品を作っている株式会社山櫻もその一つで、オフィスの3階にサクラテラスという専門の名刺と紙製品の博物館を設けている。

企業博物館の類は業務中のフロアの一部を開放していたりするパターンもあって敷居が高いイメージがあるけれど、こちらの3階は博物館展示室として独立しているため割と入りやすいかもしれない。入室の際には2階の事務所に声をかける必要があるけれど見学は割と自分のペースで見られる。

名刺の起源は中国にあるとされている。紀元前は楚漢戦争の時代。のちに漢の皇帝となる劉邦が下積み時代に妻を迎え入れるにあたって献金する証文の類として使われたのが最初らしい。既にこの時点で名刺としての役割を全うしているのが面白い。ただ名前を示すだけでない意図で使われているのが興味深いところ。

山櫻の変遷も併せて紹介

国内では江戸時代あたりになって使用されるようになっている。その頃は和紙に名前だけを書いた不在票として訪問先に置いていたというメモの役割が強い。現在のように名刺交換のようにやりとりされるようになったのは幕末になってから。おなじく中世ヨーロッパで発展した名刺文化が幕末の日本で結実している。
最初に国内で名刺を渡した人物はわかっていて、新見豊前守正興という幕臣が日米修好通商条約の締結の際に渡した桑の皮から作った大きな名刺で、日本語と英語で併記されている。

古い名刺の紹介

その後は社交界などでも必須アイテムとなった名刺だけれど、実は男性と女性の名刺には大きさの違いがあったらしい。男性は経済界、女性は花柳界で使うことが多かったのが理由だそう。女性が社会進出するようになってもしばらくは違う大きさで使われていたものの、男女雇用機会均等法によって名詞の大きさが統一されたのだという。

男女で名刺の大きさが違っていたなんて知らなかった

展示室には名刺を作るための小型活版印刷機や裁断機、名刺に凹凸をつくるためのプレス機などの機械も紹介されている他、墨田区ならではの葛飾北斎コラボ商品が販売されていたりする。フロアは決して広くはないものの、専門的に取り扱う関係者から一般的な見学者まで幅広く門戸を開いており、なかなか面白いミュージアムである。トイレは個室ウォシュレット式。

シンプルだけど面白い


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