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目黒区美術館(東京都目黒区・目黒駅)

目黒川沿いにある目黒区美術館。1987年の開館から35年という節目を迎え、それを記念して藤田嗣治を中心とした近現代美術家の作品を一堂に集めた企画展を開催。

目黒区美術館にとって藤田嗣治の作品は特に思い入れのあるコレクションの一つで、開館に先立つ頃より日本の近現代美術家の作品を中心にしたコレクションを目指して作品収集を行なってきた館の、最初に収蔵した作品が藤田嗣治の『動物群』という縁がある。当初は日本画壇から半ば追放されるような形でパリに拠点を構えてアーティスト活動をしていた藤田嗣治。レオニール・フジタと呼ばれパリに滞在し、むしろ国外での評価が高かったのは日本画壇と折り合いがつかなかった彼の反骨心が身を結んだ結果と言えるかもしれない。

階段を上がった2階にある展示室1では藤田嗣治の作品を中心に、目黒区美術館がこれまでに購入した近現代美術家の作品が多く展示されている。藤田嗣治の『動物群』でお出迎えした後は、安井曽太郎、村井正誠、高島野十郎らの作品を展示。中でも岡鹿之助『信号台』は他館への貸し出しも頻繁な作品だそう。新たに発見された古茂田守介『踊り子達』や、絵画だけでなく安原喜明の陶器、ロビーには香取正彦の鋳造花器などもある。

今回は展示室3のみ一部が撮影できる

展示室2で秀逸なのは川村清雄の油彩だろうか。絹や板を下地にして銀箔を効果的に使用しているのが印象に残る。こちらにも藤田嗣治の痕跡が残っており、澤鑒治に宛てた葉書が大量に残されている。単なる葉書でありながらイラストを描きこんでいるのが面白い。手紙といえば展示室1でもフランク・シャーマン宛に書いた書簡でも細かいイラストが描かれており、さすが画家というか、逆に画家のこういった手紙というのは興味深いところ。

個人的に好きな武内鶴之助

展示室3にあるのは新たなレガシーということで、これからの目黒区美術館を担うための作品を中心に展示している。こちらでは幻想的な篠田敦夫とまるで写真のような寺崎百合子の鉛筆画が印象的。また以前にここに訪れて発見した武内鶴之助の風景画は安定した鮮やかさを持っている。最後は近年になって購入した藤田嗣治の作品で締められる。安定のクオリティである。ちなみに開館35周年を記念してか、過去の展示会で販売された画集がめちゃくちゃ安価で販売されていて必見。トイレは洋式と和式なのも安定。たまに開催されている区民ギャラリーでも面白い展示がされていることもあるので(今回はサハラに眠る先史岩壁画の特集)一緒に訪れてみるのも良かったりする。

今回は市民ギャラリーもあなどれなかった

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