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伝統芸能情報館(東京都千代田区・永田町駅)

国立である。都がやってるわけでも区がやってるわけでもない。国がやってる施設である国立劇場。主に歌舞伎を中心に公演をおこなっている。永田町のお膝元にあるというのがなかなか違和感があって興味深い。政治家には歌舞伎に興味を持っている人が多いということなのだろうか。能楽堂は千駄ヶ谷にあることを考えると、皇室関係のアレだろうか。それはともかく、この国立劇場の敷地内に伝統芸能情報館の建物がある。独立している建物なので公演の有無に関わらず入場できる。

施設内には図書室や視聴室もあるが、1階のフロア全体が展示室に該当する。今回は初心者にもわかるようにということで、「いざ、歌舞伎」入門編の企画展を開催している。歌舞伎らしく幕での章立てとなっており、なんと幕間も設けられているという凝った構成。幕間では歌舞伎舞台の映像が流されており、生で見る前にここで歌舞伎の舞台を味わってみるというのも良いかもしれない。

序幕は化粧について。歌舞伎の舞台に欠かせない化粧。なぜこの風習が行われるようになったかというと、電気照明のない江戸時代の芝居小屋が暗かったために役者の顔や表情を見やすくする目的で化粧がされたのだという。隈取にも意味があり、紅色は勇壮さや力強さを表し、藍色は邪悪さや冷酷さ、茶色は人外のものを示すアイコンになっている。

二幕目は立ち回りと見得について。立ち回りとはいわゆる格闘場面のようなもの。殺陣による立ち回りは物語の中でも格別なシーンといえる。立ち回りと同じように物語において重要な位置を占めるのが見得。これは例えば戦隊ヒーロー物の決めポーズだったり、マンガの集中線の役割といったところだろうか。見得においては「にらみ」も重要。両目のうち片方の目を中心に寄せるという、鍛錬が必要な技巧である。

三幕目は女方について。今でこそ歌舞伎役者は全員が男性で、そのなかから女性の役割を持つ「女方」が登場しているが、もともと歌舞伎には女性の役者がいた。出雲阿国なんかは有名かもしれない。従来は歌舞伎でも男女が演じていたが、風紀取締によって男性だけに限られたという経緯を持っている。女方では五代目・岩井半四郎が特に有名だったという。

四幕目は時代物と世話物についての解説。時代物とは武士をメインにした話で、当時の武士階級の苦心だったり絵物語の一幕をうまく歌舞伎に昇華している話が多い。それに対して世話物というのは庶民をメインにした話。長屋が出てくるような話といえばイメージしやすいだろうか。それぞれ台詞回しが違うというのも特徴。

大詰は世界について。歌舞伎でいう「世界」とは二次創作のことで、平家物語、義経記、太平記、太閤記、道成寺など史実や物語を元にして新たに話を構築することで、『世界綱目』という一覧にまとめてある。新たに加えられる設定は趣向と呼ばれている。毎年九月十二日が「世界定め」と呼ばれ、その一年間に行う演目を発表する日となっている。またさらに書替狂言と呼ばれるものは既存の演目に出る人物を利用しつつ全く異なる内容の作品を創作することを指している。

館内は撮影できないがのんびりとしたものである。歌舞伎というと日本人もそうだが外国人からの人気も高いようで、配布されているパンフレットは英語表記のものが目立つ。トイレは和式と洋式。


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