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川崎浮世絵ギャラリー(神奈川県川崎市・川崎駅)

川崎駅北口に隣接しているタワー・リバークの中にある浮世絵ギャラリー。政治家の斎藤文夫による四千点にも及ぶ大量の浮世絵コレクションを展示するギャラリーになっている。建物が駅から直結しているので雨に濡れずに訪れることができて利便性が良い。

もともと丹波コレクションの丹波恒夫に勧められて始めたという浮世絵収集は、当初は川崎に関連するものに限られていたものの、次第に神奈川県に関連するもの、さらに初期の浮世絵へと収集の範囲を広げたのだという。全国の美術館で開催される浮世絵関連の展示会にも貸与することがあるそうで、浮世絵界隈における名の知られたコレクターの一人でもある。

おなじみ北斎のアレもある

企画展として行われていたのは歌川国芳による「木曽街道六十九次之内」を全て集めた展示。宿場町をテーマにした作品としては「東海道五十三次」が有名だけれど、木曽街道もまた同じように江戸から京都までの道程である中山道の全ての宿場町を絵にしたものになっている。
宿場町の絵図というとその土地の風景を描いたものというのが一般的なイメージだけれど、この作品は少し違っている。一つ一つの宿場町の「名前」に呼応するような人物をテーマにしているのが独特で、例えば「板鼻」は「痛い鼻」から「牛若丸が天狗の鼻を打つ」絵だし、「追分」は「おいわけ」から「四谷怪談のお岩」、「沓掛」は「靴を掛ける」から「黄石公と張良(靴のやりとりをするエピソードがある)」といった駄洒落で成り立っている。(宿場町とは関係ない)人物画が中心にあり、隅の方に宿場町の絵がそっと添えられているというのが面白い。

それぞれのタイトル枠や、宿場町のコマ絵はそれら人物に関連したデザインになっていて、遊び心も満載の上に細かいところにまでデザインが行き渡っているという仕事の丁寧さに驚かされる。とにかく一つ一つの絵の中に情報量が多く、それも一種の判じ絵(クイズ)みたいになっているので、実際「なんでこの宿場町にこの人物が?」と当時の人たちは面白がりながら見ていたことが想像できる。

扉の向こう側がギャラリー キャプションの質がすごい

ギャラリーという名の通り一般的なギャラリーとそんなに変わらず、1フロアの中で決して広いとは言えないスペースながら、全ての作品を網羅している上、ここの特色として全ての作品に丁寧なキャプションが付いているのには驚かされる。キャプションを読みながら作品を鑑賞できるため、スペースの割にかなり長時間かけて作品との距離が近くじっくりと味わうことができる。トイレはウォシュレット式。

ギャラリーへの通路にも浮世絵がずらり

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