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豊島区立郷土資料館(東京都豊島区・池袋駅)

豊島区の郷土歴史博物館の機能を有している池袋駅メトロポリタン口からほどない場所にある博物館。東京芸術劇場、池袋警察署、池袋消防署と並ぶ劇場通り沿いにあるとしま産業振興プラザの中にある。

一般的な郷土資料館の資料展示である土器や石棒はもちろんのこと、江戸大火後の防火対策の一環として広げられた大名屋敷に沿って植木屋の職人たちが染井地域に住むようになり、そこから桜のソメイヨシノが生まれたことなどが紹介されている。いわば今や日本を代表する桜の品種はこの地域の職人たちの努力によって生み出されたわけである。

ソメイヨシノは昔ヨシノザクラと呼ばれていた

この郷土博物館で個人的に注目したいのは、豊島区が文化芸術の発展を担ってきたエリアの一つであること。例えば文豪における北区の田端文士村、大田区の馬込文士村、新宿区の落合文士村と同様にして、豊島区においては長崎アトリエ村という画家たちによるコミュニティが戦前に形成されていた。
すずめが丘、さくらが丘、つつじが丘といったエリアに次々とアトリエ付貸家が建設され多くの芸術家がここに集った。寺田政明、熊谷守一、靉光、福沢一郎、長沢節、北川民次をはじめとした多数の画家・作家が集い、小熊秀雄によってこれらは池袋モンパルナスとも呼ばれるようになった。豊島区は近年になってこのアトリエ村を振興の一つと考えて地域活性化へ力を入れている様子。

アトリエ村イメージ図

この一帯といえばのちに手塚治虫や藤子不二雄らが居を構えることになるトキワ荘でお馴染み。もしかしたら芸術家を引き寄せる土壌や環境のようなものがあるのかもしれない。
また池袋はヤミ市が盛んだった地域でもある。戦後の荒廃した中で大きな街を中心に開かれていたヤミ市は1200軒以上の店を連ねた巨大なマーケット群として発展したという。まるで昭和の駅前広場のような闊達なミニチュア模型も展示されている。
企画展としては昭和の暮らしと遊びについてを紹介している。昭和の部屋、昭和の家電、昭和のおもちゃ。昭和の雑誌として「主婦之友」「暮しの手帖」「それいゆ」もずらっと並べられている。トイレはウォシュレット式。

隣接する閲覧室では昭和の遊びを展示

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