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翡翠原石館(東京都品川区・北品川駅)

北品川駅のそばにかつてあった原美術館。2021年に惜しくも閉館し、建築家の渡辺仁によって設計された洒脱な建物も現在では跡形もなく更地になってしまっている。閉館に先立って最後の展覧会にはギリギリで間に合ったのだけれど、住宅街の中にある原美術館へ向かう途中で迷い込んで見つけたこちらの翡翠原石館、ずっと訪れる機会を持てなかったのがようやく訪問できるタイミングを見つけて数年越しの訪問をすることに。

原美術館のすぐそばにありながら全く関連のない個人で運営している翡翠原石館は、若い頃に翡翠の美しさに魅入られた館長が、年に数回ほど探しに行って収集したコレクションが展示されている。コレクションの中にはとんでもない巨大な原石も出てきてしまい、東京まで運んできたはいいものの、これをどうするかと考えた結果、半ば入れ物として作ったミュージアムという、面白い経緯を持っている。

翡翠のコレクションが圧倒的

古くは万葉集にも詠まれたことのある翡翠との歴史はとても古く、国鳥や国花と同じように翡翠は国石として指定されている。世界の産地としてミャンマーと中央アメリカに次ぐ産地である新潟県の糸魚川・青海地域は、実は世界で最も古い翡翠と言われている。世界には2つの翡翠文化圏があり、中央アメリカに広がったマヤ・アステカ・オルメカの文化よりもこの糸魚川・青海地域の文化の方がはるかに古く、約4500年ほど前から発展していたのだという。

翡翠の種類がすぎる

館内でまず目に飛び込んでくるのは巨大なモザイク壁画。こちらは色違いの翡翠で作られた奴奈川姫という、翡翠を象徴する日本神話の神で、いわゆる日本神話の中ではかの大国主の妻でもあり、諏訪神社の祭神である建御名方神を産んでいるという、実はかなりのキーパーソン。新潟県の中能生地域では翡翠の象徴として奴奈川姫の伝説が残っているのだという。

奴奈川姫の巨大モザイク画

とにかく大小あらゆる大きさや種類の翡翠が展示されている。原石は実際に触れることもできる。またかつては館長が好きな蛙の育成も考えていたそうで(数代に渡る蛙の生育が難しく断念)館内には至るところに小さな蛙の置物があるのも特徴。1階の展示室には翡翠をはじめとした各種の宝石、翡翠で作った工芸品などが展示されている。さらに1階の奥にあるのは圧巻の翡翠風呂。全てが翡翠でできたという風呂は、実際に正月などに入浴することもあるのだという。ただ石は非常に温度を吸収するため、まず70度くらいの熱湯で張ってから冷まして入る、という手間があるという。

翡翠風呂 入ってみたいっすねえ

2階にも翡翠の原石が至る所にある他、なぜか縄文土器の姿もある。翡翠の原石で作った茶碗、それに仏像や五重塔などの細かい装飾まで施された翡翠が目を引く。ほかにもヘルムート・ボルフ、矩幸成といった彫刻家による作品も展示されている。見学後は美味しい紅茶を出してくれるので、2階でくつろぎながら並べられた翡翠を眺めるのもまた良い。トイレは男女共用の個室ウォシュレット式。建物の向かいには彫刻の庭とよばれる展示場もある。

2階もたくさん翡翠の工芸品があります


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