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千葉県立美術館(千葉県千葉市・千葉みなと駅)

千葉市の美術館というと旧川崎銀行の建物を活かした鞘堂方式の建築で知られている千葉市美術館が知られており、こちらの方が千葉市の中心部からアクセスはしやすい。それに比べると千葉県の名を冠した千葉県立美術館は港方面である千葉ポートパークの中にあるためアクセスは徒歩よりもモノレールなどが便利だろうか。駅から離れているぶん土地が広大で、展示室が第1から第8まであるというかなりの広さを誇っている。

入口の受付を過ぎると、目の前には多数の彫刻品が並べられている通路が広がっており、その景観は圧巻。高い天井を使っている第7展示室の一部でもあり開放感が感じられる。ブールデルに柳原義達、佐藤忠良といった彫刻家の作品が常設展示されている。また屋外にも多くの彫刻があり、それら30点以上の彫刻の鑑賞ガイドも詳細に説明されている。今回おとずれた際には企画展として千葉県誕生150周年記念事業の一環として千葉県立美術館コレクションから千葉県各地の風景などを切り取った作品を中心にした「描かれた房総」と題した作品展示と、現代アーティストであるカワクボリョウタが房総の海をテーマにした新作を発表している。

通路が美しい

第1展示室とそれにつらなる第2展示室では収蔵品の作品を紹介。千葉県を県立美術館を起点にして時計回りにするように作品を紹介しており、千葉から船橋・浦安で北進、松戸や野田で東進して 成田や銚子、南進して勝浦や鴨川を経て館山、北進して君津や市原を巡って戻ってくる、という形態の中に洋画家のジョルジュ・ビゴーや、国内からは浅井忠に川瀬巴水などの作品が紹介されている。鉄道の発達によって特に明治時代からは多くの作家が千葉県の各地で作品を描いていることがわかる。

房総の地をめぐる冒険

第8展示室ではカワクボリョウタが千葉県のマスコットであるチーバくんと掛け合いしながら、千葉県を多方面からリサーチして作品を発表して行く、という形式。巨大な落花生や謎の「なのはな体操」を紹介するチープな映像だったりとインパクトが大きい作品が並ぶ中、印象的なのは千葉駅の10あるホームを題材にした作品で、千葉駅から東京駅へ向かう電車のホームが毎回ちがうことに着目し、ホーム番号を五線譜、発車時間を縦軸にしたオルゴールにしたという作品。

第3展示室 奥行きのある展示室に千葉がいっぱい

さらにその集大成と言えるのが隣にある第3展示室で千葉県の各地を題材にした作品である『LOST#19 しおさいのくに』で、光と影をつかったインスタレーションで知られているカワクボ氏の代表作である「LOST」といえば、近年に芸術祭で見学者によって破壊されてしまった事件が記憶に新しい。その完全新作ということで真っ暗の部屋のなかでSLの模型が光を発しながら千葉県を走り抜け、風景が影となって壁にあらわれる様を映し出している。

壁に映る影がなんとも荘厳

時期的に今回は第4展示室で千葉デザイン展、第5展示室で千葉県に点在する各高校による写真作品展、第3展示室で千葉写真展が開催されており、閉鎖していた第7展示室を除いた全ての展示室が開室しており、見どころがたっぷりの展示となっている。企画展によって開室する展示室が異なるので何度も視点が変わるのが面白いところ。トイレはウォシュレット式。

もう一つの入り口 アプローチが長くて好き


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