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庭園美術館(東京都港区・目黒駅 奇想のモード)

企画展として奇想のモード、と題した展覧会を行なっている。奇想の流法(モード)。風の流法、熱の流法、光の流法と並ぶ流法である。何を言っているかわからないと思うが、とにかくそういうことである。階段を登っていたと思ったらいつの間にか降りていた、そういうことである。

モードとシュルレアリスムの融合、という個人的には最高の組み合わせで役得である。ファッションの潮流のなかでデザインにシュルレアリスムの斬新なアイデアが取り入れられていった様を、そのファッションアイテムを展示することで追って行くという流れになっている。

各部屋に配されたシュールなドレス、帽子、髪飾りなどが本館である旧朝香宮邸のモダンな建物と素晴らしい相乗効果を発揮してとても見応えのある展覧会となっている。今回は全ての部屋にカーテンを下ろして遮光し、薄暗い光の中で浮き上がるという演出を行なっているのもまるでファッションショーを見るかのようである。バルコニーも今回は閉鎖。

サルヴァドール・ダリの作品(『抽き出しのあるミロのヴィーナス』は爽快)、ヤン・ファーブル(ファーブル昆虫記でお馴染みのアンリ・ファーブルの曾孫)の玉虫色の甲冑など、珍妙な作品がまず目に飛び込んでくる。近年のブランドとしてはジョン・ガリアーノ、ヴィヴィアン・ウエストウッド、ドルチェ&ガッバーナ、といったストーンオーシャンな面々が顔をそろえつつ、フランスで流行した髪型(女性の頭髪に船などを編み込ませるといった奇抜なファッションが大流行した)、中国の纏足靴(拘束した状態で小さな足になった女性が当時は美しいと言われた)、生き物の剥製をそのまま使った帽子飾りなど、度を越したファッションの遍歴が見られてとても興味深い。中でも(これは実用性はもはや無いけれど)小谷元彦による髪の毛だけを使って作られたドレスは衝撃的。キリコ、マン・レイ、ベルメールといった人物もしっかりとフォローしている。シュルレアリスムここに極まれりである。

日本の着物からは池田重子コレクションが登場。帯留めに施された虫や豆などの造形が精緻で見入ってしまう。
かわらず2階のランプにはテープで留めた跡がある。1階へ降りた階段の横にあるガラス窓も陥没した跡がある。よしよし。

館内は新館の方のみが撮影できる。新館の方ではファッションにスポットを当てた浮世絵や、ユアサエボシ、舘鼻則孝、串野真也といった近年のアーティストによるインスタレーションや作品が展示されている。ANOTHER FARMというユニットによるレンズと光を使ったインスタレーションもある。

ちなみに庭園は閉鎖中となっており閉められている。門がまた良い。
ここに限らず、密になる可能性の低い屋外の都内庭園が軒並み閉園となっているのが不思議。トイレはウォシュレット式。


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