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パナソニック汐留美術館(東京都港区・汐留駅 ひらめきのピカソ展)

国内では安定して人気のあるピカソ。みんな大好きピカソのイスラエル博物館所蔵の作品が一堂に介した展覧会となっている。ピカソの展覧会は一定した人気があって日時予約制を採用している。

開館時間から既に開場待ちの人が数人いるなどピカソの人気が窺える展覧会。1フロアということもあって美術館自体はそこまで広くないスペースではあるものの展示会ごとに間取りを大胆に変えているので、作品点数が多いこともあって順路に思考を凝らした今回の展覧会はかなりゆっくりと作品に向き合えるようになっている。

時代を追いながら作品を紹介する形をとっている。最初は青の時代とバラ色の時代。スペインを旅していた頃やパリに移った最初の頃の作風は陰鬱なものが多く、『夜のキャバレー』にも登場する親友のカサヘマスが自殺したことに影響を受けたものだと言われている。自身も鬱病に陥って青色が多く使われるようになった。その後、鬱病を克服し、恋人オリヴィエを得て明るい作風へ変わって行くバラ色の時代へと入る。ここではサルタン・バンクシリーズの作品が多く採り上げられている。

次のコーナーではキュビズムへ。セザンヌやジョルジュ・ブラックらの作風に触れる機会も増えて自身の作風も徹底的に対象を解体した作品が増えるようになる。『コップ、バスの瓶、新聞』などは正面と上からの瓶を同じ空間に配している割とわかりやすい視点。また作中に寓意的なメッセージを入れることもあることが示唆されている。コラージュ作品が多用されるようになるのもこの頃。

次は新古典主義、シュルレアリスム。今度はイタリアへの旅行でルネサンスやバロックに触れたことで懐古主義が爆発、新古典主義へと大きく傾くことに。この辺りでオルガという恋人と結婚して子供をもうけるようになる。またシュルレアリスムへも傾倒し、少しエロティックな作品も増える。しれっと愛人マリーも作って絵まで描いている。オルガらしき人物の絵も描いているがどこか寂しそうな表情なのは自身の後ろめたさみたいなのもあるのだろうか。
パトロンの画商ヴォラールと出逢い、いくつもの連作を発表する。裸婦やミノタウロスがよく登場するようになり、溢れ出る欲望を絵に打ち付けているよう。こういうところがモテる原因なのかも。裸婦とミノタウロスをモチーフにした作品は何枚もあるが、その中でも盲目のミノタウロスを導く少女の作品がやはり印象深い。

次は戦時期。シュルレアリスムの作風をさらに進化させ、スペインでフランコ政権がもたらした惨劇に怒りを持って描いた『フランコの夢と嘘』。ドン・キホーテのように描かれるフランコに痛烈な皮肉を与えている。後の大作『ゲルニカ』との共通点もこのあたりに見える。『泣く女』のモデルでもあるドラ・マールともこの頃に出逢っている。そして次の妻となるフランソワーズ・ジローとも二人の子供をもうけて多くの絵を描いている。
次のコーナーではジャクリーヌ・ロックが登場。彼女とは結婚もしている。ちなみに結婚はオルガとジャクリーヌの二回。つまりマリーやジローとは籍を入れずに子供を作ったことになる。ふむ。ちなみに前のコーナーの最後に突如として登場するシルヴェット・ダヴィットの肖像。何も説明がないこの女性も学芸員の方に尋ねてみるとピカソの恋人だったらしい。ジローと出逢ったのは1953年。シルヴェット・ダヴィットは1954年……ほんとこの人は。

ようやく落ち着いたピカソ、最後のコーナーはスペインの風土に焦点を当てた闘牛の作品だったり、画家とモデルを俯瞰的に描いた作品などが紹介され、最後は347シリーズといういきなり347枚の版画を作り上げた作品が並ぶ。晩年に至るまであふれるバイタリティ。その根源には多くの愛人を作ったありあまるエネルギーがあったことは想像に難くない。

常設展示のルオー・ギャラリーでは、ピカソのパトロンでもあったヴォラールと専属契約を結んでいた頃のルオー作品を紹介している。ちなみにヴォラールはセザンヌやゴーギャンなどにも援助していたそうである。トイレは安定のウォシュレット式。

会場は撮影できないので入り口の看板ね

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