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西山美術館(東京都町田市・鶴川駅)

町田市に訪れたらこの美術館はマストで訪れるべきという、町田の誇る衝撃的なインパクトのある美術館である。なんといってもユトリロロダンの収蔵品では国内で他の追随を許さない数を誇っている。なにより水晶などの鉱石を大量に集めて展示しているという一風かわった美術館でもある。

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敷地はかなり広い。入口から坂道を上って歩けばそこには庭園が広がっており、かなりの資産家であることが窺える。それもそのはず西山美術館の館長は企業を経営する人物というのもあって、敷地がすでに社長の邸宅の一部なのである。美術館前の広場はそれこそ一見さんお断りというか、初めて訪れた人は度肝を抜かれるに違いないかなりユニークな造りになっている。見学者を試している、ともいえるかもしれない。

ギネス登録認定

入口の1階では多くの鉱石が展示されているのと共に館内の映像を紹介している。かなりの広大な敷地にあるため庭園散策をする人たちも多いことが紹介されている。実際に訪れたのは平日だったので、休日になれば人が溢れているだろう。映像の中ではどうやら敷地の裏側にも散策できる場所がある様子。高台には滝があり何故か自由の女神まであるというインパクト。

自由の女神

館内は螺旋階段を上がった2階からが作品の展示室となっている。お馴染み荻原禄山の『女』がここにも。荻原禄山はロダンの影響を受けているのもあって自然な流れかもしれない。扉をくぐるとロダンの他の作品『青銅時代』『バルザックの胸像』『岩と裸の少女』などの他、隣接しているカフェーではマイセンの食器を使ってケーキなどを提供している。これを目的に訪れる人も多い様子。さらにもう一つの螺旋階段を上った3階も処女作である『鼻の潰れた男のマスク』(展覧会の前夜に作品が凍結してしまいヤケクソで出展したら評価され初入選を果たしたというエピソードがある)『地獄の門』の第二模型などの彫刻と鉱石の展示があり、ここまでは無料で見学することができる。

さざれ石

ユトリロの作品がある4階の展示室からは有料となっており、チケットと引き換えに受け取ったコインをゲートに入れて解錠するという形式になっている。ユトリロの作品収蔵展数で日本一を謳っているだけあり、多くのユトリロ作品がお目見え。照明を極限まで落とした展示室内の壁四方に多数の作品が並ぶ。世界に3個しかない壺絵『ベルオリーズの家』のうちの1つが展示されている他、『ムーラン・ド・ギャレット』『モンマルトルのサン・ヴァンサン通り』『サクレ・クール大聖堂』など彼の活動したフランスの情景を静謐に切り取っており、精神的に不安定だったユトリロの心情を見事に昇華した作風が魅力的である。母への思慕と、年下の友人がその母の夫となるという複雑な事情などがその背景にある。四十歳以降に認められるまでは厄介者として蔑まれていたユトリロは酒乱でもあり、よく題材にしている『ラパンアジル』という酒場ではよく追い出されていたという。躁鬱も激しく、躁状態で描いた『ルツェルン大聖堂』と躁状態で描いた『アンドレ・デル・サルト通り』の対比が興味深い。

入館コイン

1930年以降の作品にはルールがあり、風景画に映っている人物は「帽子を被せている」「後ろ姿」「中世のスカートを履かせている」「奇数」だという。たった一つの例外もあるという。探してみたところ『雪のベッシーヌ・ス・ガルダンプ教会』がどうやら六人いて、サインも「V」という母親のイニシャルが刻まれている。これは彼が常に母と共にいる、という想いからだそう。隣接する奥の展示室では企画展として現代芸術家の作品を展示している。

トロフィ

階段を上った5階も同じくユトリロの作品が展示してある。こちらではいわゆる「白の時代」と呼ばれた時代の作品を中心に展示している。貝殻や石ころ、漆喰の壁のかけらなどを乾燥させて砕き、粉にして白い絵の具に混ぜて描いた作品。壺絵にもなった『ベルオリーズの家』や陰鬱な空が印象的な『雪のムーラン・ド・ギャレット』、家の壁がグシャグシャな『ミミ・パンソンの家』などが目を引く。個人的には昔おとずれたことのある『テルトル広場』が懐かしい。隣の部屋では資料や過去に行われた展覧会の記録が紹介されている。母もかつてはモデルを経て画家になった経緯があり、フランスでは母子展も開催されたことがあるという。

工房

ユトリロとロダン、それにパワーストーンというインパクトが物凄い美術館。裏庭にも広大な敷地が広がっており、高台の滝へ向かう途中には孔雀、七面鳥、名古屋コーチン、烏骨鶏といった鳥が飼育されている。とにかく水晶パワーの恋は千年、愛は万年である。トイレは個室ウォシュレット式。

億万年の愛


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