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アクセサリーミュージアム(東京都目黒区・祐天寺駅)

祐天寺にあるアクセサリー専門のミュージアム。東急東横線の各駅停車の駅、それもバスターミナルなどがない北口、さらに入り組んだ住宅街の先にあるということでなかなか行くのに難儀する場所である。けれど実際に訪れてみるとこれがまた面白いミュージアムで、邸宅をミュージアムに改装した造りをしているのだけれどとにかく展示室の数が多く、さらに展示内容もユニークな「アクセサリー」専門なので興味深い。

宝石ではないというところに注目。もちろんそのデザイン性から高価なのは間違いないが、いわゆる貴金属の類とはまた違った価値のあるものである。3階建てでそれぞれのフロアに複数の展示室が設けられているため、じっくりと眺めていればかなりの時間を費やすことになる。
入口は2階(玄関前に喫煙スペースがあるのが珍しい)だけれど、実際の順路は3階からになる。

上が博物館 下がミュージアムショップとワークショップ教室

今回の企画展は巨匠たちのコスチュームジュエリーと題して、ココ・シャネル、クリスチャン・ディオール、ミリアム・ハスケルという3つのブランドに焦点を当ててそれぞれのコスチュームジュエリーの変遷を展示している。3階の企画展示室ではそのうちのシャネルとディオールをそれぞれの部屋に配して展示を行なっている。

シャネルたち

シャネルは民族・宗教に即したデザイン、ディオールはエレガントで豪奢なデザインに力を入れている様が、実際にアクセサリーを合わせた服の展示をすることで一目でわかるようになっている。

ディオールたち

2階へと降りると4つの常設展示室がある。
ヴィクトリアン(19世紀末)は、イギリス王朝で愛され、宮廷や貴族社会を中心に発展したアクセサリーを多く展示している。特に服喪に使われたモーニングジュエリーは故人の毛髪や写真があしらわれるなど印象が強い。可愛いチャームも多い。

貴族のたしなみ

アール・ヌーボー(20世紀初頭)は、貴族から一般層の中でも富裕層にまで浸透して来たデザインで、「新しい芸術」運動のなかで、どちらかというとライフスタイルに合わせた中に装飾を施した印象がある。ここではドーム兄弟エミール・ガレの作品が登場する。

誰?ガレ?

アール・ヌーボーはさらに別の部屋があり、金・銀の他にブロンズや真鍮といった金属、ガラス類などの安価な素材が用いられるようになる。アルフォンス・ミュシャの絵画に当時のファッションデザインを見ることができる。

ヌボヌボ

アール・デコ(1920〜30年代)の部屋では、パリ万国装飾博覧会を機に流行したデザインとなっている。エジプトや東洋の文化との融合がこの辺りから行われ、また女性進出も増えて来たため外へ出てのファッションが増えたという。ココ・シャネルやルネ・ラリックのデザインしたアイテムが多く展示されている。

デコデコ

階段で1階へ降りると、オートクチュール(1940〜60年代)となる。「高級な仕立て」を意味しており、いわゆる完全受注生産が原則でデザインだけでなく縫製や刺繍、素材にも最高品質が望まれ、デザイナーの地位が高くなり富裕層からの注文が増えたという。ここではシャネル、ディオール、ハスケルをはじめ、スキャパレリトリファリなどの作品が登場する。

チュルチュル

次はプレタポルテ(1970〜80年代)で、すぐ着られる「既製服」を概念に、工業化の波、女性進出をキーワードとしてイヴ・サンローランや国内では元吉末寿ら多くのデザイナーが増えた時代になる。プラスチック素材も爆発的に増え、またヒッピー文化などの発展から広く人口に膾炙することになった。

ポルポル

部屋のもう半分はアバンギャルド(1980年代〜)から現代までの変遷がある。「前衛芸術」をキーワードにヴィヴィアン・ウェストウッド、クリスチャン・ラクロワ、ジバンシィ、ドルチェ&ガッバーナなどが台頭しパンクからバブル期のゴージャスなもの、やがて多様化して個の時代へと移り変わる変遷をわかりやすくアイテムで展示している。

アバンギャルドで行こうよ

最後の展示室は企画展のラスト、ハスケルの特集となっている。ハスケルはシャネル、ディオールとは違い、コスチュームジュエリーのみを制作した。ここではブランドサインが付いていない「アンサインド」、ブランドタグがつけられた「サインド」さらにスペシャルと呼ばれる「Aライン」それぞれの作品を展示している。中でも注目なのはブラックライトの下で光るようにウランガラスで作られたジュエリー(放射線の心配はない微量らしい)。見た目と光の加減も相まってかなりのインパクトがある。

ハスケルたち

ミュージアム内のトイレは個人宅を改装しているからか、個室になっている上に洗面台も広々としていて寛ぎの空間になっているのも好感度が高い。当然ながらウォシュレット式。


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