国立西洋美術館(東京都台東区・上野駅)
しばらく休館していた国立西洋美術館の改装工事が終了しリニューアルオープンされた。世界遺産登録された際に指摘されていた前庭を中心に、ル・コルビジェの意図した設計当初のデザインへと改修されている。植栽も減って前庭が広く見えるようになったことや、以前は少し奥まっていたロダンの『地獄の門』など屋外彫刻の位置も見易く配置されている。
今回は本館地下の企画展は開催されておらず、所蔵作品を中心とした常設展で占められている。もともと常設展示だけでも広大な所蔵作品なのと、リニューアルオープン後の混雑も予想されたので朝イチで訪問。
入口すぐにあるのは19世紀ホール。吹き抜けの天井を支える大きなの柱。三角形の窓から差し込む光。2階へと上がる際にはスロープを使用するというデザインをしていて解放感が半端ない。コルビジェが意図した建築模型が展示されている他、こちらはではロダンを中心とする彫刻作品が展示されている。
2階からは絵画をメインとした展示になっている。まずは宗教画を中心とした展示から始まる。油彩の他にもテンペラ画で板に彩色しているものも多い。聖書をテーマにした絵画が中心のため聖母子や三位一体、最後の晩餐など聖書でお馴染みのエピソードが多い。有名な画家としてはクラーナハやドラクロワ、モローあたりだろうか。
さらに宗教画は続き、エル・グレコやヨース・ファン・クレーフェによるグロテスクな磔刑のほか、カルロ・ドルチの描く悲しみの聖母はラピスラズリの青色が印象的。ここではフェルメールの作品も見られる。変わったところではハンマースホイの作品もある。
角を曲がれば宗教画から宮廷画への変遷が見られパトロンに依頼された肖像画などが目立つようになる。ルーベンスの眠る双子やラ・トゥールあたりの画家が著名か。
さらに次の角を曲がればそこからは風景画が中心となる。オノレ・フラゴナールやブリューゲルといった画家による鮮やかで写実的なタッチのものが多い。最後は細やかな造形の装飾品が展示されていて本館は終わり。
本館2階は空間の中にロフトのような形で中3階があるため内周側の天井が意図的に低くされているのも印象的で、外周側の展示を見る際には天井が一気に広がる効果を持っている。コルビジェは「モデュロール」という、人間の身体に沿った尺度を考案していて、この建築においてもそれが活かされている。
新館もまた開放感のある造りをしている。特に新館を入った最初の展示室は下の展示室からの吹き抜けになっていて、上から下を見下ろせるのもまた気分が高揚する。作品で最初に目を引くのはギュスターヴだろうか。裸婦の他にも風景画や罠にかかった狐など自然と向き合った作品が見受けられる。
さらにマネ、シスレー、セザンヌ、ルノワールといった印象派の作品が展示される。この辺りからは個人的にも名前を知っている画家の作品が増えて行く。モネもね。お馴染み睡蓮もあるけれど中でも画布の半分がない大作『柳の反映』が印象的。
特別展として一室で新収蔵版画コレクション展が開催されている。藤田嗣治、ゴヤ、ジェリコーなどの版画が紹介される中で、クリスティアン・ハンリヒ・ヴェングによるアナモルフォーズ作品が印象深い。円形の絵の中心に金属の筒を配置することで、反射する筒の方の絵を鑑賞するという技法である。
新館の1階へ降りればジャポニズムに影響を受けたゴッホやドニ、ピエール・ボナールなどの続いて、ピカソにブラックといったキュビズムの作品が占める。また彫刻エリアではロダン、ブールデルらがお目見え。
最後はモダンアートのエリア。今回は特別展としてコルビジェの作品を展示。建築家だけでなく画家としての顔を持っていたことは知らなかった。かなり抽象的な絵画でこのエリアにふさわしい作品となっている。
といった形で常設展は終了。とにかく広い。常設展だけで2時間以上はかかる広さになっている。6月からは企画展も用意されておりさらにボリュームのある展示になること請け合い。さすがは国立。一筋縄ではいかない。トイレはウォシュレット式。
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