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Bunkamuraザ・ミュージアム(東京都渋谷区・渋谷駅 ザ・フィンランドデザイン展)

フィンランドといえば日本人に馴染みがあるのはムーミン。ムーミンに限らず、建築や工芸などのフィンランドに関する展覧会がいろいろな場所で催されているなど、美術展にもブームのようなものがあるのかもしれない。2021年は浮世絵が激推しされていた。2022年はフィンランドである。たぶん。

北欧の大自然の中で培ったデザインがフィンランド発のファッションや工芸・建築などに大いに影響を与えていることはこれまでに参加してきたフィンランド関連の展覧会でも学習済なのだけれど、この展覧会でも最初にフィンランドの大自然の風景写真を配することでそのイメージの一助としている。アルヴァ・アアルトによる建築やインテリアがその端緒といってもいいかもしれない。

島嶼が多く、また氷山などによって海岸線が変わるフィンランドでは特徴的な湾曲をしたデザインの花瓶や食器が多く、その中で大量生産と実用性を兼ね備えたガラス器が増えて行くことになる。フィンランドでは多くの工房があり、それぞれがユニークなガラス器や陶器を生み出すことによってフィンランド国内のみならず、世界へ発展して行く。ここではナニー・スティルやカイ・フランクの器が印象的。

中でも黄金時代とよばれた1950年代には多くのガラス工芸が発展し、トリエンナーレなどの国際的な出展によって世界から注目され、機能性だけでなくそこに芸術性も内包するような作品が次々に生み出されて行く。タピオ・ヴィルッカラやティモ・サルパネヴァの作品は器という機能もさることながらいつまでも眺めていたいデザインが魅力的。

中でもこの時代から女性の手による作品が多くつくられるようになり、それと時を同じくしてフィンランド社会の中で女性の社会進出・地位向上がなされるようになる。寒い地域であるためテキスタイルも発展して行き、女性進出も相まってマイヤ・イソラらによるマリメッコやタンペッラ、フィンレイソンなどの独創的なデザインのパターンによる服飾が輸出されて行くようになる。

なんといってもフィンランドを代表する世界的な作品といえばトーベ・ヤンソンによるムーミンシリーズ。画家としても活動していた彼女がこの愛すべきキャラクタを生み出したことは今でもフィンランドにとっての誇りでもある。よく都市伝説で語られていたような、シリーズの中にある『ムーミン谷の彗星』が実は広島・長崎の原子爆弾投下に影響されて創られた話というのは実際に本当らしい。

一箇所だけ記念撮影スポットがある以外は基本的に撮影は不可。会場はかなりの人出で、特にグッズ売り場が最も人口密度が高かった。そりゃ展示会をみたら欲しくなっちゃうよなあ。展覧会という機能だけでなく経済の面でもここからフィンランドのブームが始まる気がしている。

別のギャラリーでは「日本画解放区」と題して、独自の技法で日本画の表現に挑戦している七人の画家にスポットを当てた展示会を行っており、フィンランド展とはガラリと違う絵画を鑑賞できて面白い。


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