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井の頭自然文化園/彫刻館(東京都武蔵野市・吉祥寺駅)

井の頭公園に動物園なんてあってもいいのかしら? と誰かが言ったようなそんな井の頭自然文化園。広大な井の頭公園の一角に動物園の本園と、水生物館の分園が離れて存在している。二つの園はつながっておらず共通チケットで行き来するという形式をとっている。

こちらの動物園で有名なのはなんといってアジアゾウの「はな子」である。日本で飼育された中で最も長寿だったはな子。2016年に66歳の生涯を閉じた後もそのゾウ舎は当時のままで残されており、生前の様子が写真展示されていたり献花台が今もある。

出してよー

リス園もあればふれあい動物、猛禽類もサル山もある。いわゆるスタンダードな動物園なわけだけれど、より自然に触れ合ってほしいという想いから自然文化園という名前が付けられている。その中でもう一つ特徴的なのが動物園の奥の方に突如として彫刻展示が大量に出没するエリア。

急に現れる彫刻エリア

実はこちらが今回の目的の半分といっても過言ではない彫刻園。彫刻家の北村西望による作品が3館に渡って大量に展示されているという、まさに「文化園」の名にふさわしいエリアになっている。北村西望の代表作といえば長崎の平和祈念像。その平和祈念像の原型がこの中に収められているのである。

すごく大きいです

長崎出身ということもあり、原爆犠牲者の冥福を祈る記念碑を造る依頼を受けた北村西望。ただ西望は長崎だけでなく全人類への祈りを込めて、ということで「祈念像」として巨大な像を造ること決意。9メートルを超える巨大な像をつくるためのアトリエがなく、東京都に相談し、この自然文化園の地でアトリエを建造することにしたのである。

アトリエ自体の巨大さがわかるだろうか

彫刻園はA館とB館、アトリエ館の3つに分かれており、平和祈念像の原型が展示されているのはA館。入口すぐの中央に構える巨大な像である。その表情は菩薩のように穏やかで慈愛に満ちた表情が見てとれる。そのほかにも鎌倉武士の畠山重忠、若き日の織田信長、伊東マンショなどにならびミキモト真珠の御木本幸吉像など、終戦から102歳で没するまでに作られた作品を展示している。

A館でどれだけ大きいかわかろうというもの

B館では若き日の西望の作品として、彫刻家を目指してから終戦までに作られた作品を展示している。加藤清正像や山縣有朋像、寺内正毅像などの他、やっぱり芸術家ならではの猫や自刻胸像などがある。戦争の色が濃いため少し恐怖心を煽るような凄惨さを感じる作品が多いように感じられる。

B館はちょっとだけ怖い 子供向けの動物園にこれあったらビビる

最後はアトリエ館。平和祈念像の制作場として建てられたもので、素材別の作品をもとにしてそれぞれの彫刻技術を紹介している。中央には巨大な回転台もある。ちなみに屋外にも至る所に西望の作品が展示されている。全ての作品は東京都へ寄付されており、四季折々の自然の中で調和する作品を味わうのも良い。トイレはB館にありウォシュレット式。

アトリエ館のアトリエ感たるや

園内には童謡を作詞した野口雨情の書斎を移築した童心居もあり、現在は茶室として使用されている。
なお、分園である水生物園ではサカナや両生類などの水の生物を水槽越しに見学できるほか、水鳥が多く飼育されている。本園に比べればやや小規模だが公園内にあるので散歩がてら訪れるというのも良いかもしれない。

野口雨情の書斎だった童心居

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