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三岸アトリエ(東京都中野区・鷺ノ宮駅)

2022年度の東京都文化財ウィークにおける個人的に注目度の高い施設がこちらの三岸アトリエ。画家である三岸好太郎三岸節子夫妻のアトリエとして建築された邸宅で国の登録有形文化財に指定されている。それもあった文化財ウィークの対象施設ともいえる。アトリエは好太郎がデザインし、知人の山脇巌の設計によって建てられたもので、好太郎は完成を待たずになくなったが、アトリエは節子が完成させ邸宅として、また本人も画家として亡くなるまで絵を描き続けたという。

鷺ノ宮駅から中杉通りを中村橋方面へ北上して新青梅街道で西進した先の住宅街の中にあるアトリエは現在はレンタルスタジオとして運営されている。建築から80年近くが経ち老朽化していた建物は、東日本大震災によって一部が崩落していたりと全体的に修繕が必要な状態になっている。そんな中で一般公開されるのは貴重。なお、稀に月に1回程度で公開していることもある。

ロビーの暖炉もかつて使用されていた

アトリエは特徴的な螺旋階段が目を引く。二階まで吹き抜けになっている天井の高いアトリエは南東部に窓が取られている。いわゆるモダニズム建築と呼ばれるもので、設計の山脇巌は日本にバウハウスの概念を持ち込んだ人物で、このアトリエは山脇巌の理念と、三岸好太郎の理想とが結実した場所とも言える。

アトリエを象徴する螺旋階段

2階には和室がある。アトリエの螺旋階段から上ってもつながる面白い作りになっている。2階は特に壁の剥がれが顕著で劣化具合がやはり目立っている。部屋の真ん中に脚立が置いてあり、一部の天井が空いている。最初は工事関係かと思ったが、こちらは特別に天井裏も覗くことができるために設けられたもの。一般の住宅でも天井裏を見ることは滅多にないのでこれは新鮮。

当時のままで残されている内装

トイレは個室洋式。芸術家のアトリエならでは、ユニークな内装で面白い。浴室も階段下にある。アトリエ内には他に洋室と入り口の暖炉の部屋がある。暖炉は当時は実際に使われていたそうだけれど、意外と暖がとれずに寒かったらしい。庭にも出ることができ、こちらではカフェが開店していて庭先で一服できる。外観も含めて芸術家のアトリエらしい邸宅。

外装もまた良いものです


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