デザイナー田中良治さんの3箇条

『デザイナーが未来に残したい私の3ヵ条』から、田中良治さんの仕事で大切にしているルールを紹介します。本書には、作品も紹介されていますので、詳細は是非そちらをご覧ください。

①ラブレターを書くようにデザインする

ANDO GALLERYのウェブサイトのデザインを手掛けた時、葛西薫さんのロゴデザインがすごく好きだったので、葛西さんにラブレターを書くような気持ちでデザインした。
それまでは、良いプレゼンをして、良い企画書をつくって、それを通してという、デザインする前から説得する仕事が多かった。でもこの仕事は、手がかりはロゴだけで進めた。言葉を介さずに、デザインでわかり会えた瞬間
は幸福だった。そんな気持ちをいちどでも味わうと、また体験したくなる。そんなことがモチベーションになっていると思う。

②わからないことに出合う

「わかならいことに出合いたい」という気持ちが強い。
わからないこものの中に自分の好きなもの、気に入った部分を見つけて、積極的に作品に関与していくと、られるものがある。
グラッフィックデザインの世界は様々な表現がやり尽くされている。それでも印刷や造形の際どさを駆使すると、さんさんやりつくされたはずなのに新鮮さが立ち上がる。そういうグラフィックの深淵というか「わからなさ」に惹かれる。

ウェブデザインには基本のわかりやすいテンプレートというものがある。
人が使うものだからシンプルにわかりやすくすることは前提。でも混沌とした要素も残しておきたい。
ウェブが世の中に浸透してきたからこそ、どう違いを出すかということが求められてきていると思う。

③わかる必要がある人に伝えたい

「デザインは、わかる人がわかればいい」というのは傲慢ではなく、本当にわかる必要がある人に伝わればいいと思う。
この場合の「わかる人」とは、デザインの教育をうけているとか目が肥えているとか、そういうことではない。
例えば、人生で疎外感を感じたことのある人にだけ引っかかる表現というものがある。それはデザインの素養がある、なしとはまったく別もの。
誰にでも伝わるもの、明快でわかりやすいものが求められることも多いが、それだけになってしまうと、人の多様性に光があたらなくなるような気がしている。

デザインを始めた当初から、ネットとリアルをつなげたいという意識を持っていた。
自分自身、グラフィックデザイン業界の人に出会えたのがきっかけで、視点の広がりを持てたと思う。
G8ギャラリーで企画した「光るグラフィック展」では、気鋭のデジタルアーティストから大御所のグラフィックデザイナーまで、様々な方の作品を展示した。デジタルとグラフィックの壁を取り払うという発想ができたし、そこにすごくきれいなグラデーションを作ることができたと思う。


「わかりやすさ」とは違う、新しい編集による視点を提示するのも、こかれからのデザインの役割なのかなという気もしている。

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