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箱根の足湯カフェがサウナを作る理由

はじめに



NARAYA CAFEオーナーの安藤義和と申します。


箱根登山鉄道宮ノ下駅前に足湯カフェをオープンして今年で15年になります。

開業からこれまで、箱根の自然と足湯の温泉に癒されながら、世界中から来た旅人が交流を楽しめるカフェとして多くのお客様に来ていただきました。

ところが2019年秋には台風19号の被害により登山鉄道が運休し、さらに2020年以降はコロナウィルスが追い討ちをかけ、開業以来の困難に直面しています。

とはいえ、今まで箱根にお客さんが来るのが「当たり前」だったサイクルが一旦途絶え、不連続点が生じたことは、自分たちの足元をみつめる良い機会となりました。

NARAYAと宮ノ下


ここ宮ノ下は幕末から明治・大正時代にかけて、西洋人によりリゾートとして見出され賑わってきました。私の実家であった奈良屋旅館は江戸時代中期から続く温泉宿でしたが、幕末の頃から西洋人も受け入れるようになりました。

その後、富士屋ホテルが開業し、奈良屋も西洋館を建設し「NARAYA HOTEL」を名乗るようになり、両者はライバルとなりました。

このライバル関係はエスカレートしたため、のちに「外国人は富士屋・日本人は奈良屋に宿泊する」という紳士協定を生んで共存をはかっていきました。

その後、関東大震災で奈良屋西洋館は崩壊したため、富士屋は現在の姿で残り、奈良屋は日本旅館としての道を歩みました。

その奈良屋旅館も2001年に相続税の負担から閉館し、現在は私たちがNARAYA CAFEとして宮ノ下駅前に場所を移して営業しています。

今も街に多く立地する骨董品店や英語の看板、それからなぜか80代以上のおばあちゃんたちが流暢な英語をしゃべるということがこの街の特徴です。


NARAYA CAFEの空間づくり


NARAYA CAFEの空間は地域で活動する若き職人たちと我々オーナー夫婦、そして友人たちとの協働によって、プロに任せる部分は任せ、素人でもできる部分はセルフビルドで作り上げてきました。

当初の足湯+カフェに加え、その後、雑貨店・ブックカフェを併設し、第1回緊急事態宣言中の2020年には厨房のリニューアルも行いました。

この「職人+セルフビルド」による協働の手法でこれからも施設を拡張し、さらにまちづくりや地域資源の保全活動にも拡張できないか、、、、、

そんな考えから、常に妄想、ときに実現、、、を繰り返し、今に至ります。


風を感じる場所でありたい



みなさんは箱根に何を求めて来ますか?
自然、温泉、美味しいもの、アウトドアスポーツ、富士山?

けれど1年365日あれば良い天気の日もあるけれど、雨の日も、風の日もあります。
夏の昼間はそれなりに暑いし、冬はとても寒いです。
妙に雨の多い時期もあります。

でも大丈夫、オールシーズン楽しめるリゾート箱根にには空調の効いたホテルや美術館がたくさんあって、室内で快適に過ごせます。

ですが、せっかく箱根という自然に抱かれた場所にいるのだから、季節ごとの風を感じ、空気の匂いや暑さ・寒さまでも思いっきり楽しんでみてはいかがでしょうか?

今後、お店を拡張していくにあたり、「風を感じる場所」でありたいということはひとつの柱にしたいと思っています。

限りある温泉資源で何ができるか



これまで、奈良屋旅館時代にいくつかあった源泉のうちの唯一残った1つを用いて「足湯カフェ」を営業してきました。

この源泉はポンプで汲みあげる形式で、揚湯量は毎分30Lほどです。一般的な浴槽(200L)を満たすのに6~7分かかる計算なので、それほど多くはないですね。現在も冬場は加温のためガス給湯器を使用することがあります。

そのため足湯を増やして「足湯カフェ」自体を拡張することには限界があります。(今回、若干の拡張はしましたが、、、)
ましてや入浴を主体とした施設展開をするにはボイラーを入れて循環でもさせなければ無理です。

とはいえ、せっかく残した奈良屋の名湯を、足湯だけではなく、全身で味わう気持ち良さを味わって貰いたいし、我々も味わいたい。

男女別の浴室を作るほどスペースは広くないから、せめて貸切風呂だけでも作ろうか。けれどあまりに開放的な施設配置だから目隠しを作るのが大変、、、などと悩んでいるうちに時が経ってしまいました。

そんな状況の中、最近になって、あるアイディアが思い浮かびました。

それが「サウナ」です。


なぜサウナ?


いまサウナがブームだと言われています。

温泉のある土地で生まれた自分は、これまでサウナにほとんど興味などありませんでした。むしろ
「天然でない人工のもの」として我が家の掛け流し温泉に対して「下に見て」いたところがありました。旅先で入った温泉にサウナが併設されていても、入らずに帰ってきていました。

けれどよくよく勉強していくと、古来日本では「風呂」というのは「蒸し風呂」のことを指す言葉で、湯船につかるスタイルの「湯」が一般化するのは江戸時代になってからだというのです。
秀吉が入ったといわれる宮ノ下の「太閤の石風呂」も風呂という言葉を使っているということは洞窟蒸し風呂のようなものだったかもしれないのです。


日本の一般的なサウナは男女別の大浴場に付随して設けられていますが、近年、アウトドア志向の高まりとともに、フィンランドなど欧米のスタイルである「水着を着た男女混浴」のサウナも出てきています。

サウナで火照った体を湖や川(または雪原)へダイブして冷やす、、、という、「これは外国(フィンランド)の旅番組か?」というような光景が日本でも見られるようになりました。

サウナの3要素は
「蒸す」(サウナ室)
「冷やす」(水風呂/ 湖・川・雪)
「休む」(外気浴)
だと言われています。

NARAYAでサウナをやる場合、一番の強みになると思うのが三番目の「外気浴」だと思います。
足湯もある意味、足を温めながらの外気浴です。ならば、サウナを加えることにより、これまでの足湯と同様、風を感じながら滞在を楽しめる空間を増やすことができるのではないか、、、しかも欧米スタイルの水着で混浴とすることで、老若男女、日本人も外国人も一緒に楽しめるボーダーレスな空間に出来ないだろうか、、、、。

そんな構想(妄想?)が膨らんできました。

折しもコロナ渦でビジネスモデル転換に取り組む中小企業に対し、補助金が公募されていたので、昨年春から企画書を書いてチャレンジを重ね、このほど神奈川県から補助金が降りることになりました。

この資金を利用しつつ、NARAYA CAFEではサウナ事業に向けての改装を行っています。

サウナは目的でなくて手段


新しくはじめるサウナの名前は

「サウナ NARAYA+」(サウナ ナラヤプラス)

に決めました。

サウナはあくまでNARAYAという空間を最大限に楽しむための手段であって 目的ではない。
だから、NARAYAの新しい楽しみ方の一つだということを明確にするため
「NARAYA +」というコンセプトを用いました。

プラス(+) という名称に込めた想いは

1) NARAYA にさらなる(経済的)付加価値を加える

2)NARAYAに来たお客さんにもっと楽しんでもらえる空間にする

そしてもう1つ、これは我々やスタッフにむけてですが

3) NARAYAでの日常業務に加え、自分の「好きなこと」を生かす場にする

です。


今後、どんな形になるかはわかりませんが、サウナ以外にも「NARAYA+」を増やしていきたいと思っています。

まずは第一弾のNARAYA+、「サウナ NARAYA+」はこの秋、プレオープンする予定です。

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