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百合のような花

6月の頭だったか、勝手に生えたアスパラガスの横から、茗荷のような草が何本か伸びてきた。ちょうど、落花生や夏の野菜を植えようと思っていたところだったので、畝を耕したら、その地下茎をほじくり出してしまった。茗荷が出てほしいから、元の場所に埋め直したが、中には、長芋ほど太い地下茎もあった。茗荷の地下茎とはこんなに太いのかしらんと思った。
茗荷(仮)はどんどんと伸びて、ついには到底茗荷とは思えないほどの背丈にまで伸びた。僕たちはその先端に、百合の蕾のようなものがあることに気がついた。百合の蕾にしては、少々小ぶりだけれど、去年、家の周りの生垣に、白い百合(おそらく外来種)がたくさん自生していたのを思い出した。何処かから運ばれてきたあの百合が根付いたのだろうと思い、それからは白い百合が咲くのを楽しみに待っていた。そして、梅雨明けの土曜日、ついにそれが花を咲かせた。しかし、それは僕たちが想像していた百合の姿とは少し違っていた。
赤い花びらは逆さに反り返って、黄色く縁取られたへりが怪しく波打っている。さらに、よく見ると、隣のゴーヤの蔦に絡みついている。ゴーヤが絡みついているのではなくて、百合の葉の先端が、ダリの髭のようになって、ゴーヤに絡みつき、自重を支えているのである。ゴーヤの蔓は、この百合の巨体を支えるにはあまりに貧弱だ。風も強いし、このまま、一緒に倒れでもしたら、元も子もないから、ダリ髭を引き剥がして、ゴーヤから遠ざけた。その日のうちに、百合は倒れた。

地を這う百合(仮)

本体は倒れたが、茎が折れたわけではないらしく、まだ、生きている。そして、健気に新しい花を咲かせた。僕らの想像とは違う妖しい花だが、美しい形状をしている。インターネット検索を駆使して、同定を試みたところ、すぐにグロリオサという花であることがわかった。毒のある根っこが芋に似ていて、誤って食べると危険なのだそうだが、うちの家庭菜園では芋を植えているわけではないので、誤食のリスクはないだろう。もう少し花が咲いたら、花瓶に生けて、飾ることにする。


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