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美しいだけでない…!正倉院の宝物 

今日は、正倉院展でご出陳されている「布作面」について語りたいと思います。

これは布に、顔が描かれていまして、付属する紐であたまに付ける方式の「仮面」なんですね。

ちょっと怖いというか、独特な目鼻立ちをしてまして、けっしてきれい、とかかわいいものではないです。

実物ご覧になったかたも「昔はこんなお面があったのね」とか「ちょっと不気味ね」という感想を持たれた方も多いのではないかと思います。

私の友達も「これ残す必要あったの?」と言ってたんです。

これを聞いて、「あったんだ!残す必要大アリなんだー」ということを訴えたいと思います。

すごいところは大きく2つあります。

まず、このお面は顔が描かれている。人物が描かれているのです。
これって、絵画なんですよ。奈良時代の絵画って、そんなに多く残っていません。

人の顔を描く、ということをあまりしてなかったのだと思います。
唐招提寺さんで鑑真様の肖像彫刻が残っています。あれ、すごくリアルなんですね。

リアルさに当時の日本人はびっくりしたと思います。この布作面も、シンプルながらリアルです。

「人物の顔をリアルに表現する」そういうことをあまりしない習慣だったから、その技術はもちろん、そういうものを造っちゃうひとたちに度肝をぬかれたと思います。

布作面をつけるということ、顔を描いてつけるということは、別人になるということ。そういうことが斬新だっただろうし、さらに笛を吹いたり、舞を舞ったりすることがなんて面白いんだ と思ったと思うんです。

布作面のすごいところ1️⃣別人になれる。そして奈良時代の数少ない「絵画作品」だということ

そしてふたつめは、これが「大仏開眼供養会」で使用された可能性があるということです。

大仏開眼供養会とは、東大寺 大仏殿がグランドオープンしたその日の式典のことです。

この時にさまざまな催しがあったようで、大仏さんが出来上がった感謝と喜びのお祝いの会でした。

当時国外から、遠い所では現在のベトナムからやってきた人が、音楽や舞を奉納したことが記録されています。

当時の人が海を越えて日本にやってくるって、それはすごいことなんですよ。しかも無事にたどりつけるかどうかわからない。帰りだって無事に帰れるかわからない。でも、きてくれた。ともに大仏さんができた喜びに花をそえようときてくれた。

そんな人達が身につけていた可能性のあるお面です。当時の日本人たちは、華やかな演奏や舞にびっくりしたでしょうし、楽しかったでしょうし、大仏様の偉大さに感じ入ったことでしょう。

式典が終わって、もう使わないからって捨てますかね? 捨てないですよ。大事な記念品ですよ。

これは、当時日本が世界とつながっていた印です。仏教ということを中心にして、たくさんの人がお祝いに駆け付けてくれて、盛大に祝ってくれた。東大寺がいつまでもいつまでも繁栄しますように。その願いをこめて、大仏さんのスタートが切られ、そして現在も受け継いでいる。

布作面は、当時の人々の気持ちがこもっています。
令和5年の正倉院展は、11月13日まで。ぜひ訪れて下さい。


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