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背を向けた御社殿のヒミツ 奈良 采女伝説



謎? 背を向けた御社殿

秋になって空気が澄んでくると、空も高く見えてお月さまを眺めるのにちょうどいいそうです。

今年(2023年)の中秋の名月は9月29日です。

奈良の猿沢池という所では、采女祭というのがあります

前日に宵宮祭があり、春日大社の神職さんがお祭りをされ、お祭り当日はお行列や花扇の奉納、管弦楽を奏でる船が登場したりします。

猿沢池という池はですね。奈良の興福寺さんの麓にある池です。

そこの池のたもとには、采女神社というお社があるんですね。
こちらの御社殿は、不思議なことに後ろを向いています。

参拝者の方を向いてくれていない。

正面から参拝しようとすると、中に入って正面に回り込む必要があるのですが、ふだんは門が閉じられているので、ふだんは背中をお参りすることになります。

なぜなのか。

かなしみの采女伝説


この采女神社には悲しい物語が伝わっています。

昔、むかし天皇のお側近くにお伝えしてお世話をする采女という職業の方がいらっしゃいました。

全国から見目麗しい娘さんが選ばれて京都にやってきて、そして天皇のお世話をするんですけれども、ある時はる姫様という采女が天皇にお仕えしていました。

そしてその美貌が天皇の目に留まって二人は恋に落ちるんですね。

天皇と采女の恋。

最初はですね。このはる姫様は非常なご寵愛を受けたということなんですけれども、悲しいことに天皇の寵愛が冷めてしまった。
天皇が通われなくなってしまった。

これを悲しんだ采女は自分のこのはかない恋を嘆いて、猿沢池にて入水自殺をしたそうです。

天皇は自分が愛した采女がこういう悲しい末路を遂げてしまったということを深く悲しんで、この采女を祭るためのお社を作りました。

それが現在残されている采女神社です。

天皇がこの采女の霊を慰めるためにお社を建設したんですけれども、采女の魂は、自分が入水自殺をした池を見たくなかった。

なので御社殿が一夜にしてひっくり返ってしまいました。
池に背を向けるような形に変わってしまったそうです。


今、采女神社に行かれますと、御社殿が池に背を向けた形で建っているんですね。

これはそういった伝説がもとになっているんですね。

この采女の霊を慰めるために毎年催されるのが采女祭です。

中秋の名月の頃に猿沢池に竜の頭の形を乗せた船が浮かびまして、采女を慰める管弦楽なんかもね催されます。

ぜひ中秋の名月とともに、このお祭を愛でていただければと思います。


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