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おもひでぽろぽろ、センター試験

今日はセンター試験らしい。春まであと少し。
わたしは部活や習い事を何も頑張れなかったことがコンプレックスなのですが、人生で唯一頑張ったと思うのが受験です。なので、この機会にセンター試験の思い出を語らせてください。

 センター試験は、わたしの中では二度と受けたくない試験ランキングの1位に輝いている。あんなに精神を削られるものはない。センター試験より難しい試験はいくつもある。大学受験の二次試験だってはるかに難しい。ではなぜセンター試験が1位?というと、理由は点数の取り方にある。

 二次試験の場合は、「いかに正解を積み重ねるか」が問われる。よほど天才が集まる医学部などでない限り、全問に全力投球する必要は無い。試験が始まったら、まずは全ての問題を眺めて解けるものと捨てるものを見分け、わかる問題から確実にとれば良い。全科目合計で6割ぐらい取れれば充分合格ラインに届いたはず。

試験が難化した年でも、そんなに焦る必要は無い。みんな同じように難しく感じているはずで、平均点もその分下がる。やはり粛々と解ける問題に向き合えば良い。(逆に、易化した年の方が危険。平均点が上がるので、1問解けなかったことが命取りになることも)
 なので、プレッシャーが無いとまでは言わないが、そこまでピリピリせず試験を受けられる。

 対して、センター試験。これは「いかに減点を避けるか」が問われる。基本、正解が当たり前。試験が始まったら、全ての問題を確認したりせず1ページ目からひたすら解き進める。「わからない問題が来たらどうしよう…」という不安が常につきまとう。自信の無い解答をする度、頭の中のカウンターが100から98へ、98から96へと小刻みに減っていく。
 年によって難易度が大幅に変わることもないので、自分が難しいと感じても皆が同じように感じている保証はない。

 このプレッシャーはかなりしんどかった。一通り解き終わったら、ミスが無いか、マークの場所は合っているか、血眼で何度も何度も確認した。
 あのピリピリした感じは二度と経験したくない。

    ・・・

 でも、決して悪い思い出ではない。入試というものはある種のお祭りみたいで、ちょっとした高揚感すらある。なんせ周りにいるクラスメイト全員が、中学生の頃から、ともすれば小学生の頃から、この大学受験というイベントに向けて勉強してきたのだ。入試直前期は、誰も表には出さないものの、やはり「やってやる!」みたいな雰囲気が静かに漂っていたと思う。

 センター前日は、試験会場の下見を推奨されたので放課後に友人とふたりで見にいった。高校の最寄駅から地下鉄で数駅離れた場所にある大学のキャンパス。ただの下見だというのに、先生が数名待機していた。

 私の高校は校則が厳しくて、マフラーすら学校指定のものしか許されなかった。それがダサくて嫌で、こそこそと自前のマフラーを使っていたのだが、その校則違反の状態で思いっきり先生にエンカウントした。
 センター前日になってまで校則違反で怒られる情けない事態を覚悟したけれど、何も言われなかった。「明日がんばりや」とだけ言われた。大学入試の特別感すごい…!ますます高揚した。

 その足で、当日の休み時間に食べるお菓子を買いに行った。せっかくだし、贅沢して普段手がでないもの買おうぜ!となり、メルティーキッスを買った。普段アルフォートかブランチュールしにか手を出せなかった人間が、メルティーキッス。1箱100円そこらから1箱250円への大躍進。「買っちゃったよ~!!!」と、ひととおりはしゃいだ。

 その友人とはちょうど同じぐらいの金銭感覚を持っていた。塾の自習室でのお供に買うマウントレーニアは少しだけ贅沢。友人がマウントレーニアと間違えて、スターバックスを買ってしまったことがあった。50円も高い。贅沢オブ贅沢。ストローで吸う度に小銭の音が聞こえる…と嘆くその感覚が好きだった。

 そして当日。どんな気持ちだったかはあまり覚えていないが、今までやってきたから大丈夫という自信と、もし失敗したらという不安がまぜこぜだったと思う。あとは何より、元気にこの日を迎えられて良かったという安堵。

 試験会場でもまわりは見慣れた同級生ばかりだったので安心したが、最初の科目はさすがに緊張していた。倫理政経だったけど、開始直後は問題用紙を目が上滑りして、内容が全く頭に入ってこない。これはいかんと思い、思い切ってしばらく何も考えずにぼんやりと前を向いて心を落ち着けた(試験官からすれば、早速試合放棄したように映ったかも)。
 でも精神統一のおかげで、その後はどの教科も落ち着いて臨めた。

一度だけ、試験終了数分前に重大なミスに気付いて心臓が破裂するかと思ったけれど。その鼓動たるや、心臓の音をイヤホンで直接聞いてるみたいな爆音だった。それまでは静かだったのに、気付いた瞬間に鬼の爆音でドキドキ言うんです。助走とか全くない。必死で答えを書き直しつつ、心臓の音すご!と妙に感動してしまった。

 お昼休みも面白かった。前日に下見に行った友人と一緒にお弁当を食べた。友人がお弁当袋を開けると、1枚の紙が入っていた。「なにこれ?」と紙を開くと、それはテニプリの漫画の1ページで、大きなコマにでかでかと「行くぞ!!!」というセリフが書かれていた。彼女のお母さんが応援メッセージとして入れてくれたものだった。

良いお母さんだと思ったが、当の本人はというと「これ、ほんまの漫画のページちぎったんかな…」という心配で若干テンションが下がっていた。いやさすがにコピーだろと思ったが、確かに当事者になると心配になってしまうかも。

 試験が終われば、今度は自己採点というメンタル削りイベントが待ち構えている。酷だよなあ、自己採点。私は帰宅してすぐ、パソコンのある部屋にこもって自己採点していたけれど、家族も気が気でなかっただろう。

でも結果は良かった。嬉しかったが、まだ入試は始まったばかり。1か月後には二次試験が待ち受けているのである。また地に足つけて勉強するしかないのだが、何はともあれセンターも良い思い出になったなあ、もう絶対受けたくないけれど、といった心境だった。

 猛烈に語ってしまったが、これも私の中では青春のひとつだった。 センター試験の概要を1枚のイラストにまとめたものがバズっていたけど、私が受けた年はこれでした。なつかしい!


 

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