見出し画像

鴨川を思い浮かべるだけで泣きたくなる

鴨川。京都を南北に縦断する川ですが、わりと名の通った川なのでしょうか。川岸にカップルが等間隔に座る現象を「鴨川等間隔」なんて言いますが、そういうところで有名なのかな。

鴨川って、京都を愛する人にとっては本当に大切な存在です。まさしくソウルリバーです。ある日突然鴨川が無くなっていたら、それはもう大変なことになります。そりゃ鴨川に限らず何でも大変だろと思うかもしれませんが、川がまるごと無くなるという怪奇現象よりも先に、京都で過ごした時間とか思い出とかを半分以上ちぎって捨てられたような気分になるのです。

京都以外にも、ソウルリバーは存在するのでしょうか。大阪では淀川が愛されるの?長野では信濃川?東京では隅田川?ぜひ知りたいものです。

私は中学、高校、大学の12年間を京都で過ごすことができました。京都に居られて良かったなあと思うポイントは色々あるのですが、やっぱり鴨川の存在が大きい!私の友人には就職を機に京都を離れた人が多いですが、「いつか京都に戻りたい」と言う人が多いです。友人たち、京都出身じゃないです。大阪だったり滋賀だったり、私も奈良出身だし。なのに京都に「戻る」「帰る」と表現してしまうんだな。そして二言目には「鴨川」ですよ。何なんだ鴨川。さてはそなた、ただの川じゃねえな。

ここからは自分の学生時代も振り返りつつ、鴨川の魅力を考察してみます。場所によって雰囲気ががらっと変わるので、場所ごとにまとめようかな。

① 賀茂大橋以北

下鴨神社より北では、西を流れる賀茂川と東を流れる高野川に分かれています。通例として、高野川と合流するまでは同じ「かもがわ」でも「鴨」でなく「賀茂」と書くのですね。

北に上がるに従って京都市内の喧騒からどんどん離れていき、時間が静かにゆっくりと流れる空間になっていきます。

特に貴船や鞍馬あたりに1人で立っていると、木々や建物が遥か昔からずっとそこに変わらず存在していて、自分だけが現代からタイムスリップしたような気分を味わえます。もうこの辺まで来ると、厳密には賀茂川本流でなく鞍馬川や貴船川になりますが。川床といえば四条あたりが有名かと思いますが、この地域にも川床があります。川面のすぐ上に床を組み立てる点で、四条あたりの川床とはまた随分趣きが違ってきます。ちなみに貴船スタイルを「かわどこ」、四条スタイルを「かわゆか」と読むそうですよ。貴船の川床には素麺屋さんなどがありましたが、いくらぐらいするのでしょうか。やたらとお高いイメージがあり、恐ろしくて手が出ません。

② 鴨川デルタ付近

下鴨神社付近、賀茂川と高野川が合流して「鴨川」になる地点です。ここに出来た三角州を鴨川デルタと言います。西に同志社大学、東に京都大学があるのでデルタには学生がいっぱい。ピクニック、川遊び(川面に岩が点在していて、そこを歩くスリルが良い)、卒業アルバム用の撮影、ダンスサークルの練習…何かとデルタ、デルタです。学生以外にも色んな人たちがいます。上半身裸で日光浴をしているおじさん。楽器を演奏する外国人。両手放しで猛烈な勢いで自転車を漕いでいく高校生(危ない)。とんびにパンを取られる女の子(とんび被害者は本当に多い。鴨川でなにか食べる時は要注意。)

特に何もなくても、ひとりでも、川岸のベンチに座ってこういう風景を眺めていると何時間でも居られる気がします。学生時代はよく、色んな人たちを眺めながらひとりでお弁当を食べていました(もちろんとんび注意)。友人と「デルタ行こうぜ」ということで、特に何も話すことなくずっと空を眺めていたこともありました。

こういった「何をするでもないが何となく川岸に居た」時間が、後々鴨川を思い浮かべた時に心がじんわりするもとになっている気がします。整った景観は無いけれど各々が好きなように時間を過ごしている、この辺の鴨川の雰囲気がいちばん好きかも。

③ 三条・四条付近

鴨川等間隔の法則で有名な場所です。河川敷に川床が組み立てられている風景も有名ですね。この付近では、鴨川を挟む東西でがらりと雰囲気が変わるのが面白いなと思います。三条・四条ともに鴨川より西は居酒屋や百貨店や量販店が立ち並び、非常に賑やかな地域です。

春になると大学生のサークルの飲み会が連日開かれ、お酒に慣れていない新入生とそれを煽る上回生の構図が多数見受けられ、結構異様な雰囲気です。新歓期の飲み会の集合場所としてメジャーなのが、三条河原。三条大橋の南西側の河川敷で、本当に色んな大学生団体で溢れています。加えて、ジャグリングなどのパフォーマーも現れるのでさらにカオスです。新入生の皆さんはこの雰囲気に高揚するか気後れするかで、後々の学生生活の送り方が分かれると思います。無理して雰囲気を合わせたりせず、自分に合った学生生活を送ってほしいと願います。

対して鴨川の東側には、こういう若々しい賑やかな雰囲気はありません。三条ならちょっと歩くと平安神宮が現れるなど、控えめな古都のニュアンス。四条なら東側は祇園ですね。八坂神社もあり、三条より少しでしゃばりの古都のニュアンスを感じます。

鴨川では無いですが、木屋町を流れる高瀬川も割と趣きがあります。酔っぱらいが多いので、その中でいかに風流を見出せるかがポイントです。

④ 京都駅付近

この辺になるとあまり観光的には注目される場所でも無くなってきますが、私の思い出としてはすごく大事な地点です。

私の通っていた高校がこの付近にありました。文化祭や体育祭があると、打ち上げと称して四条付近にごはんを食べにいくのですが、その際の移動手段が「鴨川沿いを歩く」でした。

七条大橋付近から河川敷におりて、そこからひたすら河岸を四条まで北上。高校生なので、全員で「小さな恋のうた」なんて合唱しちゃいます。カップルが座っていようがお構いなし。近くを歩く友だちと、そういえばあの人とどうなったんなんてひそひそ話をしてみたり。そんなことをしていたら四条なんてあっという間です。

高校生の時にこの経験をしたからこそ、京都を好きになり鴨川を好きになり、大学も京都にしようと思えました。

この経験が無ければ、大好きな鴨川デルタのことも知らないままだったかもしれないので、京都駅付近の鴨川は私にとって特別な意味を持っています。

まとめ

京都に来た時には、是非七条から四条に向かって鴨川沿いを歩いてみてください。30分ぐらいで着きます。そしてカップルに混ざって鴨川等間隔の法則に参加してみてください。休憩できたら、京阪電車で出町柳まで行ってください。パンを買って、とんびに注意しながら鴨川デルタで贅沢に時間を浪費してください。あなたのからだにも鴨川の水が流れはじめるはず。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?