見出し画像

シャイだけど 人前に立つ ことは好き

 基本、人とのコミュニケーションに自信がない。
 誰かと話したあとの脳内反省会は日常茶飯事だし、4人以上の会話になると空気と化す。

 そんな私だけれど、人前で話すことは好きなのだ。

 元々はとても苦手だった。人前で話す予定があると、かなり前からナーバスになった。
 みんなに見られていることを意識すると顔が真っ赤になるので、碌に前も見ることができず手元の資料に目を落としてぼそぼそとやり過ごしていた。

 転機が訪れたのは、大学4回生になり研究室に配属されたとき。20名弱の研究室メンバーを前に、研究の進捗発表をしなければならない。だいたい2ヶ月ごとに順番が回ってくるので、年に6回。死んでしまう、と絶望した。

 配属後すぐに順番が回ってくるわけではなく、しばらくは先輩の発表を見つつの勉強期間。

 「私もいつかこうなれるのかしら…」と不安に思いつつも、先輩がソツなく発表をこなす様子はとてもかっこよく、「こうなろう」と憧れた。

 憧れの気持ちというのは、とても大きな原動力になる。
なりたい姿を描けたことで、「発表嫌だ。やりたくない」から、「嫌だけど何とか良い発表をしよう」に気持ちが変わった。この1歩がかなり大きかったと思う。

     ・・・

 では、「良い発表」とは何か。何よりもいちばんは「わかりやすい発表」だろう。じゃあ、「わかりやすい発表」とは?

 発表の要素は大きく分けて3つ。態度、話す内容、スライド。
この中で最も重要なのが態度だと思う。どれだけ華麗なスライドで良いことを話していても、ずっと下を向いてぼそぼそされては頭に入ってこないだろう。

 なので、自信をもってしっかり前を向き、聴衆と適度にアイコンタクトを取ることが「わかりやすい発表」の第一歩だ。とはいえ、これはなかなかにハードルが高い。だって恥ずかしいんだもの。
 どうすればできるの、と言えばもう、「わかりやすい発表のために!」と思って頑張るしかない。そんな、どう頑張るんだよ!という感じですよね。
 わたしの場合、「せっかく苦労して発表したのに、わかりにくいと思われたらムカつくな」という悔しさや腹立たしさが最強の原動力になった。悔しいし、腹立たしいから、頑張る。
 「聴衆を全員じゃがいもだと思えば良い」みたいな対処法をよく聞くが、わたしには全く効かなかった。だって明らかにじゃがいもじゃないもの。人間だもの。
 「聴衆の時間をもらって発表してるんだからわかりやすくしなきゃ」みたいな意見もあって、なるほどと思ったりもしたが、そこまで納得はできなかった。

 ここのマインドセットはそれぞれに合った方法があると思う。私の場合は、「わかりにくいと思われたら腹が立つから、恥ずかしいけど何とか前を向いて堂々と発表する」という少々荒々しいマインドセットであった。こんな感じで何とか頑張っているうちに段々と慣れてきて、気付けば何も考えずとも前を向けるようになる。慣れって大事。

 また、原稿を読んでいては前を向けないので、発表の場では原稿を見ないルールを自分に課した。

 これで態度は整ったので、次は話す内容について。まず大前提として、「自分の発表について、聴衆は何の情報も持っていない」と認識することが大事だと思う。相手が都合よく理解してくれることに期待してしまうと、実は伝わっていないという悲惨なパターンに陥りやすい。

 情報のない相手に対して、どう説明するか。これには導入部分がとても大事。

 研究の説明を例にとると、まずは大枠を一言で簡潔に伝える。「本研究では、血圧を下げる効果のある成分を探索しました」という風に。次に、意義(なぜ血圧を下げる必要があるか)を伝える。メリットがあるとわかると、割と興味を持って好意的に聞いてくれると思う。発表の理解度には、興味はとても重要な要素だ。あとは、簡単に検討項目と結論を。

 まとめると、最初に大枠→意義→検討項目→結論を話す。研究に限らず何でも、最初にこの4つをかみ砕いて説明しておくと、その後が少々入り組んだ話になっても、概要は理解してもらえると思う。

 あとは、一文を長くしない。一文に入れる接続詞はひとつまで、とか意識すれば良いのかも。「〇〇が××なので、△△を□□しました。」ぐらいの長さに留めるとか。

原稿を作るときは、とりあえず書き言葉で一通り書き上げる。それを音読して、話し言葉として違和感を覚えたところを修正していく。

原稿ができたら、繰り返し練習しつつ流れを頭に叩き込む。(原稿の暗記に注力しすぎると、口からセリフを垂れ流すロボットのようになり、自然な話し方から遠ざかっていく場合もあるので注意)

 スライドに関しては、よく言われることだけど、文章を長々と書かない。不必要なアニメーションを入れない。スライドはあくまで視覚的な補助の役割なので、グラフや図を的確に使う。1枚のスライドに複数の結論を載せない。

 あとは、発表するときにスライドの方を見すぎない。発表者がスライドばかり見ていると、観客の目線も必要以上にスライドに誘導されてしまい、話が頭に入りにくくなる。

     ・・・

 と、「態度」「話す内容」「スライド」に関して以上のようなことを意識すると、わかりやすいと言ってもらえることが多くなり、徐々に発表が好きになった。学会など、初めての場で発表するときは毎回すごく緊張するけど、嫌な緊張ではない(早く終わってほしいとは思うけど…)

 いま書いたことを見返すと、わかりやすい発表を考える時は、聞く側の立場になって想像するとうまく行くなあ。

 こんな感じで、研究室のおかげで発表が好きになった。今も、仕事で良い成果を出して、業界で一番大きい学会に出ることが目標(願掛けのつもりで書いてみる)。もうこの職種やだなあ、とか思ってもこの目標が心残りになる。

 最近自己肯定感が下がることが多かったので、今日は得意なことについて書いてみました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?