#12_ジャニオタという遺伝子を持って生まれた女
十五祭の申し込みは、姉と自分の2名義でそれぞれ大阪と東京に。
札幌から始まるツアーの日程は、いつも通り。
でも、大阪が初日でもオーラスでもないことに少し違和感を感じた。
姉名義で大阪が当たり、私の名義は東京初日が当たった。
大阪は姉が友人と観に行き、内容については何も聞かないまま9月に旅行がてら東京公演へ。
このとき、6月にくも膜下出血で緊急搬送されたジャニーさんが亡くなり
この関ジャニ∞の公演の後、東京ドームでお別れ会を行うことが決まっていた。
2019年9月1日、東京公演初日。
会場に入り、引き換えたチケットを見ると
そこには“アリーナ B2ブロック 7列”の文字。
松竹座での前夜祭に続いて、姉名義の大阪もアリーナAブロックだったのに次いで
ここに来て私の名義もアリーナ席。
ステージ左寄りの席に着いて
肉眼で見えるこんな距離の東京ドームのステージは、初めてだった。
公演が始まる15分前、センターステージの巨大モニターに映し出されるカウントダウン。
カウントダウンが0秒を迎えると、
「関八絵巻」と題して2002年結成からの歴史をまとめたオープニング映像が流れ出す。
ナレーションを務めてくれているのは関ジャムで共演している古田新太さん。
始まってまだ少し、まだ誰も出てきていないのに
結成当時の似顔絵と共にほかのメンバーと並ぶ「内博貴」と「渋谷すばる」の文字に
開始2分で泣かされた。
内くんの脱退、すうの脱退もしっかり描かれたそのオープニング映像に
みんながやり遂げたい「十五祭」のあるべき姿をしっかり見届けないといけないと感じた。
このコンサート、きっと泣いて観ているだけじゃダメだ。
オープニングが終わったと同時に、スクリーンに映し出される松竹座の緞帳。
「松竹座に来たことが無い人も、松竹座に連れて行きたかった」とのちに忠義は語ってくれた。
そして始まりを告げる松竹座のブザーが鳴る演出にも、拍手しかない。
アイドルらしく、ポップアップで登場しキラキラの衣装で披露した1曲目は「∞o'clock 19」。
すうのパートが無くなり新しくなった自己紹介ラップのこの楽曲から始まり
緻密に計算された演出と、今までの関ジャニ∞を楽しく振り返られるセットリスト。
そして忠義をはじめ残る5人からすうへ、そしてりょんへのメッセージを感じる選曲が並んだ。
開始2分で泣かされていた私も、
そのあとは久しぶりの東京ドームのあの距離のアリーナ席の近さも相まって
本当に楽しく純粋な気持ちで観ながらも、この光景を目に焼き付けようと必死だった。
15周年のお祭りを、どれだけ本人たちが楽しみにしていて
このお祭りを私たちファンにも本当に楽しんでほしいと思っていることが伝わったから。
「勝手にしやがれ」の「行かないでTonight 」「終わんないでTonight」の歌詞に合わせて観客の掛け声の大きさには圧倒された。
“関ジャニ∞”のアルファベットを叫ぶパートでも
その歌詞に、残る5人の思いがものすごく乗っかって、煽りにあおられていったように思う。
アリーナ席にいたからか、そのうねりのような地響きがすごかったのを覚えている。
コンサートの終盤、アンコールに行く前にいつもなら、「来てくれてありがとう」とそれぞれがその場で語ってくれる挨拶の時間。
今回であれば、今までの15年間の道のりも含めて感謝を述べるはずだろう。
その最後の挨拶が、VTRだった。
今まで、こんな形で挨拶することは一度もなかった。
りょんは冒頭にこれだけ話し、メンバーの挨拶が始まった。
このとき、りょんの口から“これからの関ジャニ∞”を語ることはなかった。
そしてVTRの挨拶を最後に締めくくったのは、忠義。
コンサート終盤にJr.や演奏者さんたち、メンバー紹介、ファンへの拍手のあと
会場全員で手をつなぎ、いつしか毎回きみくんが叫ぶようになったお決まりの台詞。
「そして、俺たちが!最高で!最強の!関ジャニ!エイト~~~!」
ここに隠してきた今までの弱音や本音を
「最低で最弱」と言った忠義。
どれだけの思いを込めて、この構成を練ってくれたんだろう。
そしてこのあとアンコール前に選ばれ始まった曲は「咲く、今。」
これは2019年3月6日に6人体制最後にリリースされたシングル「crystal」に収録されたカップリング曲。
『咲く、今。』
この曲でりょんが立っていたのは、ステージの一番右だった。
今まですうと並んで、一番センターに居た人、
すうが居なくなって、「これからは僕が引っ張っていきます」と言ってくれた人が。
一番右端に居る。
もう、最後なのかもなと思った。
最初から最後まで、
去年、すうがいなくなった後のツアーで私が怒りさえ感じていたものが吹っ飛んでいくくらい、何もかもが完璧な演出だった。
本当に残る5人、このツアーでよく泣かなかったなと思う。
悔しかっただろうし、悲しかっただろうし、
ヤスの体調のこともジャニーさんのことも重なって、忠義のヤラカシによるストーカーのことが報道されたのもこの時期と重なっていた。
それでもここまでの演出とパフォーマンスを考え抜いてくれて、
去年置いて行ったファンの気持ちをちゃんと救ってくれた忠義は、本当に素晴らしいプロデューサーだと思う。
忠義の最後の挨拶から、「咲く、今。」の選曲。
どれもすうに向けてのメッセージのようで、東京で追加された「蒼写真」のりょんのピアノ演奏の演出も
このツアー中りょんの脱退をきっぱり否定しなかったことも
りょんに対するメッセージだと
私たちファンに少し勘付いてほしいと思ってたんじゃないかな。
それが忠義にとって“最低で最弱な”姿だったとしたら、
苦しいその気持ちを匂わせた忠義の人間らしさは、とてつもなく誠実だと思った。
コンサートグッズにも15年の集大成の意気込みが詰まっていて、
毎公演、各地で会場にBOYというエイト自身のぬいぐるみを展示していた。
私が観に行ったあとも同じように6人での関ジャニ∞を噛み締めながら、
走り切っただろう東京最終日には
内くんとすうの分も含めた8体のBOYが展示されていた。
忠義はとんでもなくキザで、粋な男であり、きっと一番関ジャニ∞を愛するファンなんだろうなと思う。
関ジャニ∞のファンクラブ会員番号の1番を持ってたすうが居なくなって
2番を持ってるのは、忠義だから。
終演後、モニターに「15:00」の文字。
毎公演、開演15分前から映し出されていたカウントダウンの文字が
15→16へ変わり、「To be continued…」と。
内くんが居なくなったとき、りょんが縦読みのメッセージを送ったエイトレンジャーの連載で
忠義はそのあとから文末にずっと
「8→1」
(=“8人で一つ”)
と書き続けてくれていたことを思い出し、また涙が出る。
その15年から16年目へと続くメッセージに湧き上がる歓声。
私は「え、続くの?」「どっち?」と思いつつ
とりあえず“解散はない”ということだけ伝えてくれたのだろうかと思った。
無事に十五祭を完走した関ジャニ∞は
9月4日に東京ドームでジャニーさんのお別れ会を行った。
その翌日。
錦戸亮らしい短い文章と共に、9月末をもって退所するメッセージが届いた。
かつてないこのせっかち王は、
9月末にジャニーズ事務所を退所した翌日の10月1日に自身のレーベルとファンクラブ、公式SNSを一気に開設し、
そのスピードはりょんらしすぎて笑えた。
その後、表紙を飾った音楽雑誌「GQ JAPAN」2020年6月号(コンデナスト・ジャパン)でりょんは初めて脱退について語っている。
また、グループ活動に対する悩みを抱える中で、
「あ、違うかも、と決定的に感じることがあって…」とも明かし、その出来事が一体何だったのかは話していないけれど、
すうが居なくなってからのメンバーとのやり取りは
これからもあまり多く語られることはないんだろうと思った。
本人たちが納得できる話し合いの上で6人の関ジャニ∞終えられたことを、
私は心から願い、信じるよ。
それに、りょんが脱退を発表した翌々日
シンガーソングライターの高橋優くんとやっているANNで忠義は、冒頭でその気持ちを手紙にして音読してくれた。
「すばるくんの脱退で永遠はないのだと知った」
「2004年から初めて立ち止まった」
「全員がグループを閉じる覚悟をした」
「(5人になって)すげえ寂しい」
りょんとのことも「チャレンジの方向性の違い」だと、忠義が本当に自分の言葉で
嘘のないこの言葉たちを私たちに向けてくれたこと。
そして最後には
と、追いつけない気持ちや、抱える寂しさにも寄り添ってくれた。
その後、5人体制で発売されたシングル「友よ」は
斗真のドラマ主題歌にかこつけて、脱退したメンバー3人へのメッセージのようにも感じてしまう歌詞だった。
そのシングルのセブンイレブン限定盤の特典DVDに収録された
「5人のドキュメント ぼちぼち大切な夜」で今までも何かにつけてよくみんなでしていたBBQを5人で行い
関ジャニ∞を5人で残そうと話し決めた男たちは、素直にかっこいいと思った。
だから私はこれからも、関ジャニ∞の4桁の会員番号は手放さないでいるよ。
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