はなむけ





外の寒さに君を思い出す為に、白む空を見ながら
夜中に買ったチョコレートを食べて、
舐めた唇の甘さを覚えていて、どうか
君も昔と変わらず朝を怖がっていますように。



君が色褪せないように、薄青色の早朝の空
誰もいない静かな空を眺めた、
腰掛けただけの浅さに
光が色も無く染め上げた、君がいたはずの場所

誰にもわかって貰えなくても
俺と君が消えないように口紅を残して
何も入らないような小さな鞄をしめた

眩しさに目を伏せて、冷たさに痛い瞼に描いて
遠く想う君と、なくなったチョコレートと、
もう甘くない唇と、口紅の苦さと
もう想われない俺を、微笑んで明るいうた

たったひとりなのに繕った気持ちは、
届かないからたったひとりでまたほどこう

弱いうそをほどいた口を開いてただ何をうたう
もう知ることのない君の未来を
君よりも憶えている君の過去を
君が嫌いな朝に 二人が怯える朝に捧げて

イントロはピアノで始めよう 単音で構わない
俺は弾けないから 小さい頃少しの君に任せよう

誰も気づかず立ち上がって、百日紅を過ぎていく
見上げて咲いた可憐な紅色に手を触れて、
拍を踏む歩幅に小さく、脳裏で揺れる花の枝は
光の中、幸福をたたえて眠っている

檻の夜ごとに憧憬を、朝に孤独を抱く君へ
その道程に光と花を、君の好きだった薄青の光を









美味しいお酒でも飲みます。