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ナポリタカオの小ネタ劇場

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ナポリタカオの小ネタオリジナル作品をまとめたマガジンです。登場人物のN氏とは著者・ナポリタカオ本人のことです。
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2021年12月の記事一覧

情けないカネ貸しを嘆くカネ貸したち

問題人物についての概略紹介数年前、夕暮れのドトール。 30代の社員数人と50代の社長の会話が店内に響いていた。 社長「まったく山田(仮名)のヤツ、どうしようもねえよなあ。    あっちこっちからカネ借りまくって、    ニッチもサッチもいかねえってのに」 社員A「あの人はこっちから金ひっぱっておいて、    自分のお客に貸しちゃうんですからね。    相手がほっとする顔を見るのが好きらしいんですよ」 社長「いくら利息が取れるからって言うけど、    考え方がまだバブルなんだ

禁断のメモとアディショナルタイムの恐怖

※この話は前回から続いています。 スタメンに入らないメンバーへの疑惑サッカーワールドカップのテレビ中継「日本代表 対 オーストラリア代表(男子)」の録画を再生する直前、嫌なものを見てしまった。 母親が乱雑に走り書きした、備忘録のメモ。 「2、オナイウ阿道、オナイウ阿道、古橋亨梧、古橋亨梧、アディショナルタイム、アディショナルタイム、オウンゴール、オウンゴール、浅野拓磨、浅野拓磨、長友」 あちこちに書き殴られている。どの順番でこれが起きたのか、わからない。 オーストラ

サッカー日本代表戦と禁断のメモ

老境に抗い、老人はメモをとる老人にとってニュースがわかりづらい時代になってしまった。 横文字の氾濫。次から次へと世間を踊り狂っては、短い生命で消えゆく言葉。怪しい知識人が生みだす、必要のない流行語。 N氏の母親もまた、氾濫する言葉についていけなくない老人のひとりだ。さらに、老化現象も追い打ちをかけている。 いつからか、彼女は新しい言葉を記憶になんとかとどめようと、テレビを見ながら繰り返し、思いつくままにメモをとるようになった。 「キャピタルゲイン、キャピタルゲイン、親

ガジローの本当の災難

※この話は前回から続いています。 ささやかなプレゼント亡くなったハチローになにかしてあげられることはないかと考えた妻は、妙案を思いついて夫に話した。 「明日、火葬場にもっていくっていってたわよね、奥さん」 「ああ」 「ダンボールでかわいい棺をつくってあげようかしら」 「犬用の棺桶なんていらないだろ。やめとけ、やめとけ」 「冷たい人ね、そういうわけにはいかないわよ」 棺桶をつくるにあたって、適当な大きさのダンボールを用意した妻。レースとたくさんの花をあしらった。 「棺の