Y子と過ごした穏やかな時間、そして葛藤

Y子との関係は順調だった。

若ハゲへの悩みは尽きなかったが、大きな喧嘩もする事なく1年、2年と一緒に年を重ねていった。

付き合いも長くなると、30歳という年齢的にも結婚に関して考える事は当然あった。Y子も積極的に結婚をほのめかす事は言ってこなかったが、このまま行けば結婚する事を視野に入れてるのは容易に見て取れた。

しかし結婚を現実的な物と考え始めると、自分の中でひとつ心に引っかかっている事があった。


「自分はY子としか付き合ってないのにこのまま結婚したら後悔しないか?」


身勝手なのは良く分かってるが、自分は恋愛に興味を持ち始めた年齢が他と比べてもだいぶ遅い。

人と比べる事に意味はないと思いつつ、でも自分の理想は色んな女性との出会いと別れを経験し、色んな恋で酸いも甘いも味わい尽くした末に「恋はもう良いや」となってから結婚したいと考えていた。

新卒で入った会社で生まれて初めてめちゃくちゃ付き合いたいと思った女性に振られて精神的にどん底に落ちてストレスで肌がボロボロになって、ようやくその痛手から心身ともに復活してきた頃に心に誓ったのは、「今回の苦しみを補って余りある程の恋で幸せを掴み取ってやる!」だった。

俺の人生は基本的に反骨の歴史だ。

学年主任に無理と言われて悔しくて勉強しまくって市内トップの進学校に合格した。

リーマンショックでなかなか転職が上手く行かないから余計躍起になって100社以上エントリーして貰った内定を一つ蹴った上で理想的な会社に転職した。

会社で好きになった美人な女性が親会社のエリートと付き合ったのが悔しくて、その親会社に負けないくらいの大企業に入社した。

基本全ての行動が「悔しさ」「妬ましさ」から来てる。

自分の行動の原動力がそれらなのはもはや仕方ない。結果的にそれで良い方向に行くならむしろ望ましいとすら感じている。


さて、話を戻すがY子との結婚を現実的な物と考え始めるとどうしても「もっと良い女性がいるかも」「もっと美人でスタイルの良い子と付き合えるかも」と言う考えが頭を過ってしまう。

ホント身勝手な話だと思う。

そう考えた時点で別れろと怒られそうだが、Y子の事も好きだし顔もそこそこタイプで、もっと胸が大きくて足が細ければなお良かったなと思うけどとにかく性格が素晴らしい。

結婚にはこれ以上ない女性だと思った。

もっと俺が色んな女性と付き合った末に出会ってたら迷わず結婚しただろうに。人生とは上手く行かない物だ。


ちなみにY子と出会ってしばらくしてから俺は風俗店にも頻繁に通う様になっていた。

Y子以外の女性ともセックスしたいと思う様になっていたからだ。ゲス野郎だと言う批判は甘んじて受け入れよう。

それが俺が恋愛経験(性交)が少ないまま歳を重ねてしまったコンプレックスを軽減する一つの手段だったのだ。


Y子と付き合い始めて3年が経ったある日、俺はいつもの様に軽い気持ちで風俗店に行って、衝撃的な出会いをする事になった…。


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