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理科授業における環境シティズンシップシップ教育が生み出した学年行事

はじめに

本記事は、理科教育 Advent Calendar 2022 の12月23日の記事を兼ねています。また、本記事では、
①環境シティズンシップ教育の実践に至るまで
②理科授業における環境シティズンシップ教育が学年行事を生み出した経緯
③環境の内容に加え、学年集団が成長する機会として行事を位置付けた工夫

の3点について、私のが実際に経験したことを紹介します。

①環境シティズンシップ教育の実践に至るまで

導入単元に環境シティズンシップ教育を取り入れる

筆者が勤務している筑波大学附属中学校では、理科授業で中学校入学時に導入単元を設定していました。
今年度、着任して初めて一年生を担当することが決まってから、導入単元の学習内容をどのようにするか考えていました。
筆者は、歴代の先生が実践していた「水-水の科学」を踏襲しながらも、題材を河川から身の回りの生活排水とするなど、新たな学習内容も取り入れました。
ある日、共同研究者と研究打ち合わせのオンラインミーティングで、雑談感覚でこの内容を話題にすると、共同研究者と環境問題解決を目標とした学習活動を取り入れられそうだということで盛り上がりました。
その活動こそが、「環境シティズンシップ教育」だったのです。
私は、共同研究者が過去にまとめていた記事を参考にしつつ、導入単元の学習内容のまとめとして環境シティズンシップ教育を実践しました。

環境シティズンシップ教育の概要

実践の概要は、次の通りです。
①解決したい環境問題を調査・選択する。
②①で選択した問題のステークホルダーを調査・選択する。
③②で選択したステークホルダーに手紙を書き、送付する。

また、環境シティズンシップ教育の実践の詳細は、科学教育学会の発表スライドをご覧ください。
*科学教育学会 第46回 年会で発表したのですが、まだ発表論文がオープンアクセスできません。され次第、そちらのリンクも共有します。
このようにして、私は理科授業の中で環境シティズンシップ教育を実践したのでした。

②理科授業における環境シティズンシップ教育が学年行事を生み出した経緯

JAXA広報部からの電話

実践が終わると、生徒が作成した手紙をステークホルダーに送付する毎日が待っていました(いくらメールがある時代とは言え、これが大変でした…)
ある日、私が授業をしていると、JAXA広報部から私宛に電話がかかってきたのです。しかも、何度も。さらには、メールまでもが届き、折り返しの電話の催促をされる始末。
私は、生徒の手紙で何か粗相でも起こしたのかと不安になりながらも、恐る恐る電話をしてみると、手紙を受け取った研究者の方が生徒が書いた手紙に感銘を受け、ぜひ直接話をさせてほしい、あわよくば講演会を実施したいとお願いされたのでした。

講演会の実施に向けて

こんな絶好の機会を逃す訳にはいきません。電話を切った後、すぐに実現する手段を考え、いくつかの案が思い浮かびました。
①放課後、当該生徒と研究者の方でzoomで対談
②放課後、当該生徒に加え希望者を募り、研究者の方とzoomで対談
③理科授業で、当該生徒の在籍学級で、講演会を実施
④理科授業で、第1学年全ての学級で、講演会を実施
⑤学年行事として、講演会を実施

結論としては、⑤が採択されました。やはり、教師という職業柄、こういった貴重な機会はできる限り多くの生徒に経験させたくなるものです。ここからは、なぜ⑤に決まったのか、その過程を少し紹介します。
はじめに、③と④がなくなりました。理由は、本校では教科の授業で講師の方の交通費の支出した前例がなかったためです。きっと、申請すれば通ったのかもしれませんが、私が手続きを面倒になってしまい、断念しました。
次に、①がなくなりました。理由は、JAXAの広報部より講演会の実施には30人以上の人数が必要だと言われたからです。当該生徒は、全部で10名程度。学年から別に希望者を募る必要がありました。
正直、⑤も学年に提案するのが面倒だな…と感じつつ、②で決定かな?と思っていたある日の担任会(学年の先生方の会議)で転機が訪れました。
この日は、道徳の項目「自然愛護」で何をやるか決める必要があったのですが、良い授業案が出なかったのです。このままだと、該当する場所の教科書を読んで終わりという、正直面白味に欠ける授業をすることになりそうでした。その時、JAXAの講演会のことがふと頭に浮かびました。
「実は、JAXAの研究者の方から、環境問題について講演会を開催したいと言われているのですが、自然愛護と関連させて講演会を実施するのはいかがでしょうか。」
担任会の満場一致で、講演会を実施することになりました。

学年行事としての講演会にする

しかし、本校はそこまで甘くありません。ただ実施するだけではなく、「学級委員としてリーダーシップを、学年集団としてフォロワーシップを育成することができる機会にできるといいね」と一言添えられました。
つまり、講演会の実施は決まったが、私は課題を抱えたまま会議がおわりました。
本校は、自治活動を大切にしています。なるほど。ただ講演会をやるだけではなく、学級委員が講演会を実現するようにする必要があるんだ。
とりあえず、講演会の実施が決まったので、JAXAに連絡をして研究者の方のスケジュールを押さえました。
ちなみに、講演会の実施日は12月16日(金)、この会議日は11月18日(金)でした。さて、あと1か月で何ができるか。そもそも、講演会におけるリーダーシップとフォロワーシップとは!?
ここから1か月間、私と生徒の怒涛の日々が始まることになりました。

③環境の内容に加え、学年集団が成長する機会として行事を位置付けた工夫

目指すべきリーダー像

講演会で学級委員がリーダーシップを発揮する場面について考えた結果、次の2点が考えられました。
①【学習としてのリーダー】講演会当日に学習する内容を理解しやすいよう、事前に学習し学年に共有する
②【行事としてのリーダー】講演会当日の運営を行い、学年集団をまとめる

スケジュール

2つの視点からリーダーを育成するために、次のようなスケジュールで動くことに決めました。
①学級委員への周知_11月21日(月)
昼休みに学級委員会の会合を開き、12/16(金)にJAXAの方を招いて講演会を開催すること、それに向けて学級委員が活動することを周知しました。

②正副責任者決め_11月24日(木)
昼休みに会合を開き、正副責任者決めを行いました。立候補者で必要に応じて選挙です。責任者には全体統括及び事前学習の割り振り、副責任者には責任者補佐及び会合場所の申請をお願いしました。

③事前打ち合わせ_11月24日(木)
学級委員が講師の方と事前に打ち合わせをしました。講演会がより充実するためにどのようなことを知っているとよいのかを講師の方から教えていただきました。なお、この日は定期考査1週間前でしたので、事前に保護者より活動承諾書を提出していただきました。

④事前学習に向けて_11月30日(水)
またまた昼休みに会合です。12月1日(木)2日(金)と定期考査がありました。定期考査期間は考査に集中してもらうため、定期考査が終わった日からが勝負です。定期考査終了後に、③の観点に基づき調べ学習を行っておくことを周知しました。なお、班分けの観点とグループ作成は、責任者が行ってくれていました。オンライン上でアンケート等を駆使して行っていたらしいです。1つの班は6人~7人でした。

⑤事前学習の準備_12月3日(土)~12月13日(火)
それぞれが調べてきた内容を班でまとめて、スライドにします。今回、講演会当日まで事前に調べた内容を発表する時間がなかったので…昼食の時間を活用しました。本校では、昼食時は黙食なので、その時間に事前学習の内容を整理した動画を放映してしまおうという作戦です。生徒は、ロイロノートを使用してスライドをつくり、音声を吹き込み動画を作成します。それを、担当教員である私に提出して作業完了です。全部で3班あったのですが、それぞれの班で5分程度の動画を作成してくれました。

⑥学年集団の事前学習_12月12日(月)~15日(木)
⑤で作成した動画を各学級で動画として放映しました。また、流し終わった動画も、アーカイブとしてロイロノートで生徒に共有しました

⑦講演会当日の運営に向けて_12月14日(水)15日(木)
事前学習についてひと段落したら、あとは講演会当日の運営方法を確認していきます。今回、動画の放映という形で事前学習を行ったので、学級委員が学年集団の前に立って話をする機会が取れていませんでした。そこで、講演会当日のはじめ10分間委員に時間を用意することにしました
その10分で何をするかを、委員で決めさせました。結果、事前学習のダイジェストとクイズを行うことになりました。
また、前日の会合では、私がつくった行動要領の読み合わせを行い、余った時間でクイズなどの資料づくりを行っていました。

⑧講演会当日
委員による導入が終わり、無事講演会を迎えることができました。
講演会が終わると、講師の方から「私自身がとても楽しませてもらった。過去よかった講演の3本に入る。」とお褒めの言葉をいただけました
無事講演会が終わり、委員が達成感を感じることができていれば幸いでした。

適度な自由度と緊張感

学級委員がリーダーとして活躍するために、何もかも教師から指示されたものをやるのでは、あまり魅力のない活動となってしまいます。
今回の行事では、適度な自由度(事前学習グループの構成、事前学習の動画の構成、講演会当日の10分間の使い方)適度な緊張感(講師の方との事前打ち合わせに生徒が参加する、事前に作成した動画を各学級で放映する、講演会当日に学年集団の前に立ち運営する)を意識しました。
こうすることにより、自分たちに活動を任せてもらえていると思ってもらえると同時に、責任感を感じてもらえるので、程よいバランスで生徒も楽しめるのかなと思っています。

講演会をただの講演で終わりにしない

この手の講演会は、当日突然講師の方の話を聞いて、終わりにしてしまうパターンが多いのではないかと思います。私もかつてはそうでした。
しかし、今回紹介させていただいたように、講演会でも十分に生徒を巻き込んで学年行事として位置付けることが可能です。
リーダーシップやフォロワーシップを育成する機会として位置付けることも可能です。従来、宿泊行事などの大きな行事でしか実施できなかったことですが、小さな行事でも工夫次第では十分生徒の資質・能力を育成することができます。
また、これはやってみてわかったことですが、委員による事前学習があったからこそ、当日の講演会がより充実したものになりました。
今回のテーマは「宇宙のごみ問題を解決する」で、スペースデブリについての話でした。
正直、聞いたことがない人がほとんどだと思いますし、これを講演会当日に初見だったとしたらどこまで内容が頭に入ったのか分かりません。
学級委員が事前学習として、自分たちでまとめた動画を学年集団に共有していたからこそ、当日に向けてなんとなく頭の準備体操ができたのかなと思います。
講演会当日の質問が充実した(質問の時間が足りなくなってしまった)ことからも推測できました。
実際に、生徒の感想にも、事前学習がとても役立ったというコメントが多く見られました。

おわりに

理科の授業で行った学習が学年行事となり、さらにその行事でリーダーシップとフォロワーシップを育成してしまおうと、かなり欲張った取り組みについて紹介させていただきました
正直、定期考査をつくらなければいけなかったり、成績処理がある中での委員指導は死ぬほど大変でした。
しかし、委員と同じく、終わった後はとても達成感に満ち溢れていました。
講師の方、職場の方、委員、そして学年の生徒のみなさんにはとても感謝しています。
今回、かなり限られた時間(たった1か月)でここまで形にできたのは、紛れもなく本校の生徒の力だと思っています。今回の実践が、全ての学校でそのまま一般化可能だとは思えません。
何か、参考になる点があれば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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