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セン君と僕のこと⑦

2022年11月17日、僕たちは地域猫(のら猫)を保護しました。男の子で、名前は「セン君」としました。(タイトル上の写真がセン君です。)

ここではセン君と僕の出会いから別れを綴っていこうと思います。今日はその第7回です。

Chapter 7 セン君との別れ

セン君の様子に異変が現れたのは、ケージから解放して1週間ほど経った後のことでした。

セン君は、急に落ち着きが無くなり、そわそわするようになりました。ずっと外を眺めて、寂しそうにニャーニャー鳴くようにもなりました。そして、夜はかなり大きい声で鳴いて、外に出ようと窓ガラスに体当たりするようになっていました。

外を眺めて出たそうにするセン君

鳴く声も、尋常ではない、切実で悲壮感が漂うものでした。どことなく危険を感じた僕たちは、留守の間はセン君をケージの中に入れて、出かけるようにしました。

2022年12月10日、僕と妻は、美術展に招待されて恵比寿に出かけました。帰宅してセン君のケージを見て驚きました。セン君は、僕らが居ない間に、かなり暴れて、体のどこかをぶつけたらしく、ケージの中や外に、血が飛び散っていました。壁にも血痕が残っていました。そして、その日の夜は一晩中窓の外に向かって「外に出たいよー!!」といつも以上に大きい声で鳴き続けていました。

翌日の夕方、セン君があまりにも外に出たがるので、妻が「少し外の風にあててあげよう」と言いました。そこで、猫用のハーネスを付けて外に出してあげたところ、おとなしかったセン君が豹変し、全力で逃げようとしました。妻がこれを押さえようとしたところ、セン君はとても強い力で妻の手を噛み、そのままハーネスを外して逃げて行きました。セン君が僕たちに攻撃的な態度をとったのは、これが初めてでした。

僕がしばらく周辺を探しましたが、セン君は見つかりませんでした。

ほんとうに一瞬の出来事でした。妻も僕も、「ストレスが溜まっているのかな?」と心配して、少し外に出してあげたのですが、外に出したとたんに、セン君は別猫みたいに変わってしまって、必死でもがいて逃げていきました。家の中では、ずーっとおとなしくしてたので、外に出たときのセン君の変わり様に、ただただ驚き、呆然とするだけでした。

セン君を逃がしてしまって、すぐにSさんに連絡をしました。
「せっかくご支援いただいたのに、こんなことになってすいません。」と僕が言うと、Sさんは「気にしないでください。我々ができることは、全部やったじゃないですか。外に出て、逃げて行った。セン君が外の生活を選んだんです。彼の生きたいように生かしてあげましょう。」と言いました。僕は申し訳ない気持ちで一杯でした。

Sさんには優しい言葉をもらいましたが、今でも、自分の取った行動は「失敗」だったのでは、と思うときがあります。確かにSさんの言う通り、「セン君の気持ちを尊重したから、いいじゃないか。」という考え方が、最も自然なのは分かります。去勢手術も行い、桜耳にカットしたのですから、「通常のTNRをした」と考えることもできる。特に悪いところは、どこにもない。だけど、僕の心の中に、引っかかるモノがあるんです。

それは多分、「さみしい」という気持ちなんだと思います。1か月という短い間だったけど、僕の家で一緒に暮らした「仲間」を失った喪失感は、なかなか消えませんでした。

かわいいセン君。もう一度、会いたいな。

少し時間が経って振り返ってみると、セン君が外に出たがる姿が、あまりにも鬼気迫る感じだったことを思い出しました。もしかしたらセン君には「帰りたい場所」があるのか、「会いたい人(猫)」が居るんじゃないかな、と考えました。

セン君は、「戻るべき場所に戻った」ということ。それは、良いことかどうかは、分からない。ただ、Sさんの言う通り、それが「セン君の選択」だったとしたら、僕は受け入れるしかない、と思いました。

noteで毎日セン君のことを書いていくうちに、セン君への想いが整理出来たように思います。やっぱり、「書く」って大事ですね。

今後

とりあえず、家の前にエサを置いて、セン君が戻ってくるのを待ってみたいと思います。これから寒さも厳しくなるので、もしセン君がお腹をすかせたときに「戻ってくる場所」は作っておいてあげたいな、と思っています。

もし戻ってきて、また仲良くなれたら、お家に入れてあげようと思っています。もしそんなことがあったら、noteでお伝えしたいと思います。

また、別の迷い猫と出会ったら、きっとSさんと共同して保護することになると思います。Sさんとは「すべての猫を救うことはできないが、少なくとも我々と関りを持った猫は、全力で救おう」と話しています。

以上が、セン君と僕のお話でした。まだ続きがあるかもしれません。そうなることを願って、終了といたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。<おわり>

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