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古典と現代のヨガ比較〜私見を踏まえて〜

【ヨガの寛容性について】

ヨガというものは、パタンジャリの「ヨガスートラ」を明確な定義とすると4〜5世紀頃まで遡ることができます。

このパタンジャリはとても寛容だと言われています。ヨガスートラでの定義は「ヨガは心を制御する方法である」ということです。心はそもそもネガティブであり、ヨガはその否定性を肯定性で包み込んで凌駕するくらいのものです。

個人的には、インドは多様な民族の集まりで、宗教も多様です。多様性のある国で排他的な思想は成り立ちません。パタンジャリが肯定性であるというのは、そもそもインドという国そのものが肯定性なんだと思います。

又インド人は人口が多く、それこそ多様なので自分を主張しないとやっていけないので個性が強い人が多いです。ヨガの聖者も指導者も自分をしっかりと主張します。古典文献でも自分の行き着いた方法が一番だとそれぞれの著者が書いています。つまり、そもそもヨガも多様だということです。

さて、ヨガそのものは紀元前2500年ごろに形作られたとされています。その頃のものは主に概念的なことや宇宙、世界の成り立ち、そして人とは何かというインド思想といってもいい哲学的な部分がほとんどです。

実践として、「解脱」までの方向性と手順を示した指南書としては「ヨガスートラ」以降でいいと思います。

又、具体的な実践方法が記載されているものは、ハタヨガの古典文献である「ハタプラディーピカ」や「ゲーランダサンヒター」、「シヴァサンヒター」などです。それらはヨガの歴史の中では新しいもので16〜17世紀頃のものです。

さて、現代のヨガはクリシュナマチャリヤという方によるヴィンヤサ(flow)というシステムが元となっています。アーサナを呼吸と共につなげて運動としてのハタヨーガを作り、フィットネスに近づいたことによって、世界中に受け入れられています。

僕はアヌサラヨガ、アシュタンガヴィンヤサヨガ、アイアンガーヨガなどの現代的なヨガ、ヒマラヤのヨーガであるヨーガニケタン、古典文献に則ったヨガを指導するカイヴァルヤダーマヨーガ研究所のヨガ、ヨーガ大学のあるヴィヴェーカナンダヨーガ研究所のヨーガ、又各地にある固有のヨガなど様々なヨガを体験してきました。

その経験を踏まえて、今回は古典と現代的なヨガの相違と、それぞれの欠点利点をまとめてみたいと思います。

理学療法士という科学的な物事の見方をするのが好きな僕個人の意見ですので、答えというわけではありませんし、どちらがいいということを言いたくないからこそ、客観的な視点でまとめようと試みたものです。その点ご了承下さい。

【古典において重きを置いているもの】

まず大きな視点としてはヨガの目的である「解脱」という視点がブレていないことです。

インド人にとって輪廻転生は苦であり、その繰り返しの苦から解き放たれることが最高の幸せなのです。ハタヨガに限らず、様々なスタイルがヨガの中にあるのは目的は同じでもその方法が異なるという意味です。つまり、方法が重要というよりは目的が重要ということです。

つまり、古典ではハタヨガの様に身体的な鍛錬を含む方が価値が高いとかそういうものではないということです。もちろん、難しいアーサナが取れる取れないということに重きは置かれていません。

目的が解脱という大きなところにあるので、身体的な部分でのボディメカニクスやアライメントなどにはそこまで焦点は当てていません。

又、チャクラやプラーナにも重きを置きますので、リアルな身体というよりも概念的なエネルギーなどに合わせて練習をします。

古典の場合はアーサナに対する比重は少なく、呼吸法や浄化法、そして瞑想法に十分な時間と価値を置きます。指導者も、悟りを開いている方が基本で、少しヨガをかじったくらいの人は指導者にはなっていません。

伝統を引き継ぐ者としてのインド文化が垣間見れます。さらに、インドの伝統のため、サンスクリット語やマントラ、さらにインド哲学やヒンズー教徒との線引きが難しい部分もあります。

【現代において重きを置いているもの】

古典に比べて来世というよりも、より現世の利益に重きを置いていますね。今の健康に焦点が絞られており、よりフィットネス効果や、ストレス解消が目的とされています。

さらに、アスレティック的な部分にも焦点が当たり、アーサナをあたかもスポーツの進級の様に捉え、難しいポーズが取れることが素晴らしい、賞賛されるという様な価値観が存在します。世界にはアーサナ選手権まであります。

つまり、目的が解脱や来世の幸せではなく、現世での充実感や達成感、さらには自己高揚感や自己承認欲求の充足のためにヨガが利用されている部分が大きいです。

又、西洋医学など西洋ならではの価値観や視点も積極的に取り入れられ、より安全で効率的な練習法やアライメントの考察にも重きが置かれています。

その分、科学的な視点での検証がしやすいともいえます。体力科学や医学との親和性も高いため、アメリカを始め医療での用いられ方も違和感がないものになっています。

西洋ならではなのは、目に見えるものに価値が置かれますので、アーサナが基本になります。呼吸法や浄化法、瞑想法はおまけの様な位置づけとなっています。呼吸法に熟達した現代的なスタイルの指導者は少ないでしょう。

【古典と現代の比較】

では、今まで上げてきたものを比較してまとめてみましょう。

古典:
  ・解脱が目的。来世に重きがある
  ・見えないものに重きがある → 瞑想が基本
  ・インド文化やヒンズー教との境界が曖昧
  ・チャクラやプラーナなど概念を優先とし肉体がおまけ
  ・指導者は伝統を継承する者
現代:
  ・現世の健康が目的
  ・見えるものに重きがある → アーサナが基本
  ・西洋的な視点と融合
  ・安全で効率性を重視 → アライメントやボディメカニクス
  ・誰でも指導者になれる 

では、それぞれの僕なりの利点をピックアップしてみます。

古典:
  ・ブレない安定感と指導者への信頼
  ・総合的なヨガの実践
  ・インド文化などの深遠な背景が魅力的
  ・心に焦点が絞られており実践の目的が明確
現代:
  ・科学的な検証と理解が可能で再現性が高い
  ・各自の現状の生活や価値観に取りれやすい
  ・現世と割り切って心身の健康に用いることができる
  ・安全で効率的に実践ができる

個人的にはそれぞれのいいところを自分のライフステージに取り入れて、ヨガと向き合うのがいいのではないかなと思っています。

一つの意見として参考になれば嬉しいです。

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