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【日記】日本人と身体そして声〜体の自由度と身体観〜

能楽師であり緑桜会を主催されている山村庸子先生のご紹介をさせて下さい。ぜひ先生のブログを読んでいただきたいなと。

先生とはもう15年くらい前になりますか、ある講習会で知り合い、コロナ禍の前には当スタジオでWSも開催していただきました。

先生は日本人の声が危機的状態であるという思いから、声の道場を主催し、日本人の身体観や所作、姿勢そして声の出し方を探求されています。

僕は合気道をずっと高校生から練習しており、日本人の身体的な感覚が身に染み付いています。例えば、合気道では膝行と言って、膝立ちなような姿勢で歩く方法があります。これは体幹から動かなければ動けませんし、そもそも座している状態に近い膝立ちは重心が低く、この状態で素早く動くことを求めるような文化は他にはないでしょう。

日本は独特な文化、美的感覚を持ち合わせているのです。そして、身体はホモサピエンスというよりも、その文化を最優先事項として身体を変化させてきました。

今回、以前先生の書籍に寄稿させていただいた部分をブログで再度取り上げていただきましたので、ぜひ読んで頂けたらと思います。

少し補足しますと、、、人間は直立姿勢をとることで、重力に対して最高に強くそして、かつ柔軟に動ける自由度を獲得しました。脊柱は垂直方向に対しては木のように強いですね。しかし、捻りや側屈はとても柔軟です。この自由度は海に戻った哺乳類である海獣類を除けばヒトの独壇場じゃないでしょうか。

例えば泳ぐことを想像してください。基本的に泳法は4種類あります。

・バタフライ
・バック
・ブレスト
・フリー

この動きを想像してみてください。

・バタフライ→屈伸
・バック→回旋
・ブレスト→屈伸
・フリー→回旋

魚類や両生類のような側屈は泳法にはありませんが、屈伸と回旋という異なる体の動きで推進を得ています。足の動きはまた、ブレストに関しては特殊ですね。まるでカエルです。

泳ぐという推進力を得るのに、ここまで多様な方策が持てるというのは体の自由度が高いからです。

ヒトは歩く、走るという基本的な移動形態以外にも、上記のように泳げますし、跳ねることもできます。よじ登ることもできます。運動形態でスポーツが分類できますからそれもみてみましょう。

・歩く…ウォーキング
・走る…マラソン、短距離、競歩など
・跳ねる…バスケットボール、バレーポール、器械体操など
・打つ(捻る)…野球、ゴルフ、テニスなど
・よじ登る…ボルダリング、クライミングなど
・泳ぐ…競泳など
・滑る…スキーなど
・蹴る…サッカー、キックボクシング、空手など
・殴る…ボクシングなど
・漕ぐ…サイクリング、ボートなど

キリがないですね、、、。これだけの多様性を一つの種が行うことは奇跡ではないでしょうか?この自由度が世界中に繁栄している人の所以でしょう。

そして、この自由度をそれぞれで極め、ヒトの可能性に対してみんなで感嘆し喚起する祭典がオリンピックなのではないでしょうか。凄いな僕らって!という種としての喜びを味わいたいのではないでしょうか。

これだけ競技種目が多いのは、それだけでも凄いことなのです。

話が少しそれましたが、ヒトは高い自由度を有しており、その自由度を何に特化させるかはその人の思いで決まるのです。運動だけでなく、姿勢や所作も含めて自由なのです。だからこそ、そこにはが必要で、自分というものに対する美的な信念のようなものがあるかないかで身体が変わってしまうのです。

例えば、バレエをしている方々は、王冠を頭頂に乗せて、天にも登る気持ちを表現する、その上方向に対する信奉的な価値観があるはずです。床に身体を丸くして座っているなんていうのはあり得ないでしょう。嫌悪感すら感じるはずです。それが身体に対する観念です。

武術家であれば、逆に腰を低くして、上虚下実の状態が美しい理想像です。爪先立ちなどはあり得ませんし、上に気が上がると斬られます、、、。相撲がわかりやすいですね。

同じヒトでも信念が、身体観が異なれば実際の身体は変わるのです。

このように、解剖学的な生物学的な身体と、文化的な身体は違います。同じ日系人でも、アメリカの文化で育った方と日本で育った方は違う身体観を持っていますし、実際に所作や姿勢は異なるでしょう。環境や文化が身体を変えるのです。遺伝的な素因も半分は関係しますがもう半分は、環境です。

このような視点を持っていると、能楽などの日本文化の中で洗練されてきた身体技法というものはとても価値があり探求の対象としてとても示唆に富んでいます。

山本先生はその点に関しても、とても客観的に把握されております。僕も、お話をさせて頂く度に造詣の深さに感嘆します。後進の育成もしながら、まだまだ学び続け成長されている先生の活動にこれからも目が離せません。

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